マルチクラウド時代におけるネットワークの課題とは?|CDEC 3.0

マルチクラウド時代におけるネットワークの課題とは?|CDEC 3.0

 こんにちは、CDEC事務局 瀬尾です。

 2019年10月25日、時雨の雲が垂れ込める東京品川。「グランドプリンスホテル高輪 国際館パミール」にて、価値ある意見交換の場を提供するコミュニティ「CDEC3.0」を主催しました。

 3回目となる CDEC は、同日開催の「CTC Forum 2019」に特設ブースを構えての開催となりました。



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図 1. CDEC3.0 の会場「グランドプリンスホテル高輪 国際館パミール」



 CDEC3.0 のテーマは「マルチクラウド時代におけるネットワークの課題」

 総務省が発表した情報通信白書(平成30年度版)によれば、国内の企業の 56.9% が何らかのクラウドサービスを利用しており、クラウドサービスの利用割合は年を重ねるにつれて増加しています。クラウドサービスの効果を実感した企業は、競争力を高めるために、業務の目的にあわせて複数のクラウドサービスを使い分けており、まさに「マルチクラウド時代」が到来しつつあります。


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図 2. クラウドサービスの利用状況 (出典 : 総務省「通信利用動向調査」)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html



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図 3. クラウドサービスの利用内訳 (出典 : 総務省「通信利用動向調査」)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html



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図 4. クラウドサービスを利用している理由 (出典 : 総務省「通信利用動向調査」)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html





 クラウドの活用度が高まる一方で、その通信経路であるネットワークにも様々な課題が生じる場合があります。

 では、クラウドを活用する企業のネットワークシステムにおいて、実際にどのような課題が生じているのでしょうか?

 そこでCDEC事務局は、2,443名にものぼる「CTC Forum 2019」の来場者に向け「マルチクラウド時代におけるネットワークの課題」についてのアンケート調査を実施し、CDEC3.0の参加者と共に、企業が抱えるクラウド利用とネットワークの課題について洞察しました。


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図 5. 調査結果を集計するCDEC事務局員



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図 6. 付箋紙ボードに反映された調査結果は来場者の注目を集めた



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図 7. 調査結果を傾聴するCDEC3.0の参加者



 本記事ではCDEC3.0の模様をレポートすると共に、アンケート調査にて得られた「マルチクラウド時代におけるネクラウド利用とネットワークの課題」の一部をご紹介します。



▼ 目次
アンケートの設問内容と回答者の業種
クラウド利用の課題とは
クラウド時代におけるネットワークの課題とは
エッジコンピューティングについて
データセンターの必要性




1.アンケートの設問内容と回答者の業種

 「CTC Forum 2019」の来場者へ「マルチクラウド時代におけるネットワークの課題」について、アンケート調査を実施しました。設問内容は下記になります。

  • 設問 1. クラウド利用の課題って何ですか?
  • 設問 2. クラウド時代におけるネットワークの課題って何ですか?
  • 設問 3. エッジってどう思う?
  • 設問 4. データセンターっていりますか?

 アンケートの回答者の業種は様々でした。

  • 製造
  • 公共
  • 金融
  • 小売 / 卸売
  • 製薬 / 医療
  • 広告 / 出版
  • SI / ソフトウェア



 アンケート調査で得られた結果は即座に付箋紙ボードに反映され、CDEC3.0の開催時刻が迫る頃には、付箋紙ボードが調査結果で埋め尽くされました。


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図 8. アンケート結果で埋め尽くされた付箋紙ボード




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図 9. CDEC3.0 で調査結果を共有





2.クラウド利用の課題とは

 「クラウド利用の課題」についての調査結果を、下記の2軸で整理します。

  • 横軸 : インフラ(オンプレミス、マルチクラウド)利用状況
  • 縦軸 : システム(情報系システム、基幹系システム)の状態



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図 10. 2 軸で整理した「クラウド利用の課題」




 主に目立った回答結果は下記になりました。

  • 基幹系システムがオンプレの企業はセキュリティに課題を感じている方が多い
  • 既にクラウドを使っているが、管理面が課題と感じる
  • SE不足でヒトの面に課題を感じている



 オンプレを主体で利用していると答えた方は、まだまだ多い事が判りました。

 現状はオンプレを利用しているが、今後はクラウドの利用を検討する、もしくはクラウドを利用したいという回答が多く、「クラウド利用のハードルとなっていることは何か?」と率直に伺うと「セキュリティ」と回答した方が多く目立ちました。

 一方、クラウドを利用している状態の方は管理面、SE不足と答えた方が多く、管理の範囲や技術面の幅が広がった事への対応が追い付いていない事が課題であると感じました。



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図 11. 他社の課題を参考にする来場者





3.クラウド時代におけるネットワークの課題とは

 「クラウド時代におけるネットワークの課題」についての調査結果を、下記の2軸で整理します。

  • 横軸 : 横軸 : インフラ(オンプレミス、マルチクラウド)利用状況
  • 縦軸 : ネットワークの状態(インターネット、閉域接続)



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図 12. 2 軸で整理した「クラウド時代におけるネットワークの課題」




 主に目立った回答結果は下記になりました。

  • クラウドを利用する上でのネットワークの課題はセキュリティ
  • 閉域網でのクラウド利用は極端に少ない



 セキュリティを課題に挙げた背景には「クラウドを利用する上でのセキュリティガイドラインが社内で確立されていない」等、クラウドを利用する事だけが先行して決まってしまい、セキュリティポリシーの確立が追い付いていないという回答をいただきました。



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図 13. 付箋紙ボードの内容について来場者と談話するCDEC事務局員





4.エッジコンピューティングについて

 エッジコンピューティングとは、インターネットにつながる末端(エッジ)のデバイスに近い場所にデータを処理する装置(サーバ等)を配置して、データを分散処理をするコンピューティングモデルです。エッジのデバイスとは、利用者のデバイス(スマートフォン)や IoT 機器などが挙げられます。

  • エッジコンピューティング : ネットワークのエッジにサーバを配置して、データを分散処理するモデル
  • クラウドコンピューティング : クラウドにサーバを集約して、データを中央処理するモデル



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図 14. エッジコンピューティング概念図




 ネットワークのエッジ側にサーバを分散配置するエッジコンピューティングのメリットは、負荷の分散と通信の低遅延化を図れる事です。

 サーバを集約化するクラウドコンピューティングに比べ、通信遅延を100分の1程度にする事ができ、リアルタイム処理を必要とする場合に向いていると言われています。


 3 つ目のアンケート調査では、ざっくりと「エッジサーバをどこに配置するべきか?」について伺ってみました。



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図 15. エッジ処理はどこで行う?




 エッジコンピューティングの必要性を感じている業種は主に製造業でした。

 他の業種については、ほぼ「これから検討」「クラウド検討が先」等、エッジ(データ収集ポイント)の検討について消極的な意見が目立ちました。



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図 16. 業種軸で整理した「エッジってどう思う?」の回答結果





5.データセンターの必要性

 クラウド時代における「データセンターの必要性」についての調査結果を、簡単に整理します。



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図 17. データセンターの必要性




 主な回答内容は各社様々でした。

  • オンプレミスのシステムは残る為、無くす事はできない
  • データセンターはどちらかと言えば必要だが縮小する



 昨今、企業はシステムを検討するにあたってクラウドありきで考えるようです。しかしながら、オンプレミスのシステムは完全になくすことができないとのことから、どの企業も暫くは、クラウドとオンプレミスを併用できるハイブリッド構成が主流になるであろうと想定されていました。したがって殆どの企業は、オンプレミスの重要なデータを守るデータセンターの必要性を感じていることがわかりました。



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図 18. CDEC 特設ブースに立ち寄る来場者





まとめ

 CDEC3.0では様々な業種の企業の方々へ「マルチクラウド時代におけるネットワークの課題」についてのアンケート調査を実施し、CDEC3.0の参加者と調査結果について洞察しました。

 アンケート調査の結果を簡潔にまとめると下記の通りになります。

  • クラウド利用の課題
    • セキュリティガバナンスが必要!
    • クラウドを熟知したSEが不足
  • クラウド時代におけるネットワークの課題
    • 課題はセキュリティ
  • エッジコンピューティングについて
    • 一部の製造業は工場をIoT化し、エッジコンピューティングを拠点として検討が進んでいる
  • データセンターの必要性
    • 今後、クラウド利用は高まるがオンプレは残るため、データセンターは不可欠。



 CDEC3.0 に参加された方は、付箋紙ボードを撮影するなど、他社の課題を熱心に聞き入っておられていました。

 私自身もCDEC3.0を通し、様々な情報や多くの気づきを得られました。例えば、ネットワーク課題に「セキュリティ」を挙げられた方との談話より、下記についての課題や対応方針を伺うことができ、勉強になりました。

  • クラウド利用が増える事で複雑になるアクセスコントロール
  • インターネットにデータを置く事への不安



 CDEC3.0では、時間の都合からお寄せいただいた調査結果の一部のみのご紹介に留まりました。


 そこで次回「CDEC4.0」では、全ての調査結果をもとに、マルチクラウド時代におけるネットワークの課題を深堀する予定です。


 尚、「CDEC」の開催案内メルマガの登録方法のご説明及び、過去の開催レポートは下記よりご覧いただけます。


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著者プロフィール

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瀬尾和徳
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社在籍中 | 1. 現在の担当業務 : データセンターサービス全般のマーケティング、販促活動、次世代データセンターサービスのビジネスモデル開発、CDEC事務局員 | 2. これまでの担当業務 : データセンターにおけるカスタマーサポートエンジニア、データセンターにおけるサービス推進企画業務 | 3. 趣味 : 映画鑑賞、子育て(双子育児奮闘中) | 4. 好物 : 肉(牛、豚、鶏)

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