AWS re:Invent2018から見えたこれまでのAWSの歩みと新サービス

AWS re:Invent2018から見えたこれまでのAWSの歩みと新サービス

 今年もやってきました。re:Invent@ラスベガス。
 今回でありがたいことに3回目になります。

 はじめてRe:Inventに来たのはAWSを担当して1年目でした。AWSを担当してからもうすぐ丸3年と思うと感慨深いものがあります。

 そこで本記事では3回目のre:Inventを記念して、これまでのAWSの歩みとトレンドを紹介するとともにre:Invent 2018で発表された新サービスを紹介します。



▼ 目次
クラウド黎明期(2006年~2010年)
クラウドの凄さが多くのユーザに認知された時期(2011年~2014年)
ビックデータ、DevOPSの幕開け(2015年)
アプリケーションを如何に早く作成できるか(2016年)
Machine Learning機能の大幅強化(2017年)
今年のre:Invent(2018年)



1. クラウド黎明期(2006年~2010年)

 クラウドの夜明け時期になります。


 AWSで最初にリリースされたサービスはAmazon S3です。その後にAmazon EC2がリリースされ、順次これまでオンプレミスで構築していた環境をクラウド上でも構築するためのサービスがリリースされています。

 現在もAWSの中心となるサービスでこれらのサービスのみを利用しているお客様も多いのではないでしょうか。

 現在もAWSの根幹となるサービスですが、IaaSの領域から超えていないという形ですね。

  • 2006年03月 : Amazon S3
  • 2006年08月 : Amazon EC2
  • 2008年08月 : Amazon EBS
  • 2008年11月 : Amazon CloudFront
  • 2009年05月 : Elastic Load Balancing
  • 2009年05月 : Amazon CloudWatch
  • 2009年05月 : AWS Auto Scaling
  • 2009年08月 : Amazon VPC
  • 2009年10月 : Amazon RDS
  • 2010年04月 : vAmazon SNS
  • 2010年12月 : Amazon Route 53





2. クラウドの凄さが多くのユーザに認知された時期(2011年~2014年)

 色々な意味で2011年は大きな変化が起こった年ではないでしょうか。

 AWSの東京リージョンが2011年3月にリリースされています。東京リージョンがリリースされたことから、日本でもAWS利用が加速度的に広がっていったと思われます。

 また、同年にAWS CloudFormationがリリースされています。クラウドの特性とAWS CloudFormationが組み合わされたことにより本当の意味での「Infrastructure as Code」が実現されたと感じます。本サービスリリースに伴い、これまでクラウド≒IaaSであった概念が崩れた瞬間ではないでしょうか。

 さらに、2014年にリリースされたLambdaはこれまでのITの概念(ITにはサーバが必要)を大きく変えたサービスだと感じます。

  • 2011年01月 AWS Elastic Beanstalk
  • 2011年02月 AWS CloudFormation
  • 2011年08月 Amazon ElastiCache
  • 2012年01月 Amazon DynamoDB
  • 2012年08月 Amazon S3 Glacier
  • 2012年11月 Amazon Redshift
  • 2013年02月 AWS OpsWorks
  • 2013年10月 AWS Directory Service
  • 2013年11月 Amazon WorkSpaces
  • 2013年11月 Amazon Kinesis
  • 2014年07月 Amazon Cognito
  • 2014年11月 AWS CodeDeploy
  • 2014年11月 AWS Lambda
  • 2014年11月 Amazon ECS






3. ビックデータ、DevOPSの幕開け(2015年)

 2015年から加速度的にサービスリリースの速度が向上しています。また、IoTやビッグデータ処理に対応したサービス群が数多くリリースされています。

 ビックデータと従量課金のクラウドは非常に相性がいいと認識はあったものの、データをどのように受け取るか、溜めたデータをどのように分析するかなど課題もありました。
 AWS IoTや分析のためのツール(Amazon Elasticsearch Service 、Amazon QuickSight)がリリースされたことで、「ビッグデータをクラウド(AWS)で実施しない理由がない」という認識が生まれたのではないでしょうか。

 さらに、デプロイを自動化するためのCodeシリーズもリリースされ、ツールが用意されているからDevOPSを実施するためには「オンプレよりクラウドでシステムを構築したほうがよい」という認識が生まれた年だと思われます。

  • 2014年11月 AWS CodeCommit (リリースは2015年7月)
  • 2014年11月 AWS CodePipeline(リリースは2015年7月)
  • 2015年04月 Amazon EFS
  • 2015年04月 Amazon Machine Learning
  • 2015年07月 Amazon API Gateway
  • 2015年10月 Amazon Elasticsearch Service
  • 2015年10月 AWS WAF
  • 2015年10月 Amazon QuickSight
  • 2015年10月 Amazon Inspector
  • 2015年10月 AWS Database Migration Service
  • 2015年10月 AWS Snowball
  • 2015年10月 AWS IoT






4. アプリケーションを如何に早く作成できるか(2016年)

 2016年は私がAWS担当になった年であり、はじめてre:Inventに参加した年になります。

 これまでインフラを担当していた私にとって2016年のre:Inventは非常に衝撃的でした。

 なぜならインフラサービスのリリース発表がほぼ無かったからです。リリースされるサービスは「システム(アプリケーション)」を作成するのにこんな機能があればより簡単にシステム(アプリケーション)が作成できるものばかりでした。

 この頃からインフラだけでなく「より上位のレイヤ」をきちんと理解し、使いこなせるエンジニアになる必要がある、ということを強く決意した年でした。

 ※なお、ここからはサービス数が多いため、re:Inventでリリース発表されたサービスに絞ります。

  • ・Amazon Athena
  • ・Amazon Rekognition
  • ・Amazon Polly
  • ・Amazon Lex
  • ・AWS IoT Greengrass
  • ・AWS CodeBuild
  • ・AWS X-Ray
  • ・AWS Glue
  • ・AWS Batch
  • ・AWS Step Functions






5. Machine Learning機能の大幅強化(2017年)

 2017年は私がAWS担当の2年目の年でした。
 私自身AWSで利用するサービスの幅を広げており、今年度はどのようなサービスがリリースされるか楽しみにしておりました。

 実際にサービスリリースが発表された際、非常に衝撃的でした。(毎回ですが…)

 今回最も特徴的なものはMachine Learning系のサービスです。これまでAWSではMachine Learning系の機能が競合他社と比較して弱く、Machine Learningを行いたい場合は、他クラウド検討するという事もありました。

 2017年のリリースでMachine Learning系が非常に強化され、実際に利用できるシーンが容易に想像できるレベルになりました。
と、同時にAWSの利用には特化した専門分野が必要となり、自身の担当できるキャパシティをはるかに凌駕している分野が出現し、この傾向は今後も増加するであろうことが予測されました。

  • Amazon EKS
  • Amazon(Aurora Multi-Master & Serverless)
  • Amazon Neptune
  • Amazon S3 (Select & Glacier Select)
  • Amazon SageMaker
  • AWS DeepLens
  • Amazon Rekognition(Video)
  • Amazon Kinesis Video Streams
  • Amazon Transcribe
  • Amazon Translate
  • Amazon Comprehend
  • Amazon GuardDuty
  • Alexa for Business
  • AWS Cloud9






6. 今年のre:Invent(2018年)

 今年度のテーマは「I want it all and I want it now」(すべてが、今欲しい。)でした。
 これは、アプリケーションを開発するユーザ(Builder)が「欲しい機能を(AWS上で)すぐに手に入れることが出来る」ということを意味しています。


 昨年のAWSについては、Machine Learning系が非常に多くを占めていましたが、今回はIaaSを含む全領域について、AWSの機能を使うことによりユーザに手間をかけさせない(やりたいこと≒コードを書くこと)ことに注力をしていました。


 特徴的なものを列挙します。



6-1. Amazon FSx for Windows File Server、Amazon FSx for Lustre

 Windws File ServerはCIFSを提供するサービスとなり、Lustreは機械学習やHPCのためのサービスとなり「S3のバケットとシームレスに接続してコンテンツがLustreファイルシステム上にあるかのようにアクセスする」ことが可能となります。

 これまでファイルサーバとして利用するためのストレージが存在せず、EC2上にWindowsを構築し、CIFSを立てる必要がありました
 本サービスがリリースされたことにより、ユーザ自身が必要としているアプリに最適なサービスを選択できるようになりました。



6-2. AWS Contrl Tower、AWS Security Hub

 マルチアカウントのAWS環境に対し、セキュリティ、運用、コンプライアンスに関するルールを使用してAWS利用における統制を実施できる機能になります。
 これまでユーザがアプリを作成する際、セキュリティやコンプライアンス対応について実施する必要がありましたが、本機能を利用することでそういったものに注意を払う必要なく、アプリケーションの開発に専念できるようになります。



6-3. AWS Lake Formation

 簡単で安全にデータレイクを簡単に設定できるサービスになります。
 これまでデータレイクを作りたいといった場合も「どのようにデータを貯めるか」、「どのような形式でデータを保持するか」、「またどのようなセキュリティコントロールを行うか」を定義するのは煩雑且つ手間がかかる作業でした。
 AWS Lake Formationを利用することで、データの格納場所と適用するデータアクセスとセキュリティポリシーを定義するだけで、Lake Formationがデータレイクを作成してくれます。

 これまで面倒であったことが無くなっていくことにより、Builderにとって必要なものは「Will」のみということが強く感じられました。
 BuilderにとってAWSとはまさに「I want it all and I want it now」であることが感じられました。






まとめ

 本記事では、これまでのAWSの歩みとトレンド、またre:Invent2018でリリースされたサービスについての紹介しました。


 今年度も去年に引き続き、より専門知識が必要とされるサービスも数多くリリースされました。これらのサービスを使いこなすことでこれまで出来なかったことが容易に出来るようになります。
 ただ、これまで以上に「専門分野を持ち」、かつ「フルスタックでITを理解している」エンジニアが必要になることが予想されます。もはやこの大量のサービスを抱えるAWSを1人で使いこなすことは不可能といっても良いのではないでしょうか。


 たしかに、私が関わっている「CUVIC on AWS」というAWSの構築・運用を提供しているサービスだけではカバーできない範囲も数多くリリースされています。しかし、CTCでは「Machine Learning」を専任とするエンジニアや、これからのITの未来を考える「未来技術研究所」のエンジニアが先端技術をいち早く習得しております。


 現状AWSを利用しているけどIaaSレイヤしか触れていない。AWSを使いこないしたいけれど専門知識を持つエンジニアがいなくて困っている。などの悩みを抱えているお客様はぜひCTCにお声がけください。


 私も自称フルスタックエンジニアとして、お客様のAWS活用を推進できる様、日々勉強をがんばります。



ご意見・ご要望・ご感想をお聞かせくださいお寄せいただいたご意見を参考に、Webサイトの改善や情報発信に努めて参ります。





著者プロフィール

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園田一史
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社在職中 クラウドアーキテクト|1. 現在の担当業務 : AWSの導入・運用支援サービス「CUVIC on AWS(キュービック オン エーダブリューエス)」の運営を担当|2. これまでの担当業務 : 国産IaaS型クラウドサービスの企画導入設計を歴任

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