SAP ERPからSAP S/4HANAへ最短4カ月で移行する方法とは?

SAP ERPからSAP S/4HANAへ最短4カ月で移行する方法とは?

 SAP ERP(ECC6.0)の保守サポートが終了するまであと7年。この「SAP 2027年問題」は、SAP ERPで基幹システムを構築している企業にとって放置できない課題であり、最新のSAP S/4HANAへの移行を検討している企業も多い。

 しかしながら、新しいデータベースアーキテクチャーを採用し、機能面でも大幅な進化を遂げたSAP S/4HANAへの切り替えは簡単なことではない。

 本記事では、社内の情報システム部門の工数を最低限に抑え、短期間かつ確実にSAP S/4HANAへの移行を実現する方法について探ってみる。

クレスコ・イー・ソリューション株式会社様にご寄稿いただいた記事です)



▼ 目次
1. 移行のノウハウを持つベンダーの争奪戦が始まる?
2. アセスメントからオプティマイゼーションまで一気通貫で対応する「MOAサービス」
3. アプリケーションの変更とアドオンプログラムの修正がポイント






1. 移行のノウハウを持つベンダーの争奪戦が始まる?

 保守サポートの終了まであと7年と聞くと、まだまだ先のことのように思えるが、実際のスケジュールを考えるとそれほど余裕はない。

 ところが、顕著な移行事例が表に出てきていないこともあって、現状は様子を伺っている企業がほとんどのようだ。

 しかしこのまま時間が経過し、2027年が近づいてくると、さすがにどの企業も動き出すはず。

 国内2,000社以上といわれるSAP ERPのユーザーが一斉に移行を開始するとなると、移行のノウハウを持つベンダーの奪い合いになる可能性がある。



 いざとなったらSAP ERPの運用・保守を委託している既存ベンダーに任せればいいという考え方もあるかもしれない。

 しかし、これらのベンダーが必ずしも移行のノウハウを持っていると考えない方がいい。というのも、SAP S/4HANAは従来とは異なる、まったく新しいデータベースアーキテクチャーを採用しているからだ。

 SAP S/4HANAでは、インメモリーデータベースのSAP HANAが必須となり、従来のようにOracle DBやSQL Serverは選ぶことができない。

 マスターの持ち方も変わり、得意先マスターと仕入先マスターがビジネスパートナーとして統合される。

 Non-Unicodeで運用している場合は、Unicode化も必須だ。よって、「SAP 2027年問題」に向けてSAP S/4HANAへ確実に移行するためには、ベンダー選びが重要となるわけだ。






2. アセスメントからオプティマイゼーションまで一気通貫で対応する「MOAサービス」

 SAPパートナーであるクレスコ・イー・ソリューションは、これまで長年にわたりSAP ERPの導入やバージョンアップを支援してきた経験を生かし、SAP S/4HANAに特化した「MOA SAP S/4HANA 短期移行サービス」(以下、MOAサービス)を提供している。

 MOAサービスでは、既存のSAP ERPを下記の3ステップを経てSAP S/4HANAに移行する。

  1. アセスメント(事前検証)
  2. マイグレーション(環境移行)
  3. オプティマイゼーション(最適化)


 それぞれの特長は、アセスメントは
専用ツールを活用することで最短1カ月で実施可能だ。

 マイグレーションとオプティマイゼーションを合わせても最短4カ月での移行を実現する。

 また、アセスメントからオプティマイゼーションまでは一気通貫で対応するため、情報システム部門への負担も少ない。

 SAPジャパンが展開する「パートナー・パッケージ・ソリューション承認」を取得済というのも心強い限りだ。




2-1. アセスメント (事前検証)



SAP移行
図 1. アセスメントのタスクと特長



 アセスメントでは、「標準機能」と「アドオンプログラム」の調査を行い、移行の影響箇所や修正工数などをまとめたレポートを作成する。詳しくは下記よりお役立ち資料「SAP S/4HANAの移行サービスを選定するための勘所」を参照してほしい。


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2-2. マイグレーション (環境移行)



SAP移行
図 2. マイグレーションのタスクと特長




2-3. オプティマイゼーション (最適化)



SAP移行
図 3. オプティマイゼーションのタスクと特長






3. アプリケーションの変更とアドオンプログラムの修正がポイント

 「マイグレーション」と「オプティマイゼーション」についてクレスコ・イー・ソリューションのエキスパートが解説する。

SAP移行



 マイグレーションとオプティマイゼーションのサービスは実質一体となって提供される。

 導入企業の関与の仕方によっては、マイグレーションのみ、あるいはオプティマイゼーションのサービスのみを選ぶこともできる。

 いずれにせよ、マイグレーションとオプティマイゼーションのフェーズは、通常のシステム導入と同様、下記の 4 ステップを踏むことになる。

  1. 準備フェーズ
  2. 要件定義フェーズ
  3. 実現化フェーズ
  4. テスト・移行フェーズ





3-1. 準備フェーズ

 準備フェーズでは、現行のシステム環境をそのまま新システムに切り替えるための準備を行う。

 SAP S/4HANAはデータベースがSAP HANAに限定されるため、Oracle DBやSQL Serverを利用しているケースにおいては切り替えが必要となる。

 その際、OSやハードウェアの互換性も確認したうえで、システム全体の構成を検討していかなければならない。


 そこでまず、クレスコ・イー・ソリューションのベーシス担当者が必要なシステム要件を洗い出し、最適なシステム構成を提案する。

 その際、オンプレミスからクラウドへの移行を検討している場合は、 SAPや基幹系システムに特化したクラウドサービス「CUVICmc2」など、要件に合わせたクラウドサービスも選択することも可能だ。




3-2. 要件定義フェーズ

 要件定義フェーズでは、アプリケーションの変更に伴う新業務設計の検討と、アドオン修正対象機能の確定を行う。

 アセスメントサービスで洗い出したSAP ERPとSAP S/4HANAのFit&Gapの結果をもとに、修正が必要な機能の要件を詰めていく。


 この点についてビジネスコンサルティング事業部 コンサルティングサービス第2部 シニアコンサルタントの中村邑仁は「SAP S/4HANA化によって大きく変更される部分は、マスター管理、NewGL対応、固定資産管理、予算管理などです。SAPシステム移行に関して経験豊富なコンサルタントが、要件定義の段階で、影響範囲に対し適切なアプローチを取ることで、後続作業である開発の期間短縮とコスト削減に貢献します」と解説する。


 要件定義の中でも、特にポイントになるのがマスターの管理方法の設定だ。

 例えば、得意先と仕入先のマスターはビジネスパートナーマスターに統合される。それに伴い、債権債務の相殺や締め処理のため専用に開発していたテーブルやプログラムは不要となる。

 また、品目マスターはコードの項目長が従来のSAP ERPから変更される。

 こうした変更から生じるアドオンプログラムへの影響をテストするため、対象機能の洗い出しが必要となる。


 ビジネスコンサルティング事業部 コンサルティングサービス第2部 シニアコンサルタントの中村邑仁は「SAP S/4HANAではマスターの単純な移行はできません。新業務要件に応じて、コード体系の見直しや設定内容の変更を検討し、最適化することが求められます。クレスコ・イー・ソリューションでは、新コード体系の提示からシステム設定までをカバーしていますので、ユーザーによる設定作業の負担も軽減できます」と説明する。




3-3. 実現化フェーズ

 実現化フェーズでは、アセスメントと要件定義で対象となった「標準機能」と「アドオンプログラム」に、実装を行っていく。

 標準機能においては、定義された要件に準じてカスタマイズやビジネスファンクションを設定していく。

 アドオンプログラムに関しては、洗い出された修正箇所に対し、SAP S/4HANAに適合するソースコードへ置き換えていく。


 実現化フェーズでは、アドオンプログラムの修正がポイントとなる。ほとんどは単純な置き換えで対応できるが、文字コードの変更により、周辺システムとの疎通ができなくなる可能性なども存在する。

 特に日本の企業は膨大な数のアドオンプログラムを作り込んでいることが多く、場合によっては大きな影響を与えるかもしれない。


 中村は「アセスメントで事前にアドオンプログラムの影響箇所を洗い出し、SAPシステムに精通したコンサルタントのナレッジを活かすことで、ある程度の対応は可能です。しかしながら、周辺システム含めたシステム環境の設定状況は、顧客ごとに千差万別なため、実際にやってみなけれればわからないこともあります。また、事前の修正調査が正しくない場合は後のテスト工程でバグが頻発する可能性もあります。こうした事態を防ぐためにも、豊富な経験とノウハウを持つベンダーを選ぶべきです」と指摘する。



 ところで、SAP S/4HANAへの移行によってシステム全体のパフォーマンスが向上すると考えている方がいるかもしれないが、単純な置き換えだけでは期待されるほどの効果は見込めない。速度の改善が望まれる機能については、S/4 HANAで最大のパフォーマンスが発揮できるようにチューニングすることが必要なのだ。これにより、レポートの出力時間などが大幅に改善される可能性が高まる。




3-4. テスト・移行フェーズ

 テスト・移行フェーズでは、実装した機能の結合テスト、さらには周辺システムを含めたシステムテストを実施して影響の有無を確認する。

 その後、システム切り替えをするために、手順の確立と所要時間の計測を目的とした移行リハーサルを実施する。この段階で実際のダウンタイムや、手順の正確性を確認していく。

 一般的にはリハーサルの1回目で移行手順を確認し、2回目で移行時間を確認するステップを取るが、リハーサルの回数は相談して決めることもできる。

 最後に本番移行日を決めて実行すれば、基本的な移行は終了だ。


 中村はMOAサービスの強みについて「従来のシステム移行プロジェクトは、アセスメントの重要性が認知されておらず、結果、テストフェーズになって重大な不具合が検出され、要件定義・実現化の手戻りに至るようなケースも見られました。このように、テストフェーズに長い期間・大きな工数をかけていましたが、MOAでは、アセスメントであらかじめ影響箇所を特定し、実現化フェーズで対応することで、不具合の発生を未然に防ぎます。そのため、テスト期間を短縮でき、不具合も最小限に抑えることが可能なのです」と説明する。


 以上がマイグレーションとオプティマイゼーションの基本的な作業だが、SAPシステムにおける作業のほとんどはクレスコ・イー・ソリューションが対応する。ユーザー企業はインフラ基盤の調達や、周辺システムとの連携など調整作業が主な役割となるが、これらについても相談できる。新業務設計では必要に応じて業務部門のキーマンの参画も求められるが、あらかじめアセスメントを済ませておけば、情報システム部門、業務部門とも移行に関与する作業は限りなく少なくなる。




さいごに

 SAP S/4HANAへの移行のタイミングは、何も「SAP 2027年問題」だけでなく、経営計画による業務改善の実現や、ハードウェアの更新など、さまざまなケースで訪れる。

 貴社が移行を考えているならば、まずはクレスコ・イー・ソリューションに相談し、MOAサービスのアセスメントから始めてみてはいかがだろうか。



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