クラウド化が進まない理由とは?|リフト&シフト(クラウド移行)を阻む「3つのハードル」

 現今、殆どの企業がパブリッククラウドを利用しています。しかしその多くは情報系システムやパッケージソフトのSaaS化であり、IaaSを活用した既存システムのクラウド移行はそれほど進んでいません。その理由の1つが、クラウド移行検討に内在する3つのハードル、「既存システムの理解」、「最適なクラウドの選定」、「各クラウドサービス事業者のコスト比較」。本記事では、これら3つのハードルについて整理した上で、効率良く移行検討を進める上でのポイントをご紹介します。


▼ 目次
1. 利用が広がるSaaSに対し、なかなか進まない既存システムのIaaS化
2. クラウド移行のハードル① 既存システムの理解
3. クラウド移行のハードル② 最適なクラウドの選定
4. クラウド移行のハードル③ 各クラウドサービス事業者のコスト比較
5. これらのハードルを乗り越えていくために




1. 利用が広がるSaaSに対し、なかなか進まない既存システムのIaaS化

 日本企業でもすでに当たり前のものになったパブリッククラウド活用。総務省が発表した平成30年度版「情報通信白書」によれば、「全社的に利用している」「一部の事業所又は部門で利用している」を合わせた割合はここ数年で急増しており、2017年には56.9%となっています。その後もクラウド利用は拡大していると推測されるため、現在ではほとんどの企業がクラウドを利用していると言っても、決して過言ではないでしょう。

クラウドシフトアセスメント

図 1. クラウドサービスの利用状況(出典 : 総務省「平成30年版 情報通信白書」




 またクラウドを利用している企業では、その効果が高く評価されていることも、注目すべきポイントだと言えます。平成30年度版「情報通信白書」では、「非常に効果があった」「ある程度効果があった」を合わせた割合が85.2%に達しているのです。その効果の内容としては、「資産、保守体制を社内に保つ必要がないから」がトップに挙げられており、45.2%に上っています。「所有するから利用する」へのシフトが、パブリッククラウドによって急速に進んでいる実態が見て取れます。



クラウドシフトアセスメント

図 2. クラウドサービスの効果(出典: 総務省「平成30年版 情報通信白書」




 しかしその一方で、クラウド化が進んでいるシステムとそうでないシステムとの乖離も見られます。クラウド化の対象となっているシステムの多くが、ファイルサーバーやメールサーバー、ポータルサーバーなどの情報系システムなのです。またパッケージ利用が一般的な給与・財務会計・人事といったシステムも、クラウド化が進んでいます。これに対し、生産管理や物流管理、店舗管理、購買、受注販売、課金・決済などの業務系システムでは、クラウド化がそれほど進んでいません。平成30年度版「情報通信白書」でも、クラウド化の割合が10%未満となっているのです。

 なぜ業務系システムでクラウド化が進みにくいのでしょうか。それは、情報系システムやパッケージ化されているシステムではSaaSが利用しやすいのに対し、社内で構築されるケースが多い業務系システムではSaaSが使いにくいからだと言えます。実際に独自機能が多いシステムでは、仮想マシンを提供するIaaSを利用することが一般的です。そしてIaaSへの移行では事前の意思決定の段階で、以下の3つのハードルが存在するのです。

  • システム特性の理解
  • 最適なクラウドの選定
  • 適正コストの試算






2. クラウド移行のハードル① 既存システムの理解

 既存システムをクラウドへ移行するには既存システムの特性、特に非機能要件を理解しておく必要があります。これはクラウド移行に限らず、サーバーのリプレースなどでも同様です。しかしクラウド移行の場合には、重視すべき項目がサーバーリプレースとは若干異なります。

 ここでまず、どのような非機能要件が存在するのかを、簡単におさらいしておきましょう。情報処理推進機構(IPA)が2018年4月に公開した「システム基盤の非機能要求に関する項目一覧」では、以下の6つの大項目が挙げられています。

  • 可用性
  • 性能、拡張性
  • 運用、保守性
  • 移行性
  • セキュリティ
  • システム環境、エコロジー



 これら大項目の下に合計35の中項目、その下に118の小項目が挙げられています。クラウド移行で注目すべき項目をこの中から抽出するだけでも、高度なスキルを要する非常に大変な作業になります。

 さらに、クラウド移行を行うには、これら抽出した各項目に対し、既存システムがどの程度のレベルを要求しているのかを理解しなければなりません。その上で、この要求を満たすクラウドサービスを選定する必要があります。場合によってはクラウド移行が適さないケースも存在します。


 例えば極めて高いセキュリティが要求されており、データを社外に持ち出せない場合には、パブリッククラウドの利用は難しくなるでしょう。データを社外に持ち出せる場合でも、そのデータをどこまで自由に扱えるのかを明確にしておかなければなりません。さらに欧州エリアの個人情報を扱う場合には、GDPRへの対応をどう行うのかも視野にいれるべきです。

 コスト削減を目的にクラウド移行を進める場合には、クラウド化が本当の解決策になるのかも考えるべきです。一般的なIaaSでは、仮想マシンを停止している間は課金されないケースが多いため、稼働時間を限定できるシステムほどコスト削減効果が大きくなります。しかし常時稼働することが求められるシステムでは、パブリッククラウドの方がコスト高になる可能性もあります。

 もちろん、既存システムを動かしているサーバーのハードウェア構成(CPUやメモリ容量、ディスク容量など)や、ソフトウェア構成(OSやミドルウェア)の把握も必要です。またCPUやメモリの利用率がどうなっているのか、ディスク容量をどれだけ使っているのかも定量化しておくべきです。これらは、クラウドでどれだけのリソースを確保すべきかを判断するための基礎情報になるからです。



クラウドシフトアセスメント

図 3. サーバヒアリング表






3. クラウド移行のハードル② 最適なクラウドの選定

 第2のハードルは、最適なクラウドの選定です。クラウドと一口に言っても、実に様々なクラウドサービスが存在するからです。

 まず代表的なパブリッククラウドとしては、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)、Alibaba Cloudが挙げられます。これらのメジャーパブリッククラウドではIaaSとPaaSのサービスが提供されており、新機能のリリースが早く、各社SaaSとの連携も容易といった特徴があります。ただし海外サービス事業者のサービスであるため、国産基準のサポートレベルが求められる場合には、適さない可能性もあります。

 その一方で、データセンターを運営する伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)、NTTコミュニケーションズ、インターネットイニシアチブなど国内システムインテグレーター(SIer)が自社データセンターで提供するクラウドも存在します。これらはIaaS(国内パブリッククラウド)を提供しているケースが一般的であり、ハウジングサービスと連携できるVMware基盤のプライベートクラウドや、SAP ERPなどの基幹系システムに特化したものなど、各サービス事業者独自の差別化が行われています。

 さらにオンプレミス環境下で構築するAWSやMicrosoft Azure互換のプライベートクラウドも、選択肢に加えておくべきでしょう。最近ではこのような環境に、AWS Outposts、Azure StackやOracle Cloud at Customerといったパブリッククラウドエンジンを実装するケースも登場しています。

 クラウド移行を進める場合には、まずはメジャーパブリッククラウドと国内パブリッククラウドの中から最適なものを選定する、といったアプローチになるでしょう。「所有から利用」を推進するには、自社でハードウェアを持つ必要のない、これらのクラウドが適しているからです。選定にあたっては、ハードル1で明確化した「システム特性」と突き合わせながら、候補を絞り込んでいきます。

 まずクラウド移行で最も重視すべきなのはセキュリティです。顧客データの取り扱いに関する契約内容は、クラウドサービス事業者によって大きく異なります。また個人情報保護法やGDPRといった法令への準拠状況や、監査の仕組みもチェックしておく必要があります。さらに、データ保護がどのように行われているのかも確認しておきましょう。バックアップは自動か手動か、DRを可能にする機能が提供されているか、その場合にはどのリージョンのデータセンターにバックアップが転送されるのか、などの情報を入手しておくことが望まれます。

 課金体系やリソースの拡張性も重要です。課金が時間単位なのか分単位なのか、仮想マシン毎の課金なのかより細かいレベルでの課金が可能なのか、リソースを拡張した場合の課金はどうなっているのか等々、細かく把握しておく必要があります。またリソースを拡張する場合、どのような作業が必要なのか、どの程度の時間で対応できるのかも知っておくといいでしょう。

 もちろん、サポートしているOSの種類やバージョンも確認しなければなりません。IaaSでは最新バージョンしかサポートされないケースが多く、これが既存システムに適合しない場合には、そのクラウドサービスへの移行はかなり困難なものになるからです。

 このように多岐にわたる項目をクラウド毎に把握するのは、決して簡単ではありません。一見すると各社が似たようなIaaSを提供しているように見えますが、その実態を細かく見ていくと、かなりの違いが存在するのです。また、類似した機能の名称がクラウドサービスによって異なっていることも、この作業を煩雑にしています。

 クラウドの選定は、サーバーやストレージなどのハードウェア選定以上に、難しいものなのです。



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図 4. サーバヒアリング表





4. クラウド移行のハードル③ 各クラウドサービス事業者のコスト比較

 第1、第2のハードルを乗り越えるだけでも広範囲な知見とスキルを要する大変な作業ですが、さらにもう1つのハードルが待ち構えています。それが「適正コストの試算」です。クラウド移行に対して多くの経営者は、コスト削減効果を期待しています。それが本当に実現可能なのかを含め、具体的な数字で示す必要があります。

 ここで具体的に行うべきことは、メジャーパブリッククラウド、国内パブリッククラウド、オンプレミスでコストを試算し、それらを比較することです。システム特性によっては、パブリッククラウドよりもオンプレミスの方が低コストになるケースもあります。複数システムのクラウド移行を検討する場合には、システム毎にこの比較を行う必要があります。その結果、メジャーパブリッククラウド、国内パブリッククラウド、オンプレミスが混在するハイブリッドクラウドが最適解になることも少なくありません。


クラウドシフトアセスメント

図 5. サーバヒアリング表






5. これらのハードルを乗り越えていくために

 このように、クラウド移行を適切な形で進めるには、事前のアセスメントだけでも膨大な作業が必要であり、検討に長時間を要します。同時に、クラウドのような技術革新が日々行われる分野においては、効率的な意思決定が必要となります。なぜなら、クラウド仕様のエンハンスにより、クラウド適性評価時点のシステム最適解が、経営者が意思決定を行うタイミングで変わってしまうケースも十分に考えられるからです。クラウド移行の一部はサーバーリプレースと共通しているものの、それ以上に煩雑な作業が待ち構えていることがわかります。まさにこれこそが、既存システムのクラウド移行を阻んでいるのです。

 CTCでは、クラウド黎明期からシステム最適解を具現化するさまざまなソリューションを世に送り出してきました。CUVICシリーズに代表されるマネージド型クラウドサービスがその代表例です。日本ではパブリッククラウドが着目されていますが、欧米諸国ではオンプレミスへの回帰事例も多数存在し、今後、ますますハイブリッド化/マルチクラウド化が進んでいくと考えられます。クラウド移行を実現するには、クラウドだけでなく、オンプレミスとの共存も考慮に入れた幅広い視野での検討が必要になるのです。

 このような検討を少ない労力で効率的に行うサービスが「クラウドシフトアセスメント」です。これは、お客様が簡単なヒアリングシートを埋めるだけで、システムの現状分析からクラウドの適性評価、コスト試算までを行うというものです。詳細は以下のより本サービスの資料をご覧いただけます。


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 このようなサービスを活用することで、既存システムのクラウド移行を阻むハードルは、一気に低くなるはずです。



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図 6. クラウドシフトアセスメントレポート

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