Salesforce Service CloudとAmazon Connect CTI Adapterを連携させてみた

Salesforce Service CloudとAmazon Connect CTI Adapterを連携させてみた

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 (以下、CTC) の戸田です。私は普段、Salesforceを担当しております。

 かつてはA社製品の担当をしていたこともあり、あのAWSが音声基盤を提供する?!といったニュースがありましたので以前より興味を持っていました。そこで今回は最近問合せの多いAmazon Connect CTI AdapterをSalesforce Service Cloudと連携させてみた感想を書きたいと思います。

 今後不定期にアップしようと思います。よろしくお願いします。



▼ 目次
クラウドPBXってどんなもの?
AWSとして見たAmazon Connectイメージ
簡単にインスタンスが作れる!
ユーザビリティの高いUI
コールフローを作ってみる
CCP(Contact Control Panel)ソフトフォン起動




1. クラウドPBXってどんなもの?

 Amazon Connectはご存じのとおりクラウドPBXですが、実際クラウドPBXってどんなもの?といった疑問があります。

 それまでは~2003年ごろまでのDigital PBX、それ以降のIP PBXなどオンプレミスでサーバーをマシンルームに・・・ルーター、スイッチHUBなどなどラック数本にわたりマシンルームを占拠しておりました。

 クラウドに集約されることによりそれらがすべて無くなる(?)というエコなシステムです。インターネット環境があればコンタクトセンターのロケーションを選ばないのもいいところですね。

 以前、Salesforce World Tour Tokyo 2017にService Cloudを出展する際にCTI連携もという案があり、同じくクラウドPBXのG社製品をメーカーさんの協力のもと、私が構築したのですが率直な感想は「簡単」でした。


今回のAmazon Connect環境作成も同じくクラウドPBXということで、G社製品と少し比較をしながら、私の体験記としたいと思います。





2. AWSとして見たAmazon Connectイメージ



Amazon Connectサービス概要図
図 1. Amazon Connect サービス概要図


 Amazon Connectを中心にS3にコンタクト履歴、通話録音、ヒストリカルレポートを保存し、Lambdaで外部アプリケーションと連携、Cloud Watchで監視するなど、AWSサービスが連携していることがわかります。

 将来的にもかなりのサービスが付加されていくことが考えられます。

 以前はバージニアリージョンでしかAmazon Connectは利用できませんでしたが、今現在(2017年11月)はシドニーリージョンでAmazon Connectが利用できます。

 今後、日本リージョンでAmazon Connectが利用できるようになればかなりのユーザが採用するのではないかと思います。

 ※製品およびサービス一覧(リージョン別)AWSページへリンクhttps://aws.amazon.com/about-aws/global-infrastructure/regional-product-services/





3. 簡単にインスタンスが作れる!

 では、さっそく構築してみましょう。

 レガシーな私はPBXのインストレーションの線表を引くのに、OS入れて、疎通確認して、アプリケーションインストールして・・・1Weekだなって思ってしまいますが、Amazon Connectは1日あればAWS上にインスタンスを作成できてしまいます。



Amazon Connectインスタンス作成イメージ

図 2. Amazon Connect 作成後の画面




 インスタンス作成段階で「適切なIAMアクセス許可がないため、サービスロールを作成できません・・・」などというエラーがでましたが、なにやら作業を実施していたアカウントに権限がなかったようです。

 このあたりはAWSの管理者に相談して解決です。

 この先もこの権限の壁にぶちあたることになります・・・





4. ユーザビリティの高いUI

 インスタンスが作成され、Amazon Connectにログインしたらこの画面になります。


Amazon Connectログインイメージ

図 3. Amazon Connect ログイン後

 え?これだけ?というのが最初の印象です。

 メニューがPure Cloudよりもずいぶん少ないのでとっつきやすいかもしれません。

 実際は、左側のアイコン部分がメニューバーになっており、そこから各コマンドを実行できます。こちらを頻繁に使うことになるでしょう。


 ユーザ管理や、コールフロー作成、レポートなどすべてこの画面から行います。

 まずは、電話番号取得ですが、050と0800が取得できるようです。

 しかし、050番号は枯渇しているようで、0800しか取得できません。(2017年11月現在)


 電話番号に関しては今後任意の番号を使用できるようになればよいと思います。

 内線番号の作成が必要ありません。最近はPBX(Private Branch Exchanger)という概念がなくなっています。交換機ではないですからね。


 バックオフィスとの連携もバックオフィス側はAgentでログインするかデスクフォンとして電話番号(E.164形式)を指定するようです。





5. コールフローを作ってみる

 インバウンドコールの流れは以下の概念図のようになっています。


Amazon Connectインバウンドコール概要図_コンポーネント
図 4. コールフロー




 コールフロー、キュー、プロファイル、エージェントというコンポーネントが必要です。

 構築してみてわかったのですが作成順序としては、エージェント(ユーザ)→キュー→プロファイル(ルーティングプロファイル)→コールフローがよろしいかと思います。スキルという概念ではなく、キューをグループ化し、エージェントがそのグループ(プロファイル)に所属するイメージです。

 着信条件は、ルーティングプロファイルごとに受付可(Available)になってからの時間が長い順、かつ、キューごとの優先度(スキルレベルのような感じ)で評価するとのことでした。

 エージェントはいずれか一つのルーティングプロファイルに所属するので、ルーティングプロファイルを条件(キューと優先度などの組合せ)ごとに作成していくことになります。

 エージェント、キュー、プロファイル作成はさほど難易度は高くないので画面イメージは割愛します。

 次はコールフローです。

 「問合せフロー」を作成しました。


Amazon Connectインバウンドコール問合せフローイメージ
図 5. 問合せフロー



 ここではSalesforce Service Cloudとの連携として、AWSのLambdaからSalesforceの名前のふりがな項目を見に行き、それをPollyで読み上げるといった内容にしています。なお、Pollyは、今回は、日本語女性の音声で設定しましたが、日本語男性の音声が追加されています。今後さらに選択肢が増えるものと思われます。

 外部アプリケーションとの連携はLambda経由となりますので、プログラム次第でいかようにでもできそうな感じです。

 最後に、保存したコールフローを電話番号に紐づければ終了です。


 このフローですが、「問合せフロー」の他のフローとしてキュー中のお待たせ中の挙動となる「顧客キュー」など、用途ごとにタイプの違うフローが用意されています。

 コールフローデザイナーとしては、かなり洗練されていると思います。Visioなどで書くイメージです。

 Pure Cloudよりも設定項目が少なく単純です。






6. CCP(Contact Control Panel)ソフトフォン起動

 Amazon Connect右上の受話器のようなマークをクリックすると起動されます。


Amazon Connect_CCP(Contact Control Panel)ソフトフォン起動
図 6. CCP




 状態遷移に関しましては、下記の記事で説明が既にありますので割愛します。
 (Amazon Connectを使ってみたいときに、理解しておくと良いなと思うこと)


 CCPはWebRTCを採用しているようで、音声はPCのサウンドボードを使用します。
 使ってみて気になった点が数点あります。

  • 起動時はステータスがAvailable(受付可)から始まる。ここはOfflineを初期値にしたい。
  • 終話後、ACW(After Call Work:後処理)に遷移するが、一旦Available(受付可)にした後、ACW(後処理)に変更できない。
  • ACW(後処理)時のラップアップコードや通話時のコールワークコードのような(通話種別)を記録する入力モードがない。
  • Offline(離席)モードなどに移行する際にリーズンコード(理由)を入力するモードがない。



このあたりの機能は使用されているセンターは多いのではないでしょうか?



リーフレットを読む







7. さいごに

 Amazon Connectの良さは、UIの扱いやすさ、容易なコールフロー作成、フルブラウザでの操作(電話機が必要ない)など手軽さが挙げられます。

 心配な音質ですが、Opus(RFC 6716 によって標準化されている非可逆音声圧縮フォーマット)のコーデックを使用しているため、個人的には非常に良い状態です。インターネットのトラヒックに依存するのでこのあたりは負荷をかけてテストする必要があるかと思います。

 クラウドという性質上、導入の速さ、解約の容易さもあり、コールセンターのスターターとして採用するのに最適といえるサービスだと思います。

 今後のバージョンアップでユーザからの要望をもとに機能追加されると聞いておりますので今後期待ですね。

 本記事ではご紹介できなかったSalesforce Service Cloudとの連携、コンタクトセンターレポーティング、奮闘記等・・・まだまだお伝えしたいことが山ほどあります!

 そこで、今後、第二回以降の執筆は私と同じSalesforce担当者にも執筆を協力いただき、もうちょっと「Deepに使え!」的な話や設定の際に役立つサイトについてお伝えします。



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著者プロフィール

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戸田浩市
伊藤忠テクノソリュージョンズ株式会社在職中 | 1. 現在の担当業務 : Salesforce を担当 | 2. これまでの担当業務 : コンタクトセンターシステムを作り続けて約20年

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