正しいクラウドの選びかた 3ステップ
~失敗しないIaaS選定のちょっとした工夫と考え方~

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クラウド・コンピューティングにおける事業者間の競争が激しくなるにつれ、機能面での差異が少なくなり、契約や料金体系の比較も複雑になってきている。ユーザー企業が事業者を選定する際には、どのような順序で検討し、何に着目すればよいのだろうか。

 

最適なクラウド事業者選定は難しい

クラウド・コンピューティングに対する過度な期待が落ち着き、確実なビジネス貢献が求められるようになった。それに伴い、基幹系システムのような業務要求の厳しいシステムをクラウド環境で稼働させ、柔軟性とコスト最適化を図るという活用が増えてきている。そして、その厳しい業務要求に応えられるよう、クラウド・サービスも発展してきた。

業界リーダーであるAmazon Web Services(AWS)が市場を牽引する一方、マイクロソフト(Azure)、(IBM Bluemix Infrastructure)、Google(Google Compute Engine)がAWSを追従する構図が続いている。国内に目を向けると、多数のクラウド事業者がしのぎを削ってきた。NTTコミュニケーションズ、富士通、NEC、IIJ、IDCフロンティア、GMOクラウド、そしてCTCといった企業が競争を繰り広げている。ユーザー企業から見れば、競争激化による性能向上や価格低減は歓迎すべきことであるが、一方で、クラウド事業者選定がより困難に感じるケースもあるだろう。クラウド化はどのように検討を進めればよいのだろうか。

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ステップ1:MustとWantを明確にし、要求事項の優先順位を決定する

企業のIT担当者は比較表を作成し、クラウド事業者の選定を進める場合が多い。しかし、項目が多くなり過ぎると、どこに着目してよいか分からなくなり、決め手に欠ける結果に陥る。自社にとって最も重要な要素は何であるか、あらかじめ優先順位を決めてから比較表を作成すると、効率的に事業者選定が進む。

クラウド事業者同士で機能を比較すると、絶対的な差が少なく、優劣がつけにくい場合が多い。自社にとって絶対に必須なMustの項目と、ある程度満たされていれば問題ないと言えるWantの項目を明確にするのが重要だ。また、要求事項が明確になってからコスト比較を行う手順が推奨される。クラウド・サービスの料金体系は複雑であり、見積もりが難しいため、自社の要求に合致する事業者に絞ってから、コストの詳細調査を行うのが効率的だ。

クラウド化を検討するにあたり、絶対に必要なMust項目になりやすいのは、クラウド事業者でなければ対応できない部分だ。例えば、自社に以下のような要件があれば、真っ先にサービスの絞り込みが行える。

  • 海外拠点を設け、グローバルにシステムを展開したい。
  • 国内で災害復旧(ディザスターリカバリ―)対策をとりたい。
  • 現地実査を伴う認証・監査に対応したい。
  • 複数のクラウド環境を連携させたい。
  • キャンペーンによる時間単位でのアクセス増加に合わせた柔軟性を確保したい。

また、ある程度の要件を満足できればよいWantの項目は、主にクラウド環境の契約後や構築後にも対応できる要素が入ってくる。

  • ミドルウェア
  • データウェアハウス
  • 移行ツール
  • セキュリティ
  • バックアップ
  • 監視
  • テンプレート

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ステップ2:SLA、メンテナンス、提供形態の詳細比較

自社のMust、Wantとなる要求項目が明らかになった後は、クラウド・サービスの詳細な条件を確認するのが次のステップだ。一見、同じように見えても詳細を確認すると、実態は異なるケースもあるため注意が必要になる。

SLA(サービス・レベル・アグリーメント)

SLAはサービス品質を保証する契約であり、クラウド事業者はここで規定された性能を維持する責務を負う。代表的な項目として、稼働率が上げられ、「99.95%」といった数値で定義される。しかし、稼働率においては、数字自体よりも、その定義を把握する方が重要である。例えば、仮想マシン1台に障害が発生した場合もSLA対象となる場合、よりユーザーにとって有利な条件となる。しかし、障害がサービスの一部に留まる場合はSLA対象から外される契約になっていれば、たとえ稼働率の数値が高くても、ユーザーにとって不利になる契約と言える。

障害発生時の対応についてもSLAに記載されるため、条件の確認が必要だ。返金を行う場合、ユーザー側から障害が発生した証拠を提出する義務を有する場合が多い。障害発生時の通知時間やサービスリクエストに対する応答時間も、重要性の高いシステムを運用する場合は、高い品質が求められるだろう。

メンテナンス

メンテナンス方法の比較においては、単に回数を比べるだけではなく、その内容や通知方法にも目を通すと良い。1週間前に通知されるのか、3か月前に通知されるのかによって、ユーザー側の対応は変わってくる。また、必ず仮想マシンが再起動されてサービスが停止されるのか、サービス停止を伴わないメンテナンスもあり得るのかという点も大きな違いになるだろう。ユーザー企業側で別ゾーンへ移動させたり、インスタンスの冗長化を図ったりといった作業が求められるケースもある。

提供形態

サポートに対する考え方はクラウド事業者によって異なる。セルフコントロール型のクラウド・サービスでは、洗練された汎用的なツールが提供されるのみで、十分な構築・運用サポートは行われない。ユーザー企業は必要に応じて、パートナー事業者に委託することになる。一方で、マネージド型を謳うクラウド事業者は、継続的なサポートによってシステム運営を支援する。マネージド型のサービスを利用する場合は、製品仕様だけでなく、総合的な提案能力を評価しなければ、サービスの実態は見えてこない。

ステップ3:自社に合った課金方法を見つけ、コスト最適化を図る

クラウド化検討の最後のステップがコスト面の比較になる。課金方法は事業者によって異なるため、条件を読み込まなければ詳細が理解できない。これまでクラウド環境での経験が乏しい企業にとっては、どのくらいのリソースを必要とするか分からないため、見積もりは困難になるだろう。

契約期間の観点からは、分・時・月・年といった単位の違いがある。分単位・時単位で課金される場合は、従量性となるだろう。月単位・年単位で契約する場合、固定で課金されるケースもある。さらに、リソースの観点からも課金形態は変わってくる。仮想マシンであれば、ベストエフォート型・性能保証型といった違いがある。また、物理マシンを単位にして課金する形態も現れてきた。

例えば、AWSであれば、ベストエフォート型の仮想マシンを時間単位あるいは年単位で契約することになる。CTCにおいては、性能保証型仮想マシンの利用を年単位で契約し、 システムリソースの実使用量に基づき課金する従量課金タイプ、あるいは、プライベートな物理環境を年単位で契約するといった選択肢がある。自社の利用方法を勘案し、最適な課金体系を判断し、コスト比較を行うようにしたい。

最後に

クラウド化検討のステップは自社の要求事項整理から始まる。SLA、メンテナンス、提供形態、課金方法の詳細を確認すれば、効率的にクラウド事業者の比較が行えるだろう。

編集:ビジネスon IT

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