VMware Cloud on AWSアップデート(2018年11月30日)|3つの事例と4つの機能拡張

VMware Cloud on AWSアップデート(2018年11月30日)|3つの事例と4つの機能拡張

 2018年11月30日、CTCの主催による「VMware Cloud on AWS 徹底検証セミナー」が都内で開催された。セミナーでは、ヴイエムウェア株式会社 ソリューションビジネス本部クラウド技術部のシニアクラウドスペシャリスト、岡田憲昌氏が、「VMware Cloud on AWS の概要とアップデート」と題して講演を行った。



▼ 目次
1. オンプレともAWSとも親和性が高い理由
2. アップデートで大規模な機能拡張を実現
3. 4つの用途でのユースケースを紹介




1. オンプレともAWSとも親和性が高い理由

 まず岡田氏は、VMware Cloud on AWSの概要を紹介した。そのポイントは大きく2つあり、1つはオンプレミスとの親和性の高さ、そしてもう1つがAWSネイティブサービスとの親和性の高さである。前者の理由としては、オンプレミスのVMware vSphereの環境とほぼ同じ環境がクラウド上で利用できる点が挙げられる。


 岡田氏は、「このため仮想マシンを非常に容易にクラウドに移行することができる」と強調した。


 そして後者のAWSネイティブサービスとの親和性については、VMware Cloud on AWSの環境とAWSのネイティブサービスの環境が同一のアベイラビリティゾーンにあるため、非常に高速で低遅延のネットワークで接続されることになり、両社の連携がスムーズに行われる点が理由として挙げられるのである。


 このような点を踏まえたうえで、岡田氏は、VMware Cloud on AWSの特徴として以下の5項目を挙げた。

    1. 専用に設計された管理コンソール経由でシンプルな調達が可能
      • シンプルで使いやすい専用の管理コンソールを使ってSDDC環境の払い出しを120分程度、ホストの追加が12程度と、オンプレミスに比べて圧倒的に早く調達できる
    2. AWSベアメタルサーバにインプリされたVMwareのSDDC環境(Software-Defined Data Center)
      • 運用ツールはオンプレミスで使っているものがすべてクラウド環境で利用できるため、既存の資産をそのままクラウドで活かすことが可能となる
    3. ネイティブなAWSサービスとの連携
      • VMware、AWS両者から100人規模のエンジニアを投入し、150以上ものネイティブAWSサービスの連携の対応を順次進めている
    4. クラウド移行を協力にサポートするVMware Hybrid Cloud Extension
      • vSphereのバージョンの差異をツールで吸収することができるため、オンプレミスの制限が少ない
    5. VMwareによる販売・運用・サポート
      • VMwareの運用部隊が運用やメンテナンスを行うことにより、運用コストの削減に寄与すること、専任のカスタマーサクセスチームがワンストップでサポートを提供する



VMConAWS 徹底検証セミナー

図 1. VMware Cloud on AWSの特徴



 「2019中にAWSのすべてのリージョンでVMware Cloud on AWSのサービスを提供する予定だ。主要なコンプライアンス規制・基準にも順次対応している」(岡田氏)


 VMware Cloud on AWSが提供する価値としては、オンプレミスとクラウドで一貫性のある運用が可能であることや、容易かつ柔軟なワークロードのポータビリティ、ネイティブAWSサービスとのシームレスな連携、そして小規模から大規模まで柔軟な構成が可能であることが挙げられる。





2. アップデートで大規模な機能拡張を実現

 岡田氏は、VMware Cloud on AWSの主な機能について一通り紹介した後に、アップデートの内容に踏み込んだ。

 アップデート「VMware Cloud on AWS M5/M5P1」のハイライトとしては、以下の4つが挙げられる。

    1. より多くの地域での利用を促進
    2. クラウドへの移行を加速する移行機能の強化
    3. インフラ、アプリのコストを最適化するオプションを追加で提供
    4. より高速でセキュアなネットワーク構成の実装

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図2. VMware Cloud on AWS M5/M5P1ハイライト



 「リージョンについては、2019年末にすべてのリージョンで最新機能が使えるようになる予定だ」と岡田氏は改めて強調した。

 
 新機能の1つであるVMware Cloud Motion by VMware Hybrid Cloud Extensionが使えるようになることで、複数台の仮想マシンを無停止で移行できるようになるため、より環境の制約がなくなり要望に応じた利用が可能となる。


 続いてシングルホスト構成、マルチホスト構成、ストレッチクラスタ構成といった、より多様な構成も可能になっている。岡田氏は、「性能や可用性、コストなどの要件に応じた柔軟性の高い構成で提供できるようになった」とコメントした。


 さらに今後はハードウェアについてもAmazon EBSとEC2 R5インスタンスベースの大容量のVMware vSAN構成が可能になる予定だ。


 他にも、NSX-Tをベースとした高機能かつ高品質なハイブリッドなネットワークの提供や、vSANの暗号化機能、そして日本のリージョンを利用している場合には日本のコンプライアンス対応が可能になるなど、VMware Cloud on AWSはアップデートによりさらなる進化を遂げることとなった。





3. 用途毎のユースケースを紹介

 VMware Cloud on AWSの主なユースケースが用途ごとに紹介された。その内容は下記の 4 つに大きく分類される。



3-1. データセンターの拡張

 データセンターの拡張に該当するのが、中東のオンラインゲーム会社「Playtika」の事例である。同社はデータセンターのキャパシティが足りなくなったが、既存のままのスキルセットをクラウドに移行したいというニーズからVMware Cloud on AWSを選定したのだった。結果的に同社は650以上の仮想マシンをわずか5日でクラウドに移行することに成功している。

3-2. ディザスタリカバリ

 ディザスタリカバリでは、米国の住宅ローンのアウトソース企業であるPHH Mortgageが例として挙げられた。同社は災害対策向けデータセンターの契約更新を回避すべく、VMware Cloud on AWSへの移行を決断。わずか数日で350の仮想マシンを移行でき、DRサイトの閉鎖が実現したのである。



3-3. クラウドへの移行

 クラウドへの移行の事例となるのがソフトウェア会社Black Mountain Systemsだ。同社は、既存のデータセンターが高コストでSLAにも問題を抱えていた。そこですべてをクラウドに移行することを決断し、VMware Cloud on AWSの利用を開始したのである。こうして380の仮想マシンと30TBものストレージが、20日ほどで移行完了することができた。



3-4. 次世代アプリケーション

 次世代アプリケーションについて岡田氏は、「あまりピンとこないかもしれない。私自身もそうでどのようなものがあるか考えていたが、例えばAWSが新たにリリースしたGround Stationのようなサービスもその対象となってくるのでは」と語った。


 AWS Ground Stationは、世界中の12カ所に設置されるフルマネージドな基地局アンテナを使用して、衛星からAWSのリージョンにデータを容易かつコスト効率良くダウンロード可能な新しいサービスとなっている。基地局で衛星データを受信した後は、すぐにAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)インスタンスで処理したり、Amazon Simple Storage Service(S3)に保存することができるという。





さいごに

 「全く新しいアプリケーションを全て新規に開発することは容易ではないケースも多い。既存のシステムとAWSのサービスを連携させることで、効率的に実施することができると考えられる。自社の既存システムをVMware Cloud on AWS にそのまま持ってきて、Ground Stationのような新基軸のサービスと連携して次世代アプリケーションを構築していくというのも一つの選択肢ではないか」と語った岡田氏は、「とはいえユースケースはお客様次第。今後もお客様と新しい使い方、どうやったら上手く使えるのかをお客様と一緒に考えながら、積極的に発信していきたい」と力説して講演を締めくくった。


 VMware Cloud on AWS に関する情報やセミナー情報については、下記よりご覧いただけます。


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