基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性

基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた顧客志向のサービス設計や競争力向上など、クラウドの活用はSoE(System of Engagement)の観点で進んできました。ところが、最近急速に増えているのが基幹システムを中心としたSoR(System of Records)領域のマイクロサービス化です。基幹システムにおいて、コンテナを活用したクラウドネイティブアーキテクチャへの移行が進む中、マルチベンダー、ハイブリッドクラウド環境におけるPOCや検証の重要性が増しています。

 新たな時代に求められるシステム検証のあり方について、CTCの総合検証・研究開発施設であるテクニカルソリューションセンター(TSC)を率いる池永直紀が語りました。



▼ 目次
基幹システムやデータベースで急速に進むクラウドネイティブ化
DXと基幹システムのマイクロサービス化に立ちはだかるユーザー企業の課題
マルチベンダーのコンテナプラットフォームの検証が可能な「DX_LAB」
ハイブリッドクラウド、クラウドネイティブ検証環境を提供




1. 基幹システムやデータベースで急速に進むクラウドネイティブ化

 イノベーションの加速や業界構造の変革により、ITインフラはこれまでのオンプレミスやプライベートクラウドから、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどのプラットフォーマーが提供するクラウドサービスへのシフトが進んでいます。アプリケーションの開発手法も、ベンダーに依存した従来のウォーターフォール型から、モックアップをベースにユーザー自身が改善しながら完成を目指すアジャイル開発へと進化を遂げています。急速に進んでいる5Gの実用化は、インフラをクラウド化する「クラウドファースト」から、アプリケーションも含めてクラウドの技術を活用する「クラウドネイティブ」への移行に拍車をかけ、コンテナ、サーバーレス、エッジコンピューティング、IoT、AIなど新たなアーキテクチャが登場しています。

 コンテナを活用してアプリケーションをマイクロサービス化し、開発の柔軟性や迅速性を高めるクラウドネイティブの概念は、顧客ニーズに合わせて的確に新サービスを提供するシステム開発、いわゆるDXの文脈で語られるSoE(System of Engagement)の領域のためのものと考えられてきました。しかし、最近になって急激に増えているのが基幹システムやデータベース、いわゆるSoR(System of Records)領域におけるクラウドネイティブ化の動きです。

 CTCの池永直紀は「私たちの調査では、コンテナを利用している大規模・中規模企業の約40%が、既存の基幹システムのアプリケーションを、コンテナ上でテスト・稼働させているという報告があり、基幹システムのコンテナ化は私たちの想像以上のスピードで進んでいるようです」と語ります。


基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エントラステッドクラウド技術事業部
TSC部長 池永 直紀



 CTCの調査によると、競争力向上に向けたSoE領域におけるマイクロサービス化は約30%であるのに対し、基幹システムの挙動を変えずにアプリケーションの内部構造のみをコンテナに移行する「リファクタリング」が約40%、基幹システム自体をコンテナに移行してゼロからクラウドネイティブなアプリケーションを構築する「リニューアル」が約30%と、SoEとSoRの比率は3対7となっており、生産性向上・ガバナンス向上を目的とする基幹システムでもコンテナ化が加速していることがよくわかります。

 基幹システムやデータベースをマイクロサービス化することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。重要なことは、アプリケーションをコンテナ上に移行すると、アプリケーションのクラウドネイティブ化によるクラウド活用のメリットを享受するだけでなく、バグへの対応を早めたり、アプリケーションのハードウェア依存度を軽くできることにあります。全体が1つのモジュールで構成されるモノリシックなアーキテクチャは、1カ所のバグでもシステム全体に波及します。アプリケーションの修正や変更が必要な場合も周囲のモジュールに影響を与えてしまうため、機能の追加も容易ではありません。

 「機能が細分化されたマイクロサービスアーキテクチャなら、バグの修正やアプリケーションの変更、機能追加などでも周囲の影響を受けにくく、運用管理も容易になります。クラウドネイティブ上で稼働することにより、コンピューティングリソースも大幅に軽減されるため、コスト面においてもメリットがあります。こうした運用管理面での優位性から、基幹システムのコンテナ化、クラウドネイティブ化が進んでいることも事実です」(池永)



基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性
図 1. DXと基幹システムの位置づけ






2. DXと基幹システムのマイクロサービス化に立ちはだかるユーザー企業の課題

 ビジネスのイノベーションが加速し、競争力が上がるほど、DXを推進するためのシステムと基幹システムとの連携は重要性が増しており、DXと基幹システムは切っても切れない関係であることは間違いありません。ただし、基幹システムのマイクロサービス化を推進するうえでは、いくつかの課題が立ちはだかります。

 1つはベンダー企業とユーザー企業の関係性です。経済産業省が2021年8月に公表したデジタル産業の創出に向けた研究会の報告書「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」では、企業変革に向けて新たなジレンマが指摘されています。本レポートによると既存産業において、ユーザー企業は委託やベンダー間の価格競争によってコストを削減するメリットを得ています。ベンダー企業も受託案件の獲得によって低リスク・長期安定ビジネスのメリットを享受しています。一見するとWin-Winの関係に見えるものの、デジタル時代においては両者とも必要な能力が獲得できずに衰退し、デジタル競争の敗者となる「低位安定」の状態になっていると指摘しています。こうした低位関係を解消するためには、ユーザー企業はベンダー企業への依存から脱却し、ユーザー企業側がDXを主導していく必要があります。

 とはいえ、ユーザー企業が主体的にDXと基幹システムのマイクロサービス化を進める場合、圧倒的に不足しているのは技術力です。ユーザー企業が最新技術を習得するのは容易ではなく、ベンダー企業からの支援は不可欠です。クラウドネイティブな開発では、OSS(オープンソースソフトウェア)の活用も当たり前であり、頻繁に発生するバージョンアップに自社で対応しながら細分化した機能を拡張していかなければなりません。2018年のDXレポートで指摘されているように、日本ではITエンジニアの7割以上がベンダー企業に在籍し、ユーザー企業においてはIT人材が圧倒的に不足しているとともに、レガシーシステムの保守運用に人材が取られているという問題があります。

 5GやIoTが拡大し、デバイスの数が増えてくると、セキュリティの課題も従来以上に大きくなります。マルチクラウド、ハイブリッドクラウドの環境では、オンプレミスにはない新たなセキュリティの概念も求められます。クラウド利用が進んでいくと、適材適所で複数のクラウドサービスを採用することになり、アプリケーションは複数のクラウドサービス上に構築したコンテナに分散配置されるようになります。そのため、複数のクラウドサービスを統合管理する技術や、マルチベンダーの管理ツールを活用しながら、クラウドネイティブのアプリケーションを運用していくノウハウも必要です。

 「ユーザー企業が直面するさまざまな課題の現実的な解決方法は、ITベンダーとの共創によってDXを加速させることです。CTCでは、総合検証・研究開発施設のTSC(テクニカルソリューションセンター)において、DXと基幹システムのマイクロサービス化に必要な技術と環境をユーザー企業に提供し、共同で課題解決に当たっています」(池永)


基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性
図 2. DXと基幹システムのマイクロサービス化






3. マルチベンダーのコンテナプラットフォームの検証が可能な「DX_LAB」

 TSCは、2005年3月にCTCが開設した国内最大級のマルチベンダーに対応した総合検証センターです。オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境での検証が可能で、年間1,000件以上の検証を行っています。

 TSC内にはサーバー500台以上、ルーター/スイッチ600台以上、ストレージ1PB以上と、50社以上のベンダーの検証用機材を装備し、オープンソースなどの検証環境も整っています。AIの検証環境も充実し、GPUを搭載したサーバー上でディープラーニングや機械学習などの検証をすることもできます。企業内の検証環境では装備が難しい大型IP負荷試験機の利用も可能で、数十Gbpsの負荷をかけて試験を行うことができます。

 「TSC内の機材はポートフォリオを組みながら、常に最新のものを調達し、ユーザー企業がいつでも使える環境を整備しています。スモール環境でPoCを実施した後は、そのまま大規模検証へと移行し、最終的にCTCのデータセンター・クラウド環境にアプリケーションを実装することも可能です」(池永)


基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに、高まる検証環境の重要性
見学が可能なCTCのTSC(テクニカルソリューションセンター)



 2020年にはTSC内に新たなラボである「DX_LAB」を開設。コンテナの開発・運用に領域を拡大した環境を用意し、マルチベンダー、マルチコンテナでさまざまな検証が可能となっています。コンテナプラットフォームには、Red HatのOpenShift、シスコシステムズのCisco Container Platform(CCP)や Intersight Kubernetes Service(IKS)、VMwareのTanzu、HPEのHPE Ezmeralソフトウェアプラットフォーム、F5ネットワークスのVolterraまで、さまざまなソリューションがあります。各社で個性があり、1社の製品をあらゆるコンテナの管理に適用することは現実的ではありません。

「ユーザー企業がすべてのベンダーのコンテナプラットフォームを自前で揃え、技術を習得し、検証することは、リーズナブルではありません。そのためにもDX_LABを活用いただき、マルチベンダーのコンテナプラットフォームでPoCを実施して、DXを加速させていただければと思っています」(池永)






4. ハイブリッドクラウド、クラウドネイティブ検証環境を提供

 TSCは内部に閉じた検証センターではなく、 TSCのオンプレミス環境とCTCのデータセンター間は、閉域網(専用線)でつながっています。そのため、CTCのデータセンターにあるTechnoCUVIC、CUVICmc2といったプライベートクラウドや、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドと連携し、マルチクラウド環境での検証も可能となっています。

 「CTCは、独自のホステッドプライベートクラウドのCUVICシリーズと、マルチクラウド環境との連携に加え、さまざまなマネージドサービスやセキュリティサービスを組み合わせた統合的なサポートサービスを『CTC OneCUVIC』の名称で展開しています。実際にサービスを使ってみて、効果的だと判断ができればそのまま実装もできますので、TSCを活用してクラウドネイティブアーキテクチャをお試しください」(池永)

 CTCの総合検証・研究開発施設TSC(テクニカルソリューションセンター)について詳しくはこちら


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