クラウド、セキュリティ、データセンタでIT基盤を守り支える

クラウド、セキュリティ、データセンタでIT基盤を守り支える

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、IT基盤向けサービスに特化した3週間のオンラインイベントを開催した。

 「未来の基盤も支える。CTCのクラウド」をキャッチフレーズに、9月28日から10月15日まで3つのテーマに分かれて最新のIT基盤に関する取組・テクノロジーを紹介していった。

 第一週のCloud WeekではIaaSをテーマに、第二週のManaged Weekではシステム運用やセキュリティ運用を中心に、第三週のDX Weekではデジタルトランスフォーメーションに特化した講演と展示ブースが公開された。

 講演はリアルタイムで配信されただけではなく、リピート講演として見逃した内容も見直せるので、最新のテクノロジーやDXを知りたい人との共有も可能になっている。

 本記事では、本イベントのオープニング講演の概要をお伝えするとともに、3週分の講演ダイジェストをご紹介する。講演の詳細をお知りになりたい方は、講演録画動画をご視聴いただきたい。


未来の基盤も支える。CTCのクラウド
画像をクリックすると、YouTube ウィンドウが起動します
(講演資料はこちらから)




▼目次
1. ITサービス基盤の現状と将来
2. CTCのIT基盤への取り組み
3. IT基盤サミット2020のテーマ、講演ダイジェスト





1. ITサービス基盤の現状と将来

 CTCはIT基盤サミット2020の開催にあたり、事前にITサービス基盤の現状と将来動向についての市場調査を実施した。



1-1. 情報システムの構成(現状、3年後、理想形)

 情報システムにおけるオンプレミスとクラウドの構成配分について、6通りの構成パターンを想定し、2020年時点での現状と3年後、そして理想形という3つの時間軸で訪ねた。

 その結果、約34%の企業が3年後から将来にかけて社内向けシステムの一部にオンプレミスを残した状態で、多くのIT基盤をクラウドに移行していくと回答した。


未来の基盤も支える。CTCのクラウド
図 1. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(IaaS適用状況)





 続いて、理想形に至るまでの時間軸について尋ねたところ、3割強が3〜5年以内と3割弱が5〜10年以内と回答した。


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図 2. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(理想形までの時間)





 全体的な傾向として、3年以内に理想とするITサービス基盤が完成すると予測している回答は少なく、全体の6〜7割は3〜10年という長い計画でITサービス基盤の構築を考えている。

 そして導入を積極的に検討しているクラウドの採用モデルについては、パブリッククラウドよりもホステッド・プライベート・クラウド(HPC)が5年後までに29.9%と高い比率を占めた。


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図 3. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(採用モデル)



1-2. マルチクラウドの運用に求められる機能

 マルチクラウドの運用に求められる機能に対する3度にわたるアンケート調査では、上位3つにガバナンスやセキュリティにコストといった要望が顕著に現れた。


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図 4. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(マルチクラウド必要機能)





 要求される3つの中でも、特に関心の高いセキュリティ分野において、注力度合を尋ねたところ、サーバ保護と次世代ファイアウォールに脆弱性診断・管理、アクセス制御とウイルス対策、モバイルセキュリティの6項目が高い割合を示した。


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図 5. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(セキュリティ対策領域)





 その3年後を見据えたセキュリティ対策の優先順位を尋ねた結果では、上位6項目は変わらないものの、SD-WANやクラウドネイティブなど他の対策にも注目が集まっている。


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図 6. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(セキュリティ対策の3年後の優先順位)





 7つの領域のセキュリティ対策と各ソリューションについて整理したマップでは、赤いプロットが現状の強化ポイントとなり、青いプロットが今後3年間で取り組むべき対策となっている。

 様々な領域への手当てが必要であることから、クラウドのセキュリティ対策に集中することが難しい現実も浮き彫りになっている。


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図 7. ITサービス基盤の現状、将来動向調査(セキュリティ対策領域)





 クラウドの運用については自社での運用は3割弱になり、外部へ委託する傾向が強くなる一方で、セキュリティの運用になると自社での運用は5割まで高まることかが分かった。



 今回の調査では、ITサービス基盤の強化や最適化における課題のトップ3は、「コスト」「人材の確保・育成」「セキュリティ」であり、4位意向を大きく引き離していることから、その課題の大きさを確かめることが出来た。



 一連のアンケート調査の結果から、CTCではITサービス基盤の現状と将来を3つの観点で整理する。

  1. IT基盤の大半はクラウドとなり、オンプレは社内システム向けの一部に残るのみ
  2. パブリッククラウドと同等以上にホステッドプライベートクラウドが拡がる
  3. IT基盤の強化・最適化は、セキュリティ対策とその運用にかかっている



 本イベントでは、これら3点にフォーカスしてCTCの最新の取り組みを紹介していく。


2. CTCのIT基盤への取り組み

 CTCでは、企業ITとIT基盤向けサービスを図のように位置づけている。

 経営・役員層は、ビジネス部門の利用するビジネスITと、情報システム部門が管理するコーポレートITのバランスを見据えて企業の成長に求められるIT・デジタル戦略を立案していく。

 CTCのIT基盤サービスは、ビジネスITとコーポレートITを支えるために、基盤を構成するリソースに加えて、マネージドシステムやマネージドセキュリテイにデータセンターを加えた形で提供していく。


未来の基盤も支える。CTCのクラウド
図 8. 企業とIT基盤向けサービスの位置づけ





 これらの取り組みに対して、CTCのクラウドビジネスを牽引する二人の本部長が、それぞれの立場から市場観と市場への取り組みを語った。

 CTCクラウド・セキュリテイサービス本部を統括する松田は、CTCで35年のキャリアがあり、20年以上にわたりCTCのデータセンターとそのサービス事業に携わってきた。現在は、情報システム部が中心となって進めるコーポレートITの領域対して、クラウドとセキュリティを主管するビジネスを担当している。


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写真 1. CTC クラウド・セキュリティサービス本部長 松田 欣也





 DC・DXビジネス推進本部を束ねる児玉は、製造業向けCADシステムの営業からコンビニエンスストアのキオスク端末を用いたサービス事業の立ち上げ、航空会社のウェブ予約システム、新規事業の立ち上げなど、幅広く業務を経験してきた。


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写真 2. DC・DXビジネス推進本部長 児玉 孝雄






 両名は、Cloud、Managed、DXという3つのテーマについて、それぞれの立場から意見を述べる。





3. IT基盤サミット2020のテーマと講演ダイジェスト

 IT基盤サミット2020では、3週に渡って3つのテーマに基づいた講演と展示ブースが公開された。ここではテーマの概要と講演内容をダイジェストでご紹介する。



3-1. Cloud Week (テーマはIaaS)

 松田は、「クラウドシストへのニーズが高まっている。オンプレミスで動かしてきたシステムの更改やテレワークの推進に、新たなビジネス領域の活用など、多くの目的でクラウドシフトが進んでいる。

 クラウドにはパブリックとプライベートという大きな違いがあり、サービスを提供するベンダーも多岐にわたる。

 お客様は、業務の特性やシステムの利用状況に応じて、マッチしたクラウドサービスを選択し使い分けることが重要になるが、様々なクラウドの登場でこれが難しくなっている。我々は、お客様の選択・使い分けを支援し、その利用を支え続けることが重要だと捉えている」と話す。

 例えば、ERPなのか営業支援なのか、データ分析なのか商用サービスなのか、用途や目的は多岐にわたる。また、システムが本番環境なのか検証や開発環境なのか、災害対策のDRなのか、といった違いがある。

 これらの要素を考慮すると、「目的や用途に合わせたハイブリッドなマルチクラウド構成が現実的な構成になる」と指摘し、「当社の特長は、マルチクラウドと安心してクラウドを利用できる環境を支える運用サービスを提供できる点にあり、お客様から任せられる“エントラステッドなクラウド”を追求していく」と訴える。


 一方、パブリッククラウドを中心に展開する児玉は、「海外メジャーパブリッククラウド事業者と連携し、国内のエンタープライズ領域への導入準備を整えてきた。

 パブリッククラウドは、ユーザーが増えてくると、管理などが煩雑になるので、そうした部分をサポートするツールを準備して、お客様のビジネスをサポートしていく。パブリッククラウドの波が来ている」と話す。


 IaaSをテーマとした Cloud Week の講演内容は、以下よりご欄いただくことができる。




3-2. Managed Week (テーマはシステム運用とセキュリティ運用)

 Managed Weekのオープニングでは、松田がマネージドサービスを紹介する。

 「マルチクラウドが進むことで、システムの複雑化やセキュリティの高度化が進み、お客様の運用負担になっています。こうした課題に対して、マネージドサービスは事業の土台となる重要な領域を支えます。

 この分野は、対象となる事業者によって、その範囲やレベルに違いが出るところでもあります。我々は、今年度の注力領域と位置づけて、ハイブリッドやマルチクラウドに対応したマネージドサービスの拡充に取り組んでいます」と話す。


 企業の情報システムは普遍ではなく、ハードウェアの劣化やソフトウェアの不具合や更新に陳腐化といった変化に加えて、利用者の数も頻度も変わる。

 また、新たなアプリケーションを導入すれば、データの種別も量も増加し、運用が不安定になる。

 こうした原因で発生するシステムダウンを防ぐためには、その稼働状況を常に監視する必要がある。

 松田は、「予兆の検知や問題への適切な処置、原因の分析による再発防止を進めていく必要があります。

 今、あらゆる業界でパラダイムシフトが起きています。企業を取り巻く環境の変化により、経営課題も変わっていきます。新たなテクノロジーの誕生という進化もあります。

 我々はこうした変化に追従し、ハイブリッド、マルチクラウドでの運用の効率化や自動化を提供し、お客様の悩みを解決し、業務とサービスの維持と発展を支援してまいります」と語る。


 一方でテレワークが急速に広がり、IoT機器の普及や5G通信の推進により、セキュリティ対策への取り組みも重要視されている。

 松田は、「ここ数年のセキュリティの脅威は様変わりしています。かつては単なる標的型攻撃でしたが、最近では悪質なランサムウェアによる被害が増えています。また、テレワークの加速はシャドーITなどセキュリティのリスクを増やしています。当社にもお客様からセキュリティに関する相談は増えています。企業のセキュリティ人材が枯渇する中、パートナーの一社としてご用命ご活用いただければ幸いです」と話す。


 システム運用とセキュリティ運用IaaSをテーマとした Managed Week の講演内容は、以下よりご欄いただくことができる。



  • 情報システム部長が語る、ワークスタイル改革とITシステムの変遷
    • 社内IT基盤は、コロナ禍でも戸惑う事なく従業員の働き方を支えなくてはならない。セキュリティと利便性を最大限に意識したコンセプトとコロナ禍での対応、今後の構想に至るまで、過去より働き方改革を意識し進化し続けるCTC 情報システム部門の取り組みについて伺ってみた。
  • マルチクラウドに向けた運用・運営管理の最適解を徹底解説!
    • 国内の情報システム部門向けマルチクラウドの意識調査では、既に4割がマルチクラウドを利用している結果だった一方、「統制」が障壁となり、本格検討が進まない実態も判明した。最新の調査結果を踏まえ、マルチクラウド環境のガバナンス、セキュリティ、コスト管理等の課題について解説する。
  • 北米最新動向に学ぶセキュリティの課題と解決策
    • 北米のサイバーセキュリティ市場ではマネージド型でセキュリティサービスを展開するMSSP事業者が多数存在する。その最新動向と事業者が提供するサービスや顧客ニーズと課題を解説するとともに、CTCのマネージドセキュリティサービス「CTC-MSS」を紹介する。
  • Oracle Cloudの安全性を高める設計ポイント
    • Oracle Cloud は、日本では2019年東京、2020年大阪リージョンが開設され国内でも利用が増えている。気になるOracle CloudのIaaS、PaaSを利用する際の設計ポイントについて認証・認可、アクセス制御、ガバナンスを中心に解説する。
  • セキュリティ脅威と動向|激動の2020年上半期を振り返る
    • 新型コロナ禍、在宅を始めとしたリモートワークが活性化する一方で、セキュリティ関連報道も増加傾向にある。数々のサイバーセキュリティ対応支援と自社でCSIRT活動も行っている2人の有識者より、2020年上半期セキュリティ脅威と動向を振り返り、原因と対策を解説する。
  • ゼロトラストとは|アフターコロナを見据えたSASEでのセキュリティ対策を知る
    • コロナの影響で、多くの企業が働き方に加え、ITインフラやセキュリティ対策の見直しを迫られている。テレワーク環境整備や、その先を見据えた強靭かつ柔軟なゼロトラストモデルのネットワークインフラやセキュリティをSASE製品の比較やユースケースで解説する。




3-3. DX Week (テーマはデジタルトランスフォーメーション)

 DXについては児玉が、「すべてのビジネスがDXにつながる」と切り出す。

 CTCのDC・DXビジネス推進本部ではコンサルティングからアジャイル開発まで、DXに関連するテクノロジーやサービスを幅広く提供している。

 児玉は、「DXは必ずアプリケーションが表裏一体でついてくるので、我々はそのアプリケーションに対して、IT屋としてサポートしていきます」と話す。

 そして、過去に経験してきたコンビニエンスストアへのキオスク端末導入のプロジェクトを振り返り「店舗のキオスク端末は限られたスペースにどのように設置すことでお客様の来店につながるのか、店舗でのオペレーションは複雑にならないか、など数々の問題を解きほぐして導入されました。そこには端末というハードウェアではなく、どのようにサービスを立てつけるか、というサービス側の発想がありました」と児玉は説明する。


 同じく児玉が携わったプロジェクトに、ANAのSkywebというチケット販売がある。

 アクセスが集中しても対応できるような負荷設計や、高速なレスポンスなど、当時としては革新的なオンラインチケット販売サイトとなり、児玉は、「現在のDXにあたる取り組みでした。他社よりも秀でたWeb開発を推進し、社内システムとの連携やデザイン性の高さに、使いやすさなどを実現しました」と振り返る。


 そして、これから取り組むDXについては「これからのDX開発では、セキュリティ対策が重要になります。

 そのためにはサービス設計の段階から組み入れておかないと安全に立ち上げられません。

 また、当社では米国スラローム社とパートナーシップを結び、米国で最先端のDX開発を学んだ社員が帰国し、日本でのサービスを立ち上げていきます。DX講演ではスラローム社の紹介をはじめ、数多くのテクノロジーやサービスが講演されます」と話す。


 CTCの中で、20年以上前からDXを体験し推進してきた児玉は、今後もいろいろな機会を通して、情報発信に取り組んでいく。


 システム運用とセキュリティ運用IaaSをテーマとした Managed Week の講演内容は、以下よりご欄いただくことができる。



  • 「不確実」なDX。成功事例とメソッドから現実的な進め方を探る
    • 2020年4月に発足したCTCのBuildサービス推進本部は、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションをコンサルティングから開発まで一気通貫で支援する。同部の神原チーム長が日本企業の抱えるデジタルトランスフォーメーションの課題から、その解決に向けた取り組みや具体的なサービス内容を紹介する。(リンクをクリックするとYouTubeが起動します)
  • デジタルトランスフォーメーションを解き明かす鍵、それは「デザインの力」
    • DXを推進する様々なプロジェクトや部門において、UX/UIだけでなく様々なデザインの力を取り入れる方法を多くの企業が模索しております。これまで多くのデジタルプロダクトの支援を通じて見えてきた、DXにおけるデザインが欠かせない領域や役割、効果的なデザインの応用法をお伝えします。(リンクをクリックするとYouTubeが起動します)
  • イノベーションテックツールideagramを活用したオンライン完結での新規事業アイディア創出
    • 私たちVISITS Technologiesでは、イノベーションが生み出されるプロセスを科学的に分析し、重要なカギとなる創造性の数値化・可視化に取り組んでいます。本講演では、新規事業アイデア創出クラウド ideagramの導入事例など具体的なユースケースをご紹介いたします。(リンクをクリックするとYouTubeが起動します)
  • プロダクト開発において直面しやすい課題|確実な一歩を踏み出すためのアプローチとは
    • DXの中でも難易度の高い「プロダクト開発」や「新規事業開発」。不確実なDXの取り組みに、確実な一歩を踏み出すためのアプローチについて、直面しやすい課題を挙げつつ、豊富なノウハウをもとに推奨事項を提言する。
  • digital transformation first step​
    • 北米では全ての業界でイノベーションが起こり、産業構造そのものが大きく変化していますが、イノベーションをリードする企業には多くの共通点があります。成功企業でどんな日常会話がなされ、企業文化を育てているかを、北米でDXをリードするコンサルティングファームSlalomが紹介します。(リンクをクリックするとYouTubeが起動します)






さいごに

 マルチベンダーやマルチOSに対応してきたCTCは、クラウド時代もマルチクラウドベンダーに取組み、その基盤リソースを安全・安心に利用していくためのセキュリティを含めたマネージドサービスでお客様を支えていく。

 さらに、デジタルデータの利用期待に応えていくために、DXのためのアジャイル開発にも取り組んでいく。

 CTCは、お客様の今のIT基盤を支えるだけでなく、今後の導入・拡張・改修が進む未来の基盤も支えていく。



 本講演資料は、以下よりご覧いただくことができる。



ご意見・ご要望・ご感想をお聞かせくださいお寄せいただいたご意見を参考に、Webサイトの改善や情報発信に努めて参ります。





著者プロフィール

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隅谷崇
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社在籍中 | 1. 現在の担当業務 : 自社ブランドサービス商材のマーケティング | 2. これまでの担当業務 : 製造業向けアプリケーションエンジニア/営業を経て情シス向けインフラ営業、事業企画統括、ビジネス企画部門にてオリジナルクラウドサービスの立ち上げから収束を経て、現職務に | 3. 趣味 : サッカー、ジョギング、ゴルフ、フィッシング | 4. 好物 : 新しい物事や歴史