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災害対策は万全ですか|AWSとNetApp Cloud Volumes ONTAPを活用したファイルサーバDR
ビジネスにおいてファイルサーバは標準ツールとなっており、様々なデータが保管されています。そして地震が頻発する日本において、そのデータを守るための災害対策(DR)はITインフラを構築する上で重要な要素と言えます。しかしながら、ファイルサーバDRを構築するには、DR用機材の購入や遠隔拠点への設置など手間とコストがかかるため、DR化を推進できていない企業が多いのが現状です。
そこで、本記事ではクラウドベースのファイルサーバであるNetApp社 Cloud Volumes ONTAPをAWS上に立ち上げ、ファイルサーバDRを構築する手法を紹介します。クラウド上のファイルサーバをデータ複製先とすることで、機材購入や設置場所の確保などの物理的な手間を省くことができるとともに、Amazon S3(以降 S3)との連携によりクラウド利用コストを抑えることができます。
■目次
1. クラウドはデータ複製先リソースとして有用
2. Cloud Volumes ONTAPを使用したファイルサーバDR
3. Cloud Volumes ONTAPのDR利用における留意点
4. Cloud Volumes ONTAPの導入に向けて
1. クラウドはデータ複製先リソースとして有用
ファイルサーバDRをオンプレミスで構築しようとすると、設置場所や機材の手配に手間とコストがかかります。それに比べクラウド上で構築すれば、ユーザは物理要素を意識することなく、構築や増設、削除などの構成変更を即座に実行することができます。
また、クラウドの柔軟性も利点です。DRとはビジネスにおける保険のような要素であるため、予算を確保しづらい場合がありますが、クラウドをデータ複製先とすることで重要度や予算に応じて構成を柔軟に調整することができます。
2. Cloud Volumes ONTAPを使用したファイルサーバDR
クラウドはデータ複製先として有用なのですが、オンプレミスからのデータ複製先として使用するにはデータ転送ツールと組み合わせるなどの作りこみが必要となります。そこで、簡単に構築できるデータ複製先としてNetApp社のCloud Volumes ONTAPをご紹介します。
Cloud Volumes ONTAPはクラウドリソ-ス(インスタンスやストレージボリューム)上で動作するファイルサーバであり、NFSやSMBなどのファイル共有機能を提供します。この製品の最大のポイントは、オンプレミスのNetAppストレージ(以降NetApp FAS)と同等のアーキテクチャであるため、ファイル共有機能だけでなく、バックアップやレプリケーション機能も使用できることです。つまり、標準でNetApp FASからのデータ複製先として活用できるのです。

図1. Cloud Volumes ONTAPのユースケース
Cloud Volumes ONTAPをデータ複製先として使用することをお勧めする理由は他にもあります。
- オンプレミスとクラウドの両方に構築したストレージを一元管理することで運用をシンプルにできる。
- 安価なS3と連携する機能によりクラウド上でのデータ保管コストを節約できる。
それぞれの理由について詳細を後述します。
理由 1. オンプレミス、クラウド両方のストレージを一元管理することで運用をシンプルにできる。
オンプレミスのNetApp FASとクラウド上のCloud Volumes ONTAP双方を管理する統合GUIとしてOnCommand Cloud Manager(以降Cloud Manager)がNetApp社より提供されています。このCloud Managerは、Cloud Volumes ONTAPを構築・操作できるだけでなく、NetApp FAS及び相互のレプリケーションについても管理することが可能です。
また、このCloud Managerはクラウド側に構築されるため、オンプレミス側に有事が発生した場合でもインターフェースと管理情報がクラウド側に残ります。よって継続操作できるだけでなく、復旧時にも管理機能をそのまま使用することができます。

図2. Cloud Managerによる一元管理
理由 2. S3と連携する機能によりクラウド上でのデータ保管コストを節約できる。
通常、Cloud Volumes ONTAPをAWS上で構築する場合、データ格納領域にはAmazon EBS(以降 EBS)を使用します。ただし、DR用途でオンプレからの転送を受ける場合にはEBSだけでなく、より安価なS3を併用することが可能です。EBSを一次受けの領域とし、実際の保存先をS3とすることにより、データ領域全てをEBSで構築する場合と比べてコストを大幅に削減することができます。

図3. Cloud Volumes ONTAPのS3連携構成
3. Cloud Volumes ONTAPのDR利用における留意点
S3を活用することでコストを抑えることができるのは前述の通りです。しかしながら、S3はデータアクセスがEBSよりも遅いため、パフォーマンスについて注意が必要です。そこで、どのくらい時間差があるのかを実機で計測しました。ネットワーク回線による遅延など外部影響を排除し、純粋なボリュームアクセス速度を測るために、今回はAWSの同じリージョン内にあるCloud Volumes ONTAP同士での転送時間を計測しました。

表1. EBS構成とS3連携構成とのパフォーマンス比較
結果は表1の通り、やはりS3連携構成の方がデータアクセスに時間がかかりました。S3連携構成のCloud Volumes ONTAPへ転送する際には、受け側で一旦EBSに書いた後でS3へデータを移動するため、データの読み込みと書き込みが追加で発生しています。また、S3連携構成からリストアする際には、S3からダイレクトにデータを読み込んで逆転送するためS3のパフォーマンスがそのまま反映されています。
よって、Cloud Volumes ONTAPをデータ複製先として使用する際には、用途とそれに応じたポイントとの両方を基に構成を検討する必要があります。

表2. データ複製先Cloud Volumes ONTAPの構成と用途
4. Cloud Volumes ONTAPの導入に向けて
Cloud Volumes ONTAPを使用することにより、ファイルサーバDRを迅速に構築し、また運用をシンプルにすることができます。ですが、本記事で述べたような留意事項がある点にはご注意ください。
弊社ではAWSの構築・運用に関するサービスや、Cloud Volumes ONTAPとNetApp FASとの両方について一元的に運用をご支援する体制をご用意しています。もし導入検討において不明点等ございましたら、いつでもお声がけください。
CTCはAWS APNプレミアコンサルティングパートナーです。 AWS導入に関してのコンサルティング、構築支援、導入後の運用、AWSへの支払い代行まで、企業のAWS利用のサポートをさせていただきます。
著者プロフィール

- 太田和孝
- 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社在職中 | 1. 現在の担当業務 : ハイブリッドクラウドに関する企画立案を担当 | 2. これまでの担当業務 : ストレージを中心としたプラットフォーム製品の技術主管を担当。プリセールスやポストセールスを支援する共に、フラッシュ・HCI・SDSなどインフラにおける新技術の社内展開を推進。