基幹・業務システムの品質要求に応えられるクラウドを選ぶ方法とは

 従来のシステムをクラウドへ移行する企業が増加している。特に最近は、基幹系・業務系システムのクラウド化を検討する企業が増えているようだ。しかし、基幹系・業務系のシステムはクラウドの「品質」が何より重視される。では、その「品質」とは、具体的に何を意味しているのか。SLAだけでは分からないクラウドの「本当の品質」を見極める方法をお伝えしよう。



1. 基幹系・業務系システムのクラウド移行を阻害する要因とは?
2. SLA「99.99%」に潜むワナ、その数字の本当の意味は何か?
3. SLAだけでは判断できない! クラウドの本当の「品質」とは
4. 導入後に後悔しない! 基幹系・業務系システムに適したクラウド基盤の見極め方
5. 決定版!!「クラウド基盤の品質チェックリスト」




1. 基幹系・業務系システムのクラウド移行を阻害する要因とは?

 企業におけるクラウド活用が加速している。新たなシステムを導入する際は「クラウドファースト」が当然となり、既存システムのクラウド化も活発だ。特にメールやグループウェアなどの情報系システム、顧客管理やマーケティング、新規ビジネスを支援するシステム等は、クラウドを前提としたシステム開発が当たり前になってきた。
 クラウドの利点は言うまでも無く保守・運用が不要でイニシャルコストが安く、導入までの時間も短い点にある。されに拡張性と柔軟性にも優れるIaaS型クラウドは、急激に変化するビジネス環境に追随できるITインフラとして、もはや不可欠な存在といえるだろう。
 そして、会計や購買、生産・販売、人事管理等の基幹系・業務系のシステムについても、いよいよクラウド化の動きが始まったようだ。これらのシステムをオンプレミスで抱えると、ハードウェア/ソフトウェアの保守・運用に膨大な手間とコストがかかる。さらに、システム更改や専任担当者のコストまで含めるとその負担は大きい。そこをクラウド化すれば、企業の負担は一気に軽減される。
 一方で基幹系・業務系システムに関しては、「オンプレミス」にこだわる企業が多いのも事実だ。日経BPコンサルティングが2017年に実施した「基幹系システムに関する調査」のデータを見ると、オンプレミスにこだわる企業は「セキュリティ」、「コスト」、「パフォーマンス」の3つを課題と考えていることが確認できる。逆にいえば、この3点をクリアできるIaaS型クラウドを選択できれば、基幹系・業務系システムのクラウド化が、一気に進展する可能性があるのである。

クラウド品質

(基幹系システムに関する意識調査レポート. 従業員数規模が500人以上の企業の情報システム部門幹部を中心となる240件の回答より)




2. SLA「99.99%」に潜むワナ、その数字の本当の意味は何か?

 基幹系・業務系システムに適したIaaS型クラウドを選定する際、企業が真っ先に注目する点がSLAだろう。SLAとは「Service Level Agreement」の略で、クラウド事業者と利用者の間で結ばれるサービス品質保証のことだ。たとえば、SLAに99.99%と書かれていれば、月間の使用可能時間99.99%が保証され、それを満たさなかった場合は返金などに応じるクラウド事業者が多い。
 ただし、SLAの数字だけに縛られると、大きな誤りを犯す可能性があるため注意が必要だ。SLA の数字が意味する内容は、クラウド事業者によって異なるからだ。
 たとえば、大手パブリッククラウド事業者の場合、SLAの99.99%という数字は、複数のリージョンにまたがって構築された複数の仮想マシンのうち、少なくとも1つの仮想マシンへの「接続可能な時間」を意味している場合がほとんどだ。
 つまり、自社で管理している仮想サーバだけに障害が発生してシステムが利用できなくなっても、データセンターそのものが問題なく稼働し、接続可能な状態にあるなら、それはSLAの対象にはならないのである。
 したがって、企業は仮想サーバの障害に備えて、自ら対策を立てなければならなくなる。ところが、一般的に基幹系・業務系システムをクラウド上で冗長化することは技術的に難しい。このため、当初の想定を超えた手間とコストがかかる可能性がある。
 こうした問題を避けたいのであれば、仮想サーバ単位でSLAを設定しているクラウド事業者を選ぶことがポイントになる。仮想サーバそのものの稼働時間が保証されているなら、それを前提とした最小限の冗長化ですむからだ。

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3. SLAだけでは判断できない! クラウドの本当の「品質」とは

 前述したように、基幹系・業務系システムに適したクラウドの第一条件は「サーバ単位のSLA」だ。ただし、それだけではまだ十分ではない。なぜなら、SLAだけでは分からないクラウドの「品質」があるからだ。
 無論、クラウドの根幹にはデータセンターが存在する。大手のパブリッククラウド事業者は、こうしたデータセンターを世界中に展開し、相互にネットワーク接続して運用している。データセンター内には膨大な数のサーバやストレージ、ネットワーク機器、電源や冷却装置等が設置され、これらは24時間365日、運用が行われている。
 したがって、そこでは定期的なメンテナンスも行われているし、日々、障害も発生しているのが実態だ。ユーザーからは見えないが、データセンターで行われている作業は、通常のオンプレミスのシステムと変わらない。
 このため、突然、サーバが停止してサービスが使えなくなるリスクは常にある。強制的に電源が切れると、保存されていないデータは失われる。ストレージの障害は、さらに深刻だ。万が一、ストレージが故障してOSからの入出力が受け付けられなくなると、OSそのものがハングアップするだけでなく、データが消失する場合もある。実際に海外のパブリッククラウド事業者には、データをバックアップしていないところも少なくない。 
 また、ネットワークの障害が発生しても、サーバ、ストレージ、その他機器との通信が不可能となり、基幹系・業務系システムを利用できない事態に陥ってしまう。前述のように、仮想サーバに接続できなければ保証の対象にはなるが、業務やサービスが止まった損害までは保証されない。
 このように、クラウドの「品質」はSLAだけでは分からない。では、どうすれば"本当の品質"を見極められるのだろうか?!



4. 後悔しない! IaaS 型クラウドの見極め方

 そもそもクラウド基盤とは何であろうか。クラウドサービスはサービス事業者とカスタマーの責任分界点の違いによって、IaaS、PaaS、SaaS とに大別される。IaaS (Infrastructure as a Service) 型クラウド基盤とはクラウド・コンピューティングの最下層に位置し、サーバやネットワーク、ストレージなどのハードウェアを仮想化技術によって構築し、これをクラウドから提供する基盤サービスを指します。IaaS型基盤にOS やミドルウェアまで領域を拡大したクラウド基盤を PaaS (Platform as a Service)、アプリケーションまで含む基盤を SaaS (Software as a Service) という。以降では、柔軟性に富み基幹系・業務系システムに向くIaaS型クラウド基盤に注目する。

クラウド品質


図 1. サービス毎のクラウド基盤概要図

 通常、大手パブリッククラウド事業者が提供するIaaS型クラウドでは、その機器構成や運用ポリシーは開示されていない。どのようなハードウェアが設置・構成され、日々、どのような運用が行われているか、ユーザーは直接確認することはできないのだ。
 代わりに、こうしたクラウド事業者が重視しているのが認証の取得だ。情報セキュリティや金融機関向けの安全対策基準、ITマネジメントの認証などを取得し、安全性・信頼性を担保する。
 もちろん、こうした認証取得が重要なのはいうまでもない。しかし、基幹系・業務系システムを安心して運用するには、けっして十分とはいえない。たとえば、外部の監査機関から会計処理上の不備を指摘され、システム監査を求められたとしよう。システム監査は、独立した立場であるシステム監査人が、「信頼性」「安全性」などの観点で、情報システムを検証または評価することだ。
 ところが、会計システムがパブリッククラウド上にあると、監査そのものができない可能性が出てくる。最悪の場合、システムをオンプレミスに戻す必要さえ生じるかもしれない。
 こうしたリスクを避けるには、機器構成や運用ポリシーが公開され、必要であればデータセンター内への立ち入りが許されているクラウド事業者を選定することが重要になる。監査に必要な情報は、設置されている機器やその運用体制を直接確認しないとわからないこともあるからだ。
 したがって、クラウド事業者の選定にあたっては、機器構成や運用ポリシーを明確にし、データセンター内の見学、或いは企業からの要請に応じて内部確認に対応できる事業者を選ぶことも重要な条件になる。

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5. 決定版!!「クラウド(IaaS)選定チェックリスト」

 これこまで、基幹系・業務系システムに適したIaaS型クラウドを選定する際に注意すべき点について説明してきた。もちろん、本格的な検討には、さらに詳細なクラウドの品質確認が必要になることはいうまでもない。しかし、はじめてクラウド基盤を検討する或いは、現在利用しているクラウドから別のクラウドへ移行を検討しているIT基盤担当者にとっては、アマゾン ウェブ サービス(AWS)をはじめとする様々なIaaS型クラウドサービスの中から、具体的にどのような品質評価項目を基に、システムが要求する品質に応えられるクラウドを選定すべきなのか、なかなか分からないことも多いのが現実だ。
 そこで伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 (以下、CTC) は、10年以上にわたって培った自営クラウドの運用ノウハウやクラウド移行ノウハウ、お客様からご要望・ご質問いただくポイントを基に客観的な視点から「クラウド(IaaS)選定チェックリスト」を作成した。 チェックリストは100を超えるチェック項目からなり、機能面の項目にとどまらず、コスト、セキュリティや地理的条件、提供事業者のサポート体制や運用、契約、見過ごされがちな計画停止やメンテナンス作業の実施要項の確認、内部不正対策の確認項目も含まれています。チェックリストは下記からダウンロードできるので、基幹系・業務系システムが求める品質を提供できるクラウド基盤の選定にお役立ていただきたい。

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6. それでも困ったときは?クラウド基盤の選定支援サービスを利用しよう

 もはや、企業システムにとって「クラウド」は必須のインフラだ。ただし、俊敏性を第一とするシステムに適したクラウド基盤の選定と、安定性を第一とする基幹系・業務系システムに適したクラウド基盤の選定とでは、その選定基準はおおきく異なる。最大の違いは「品質」だ。基幹系・業務系システムにおいては、「品質」を最優先にしたクラウド選びが重要なのである。だからこそ、上記にご紹介する「クラウド(IaaS)選定チェックシート」は強力なツールとなるはずだ。

 さらにCTCでは、クラウド基盤の選定を支援する「アドバイザリー」サービスを提供している。このサービスでは、クラウドの選定だけでなく、選定後の活用方法まで含めて、個々の企業にカスタマイズされたクラウドの選定支援を提供している。自社のノウハウ、スキルだけでは選定が難しい場合は、ぜひ活用してほしい。

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