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クラウドネイティブ特集|コンテナ主要ベンダーによる徹底討論
ビジネスや社会環境の変化、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)やモダナイゼーションへの高まりにともない、情報システム担当者に対しては、IT基盤やアプリケーションの更新、変更対応への俊敏性だけでなく、システムの柔軟性や障害に対する回復性についても求められます。
こうした背景のもと、アプリケーションやサービスのスピーディな提供や改善によるビジネス競争力の強化に寄与すると期待されるクラウドネイティブが関心を集まっており、国内企業の多くがクラウドネイティブ技術の導入を検討しています。
そこで本特集では、DXやモダナイゼーションを支えるIT基盤担当者に向けて、クラウドネイティブの概要を解説します。また、「サービスメッシュ」や「イミュータブル・インフラストラクチャ」など、これから検討を始める際に外せないクラウドネイティブ関連キーワードの用語解説も適宜更新してまいります。
加えて、クラウドネイティブ技術の要素であるコンテナの主要ベンダー(F5ネットワークスジャパン合同会社、ヴイエムウェア株式会社、シスコシステムズ合同会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社、レッドハット株式会社(五十音順))と伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)が、コンテナを導入する上での課題や解決策、障害発生時の対応やセキュリティについてパネルディスカッションしました。その模様についてご紹介します。
▼ 目次
・クラウドネイティブとは(用語解説など)
・今のうちにおさえておきたいクラウドネイティブとクラウドファーストの違い
・クラウドネイティブが注目されている理由とは、メリットとは
・コンテナプラットフォーム市場を牽引するベンダーによる徹底討論
・お役立ち情報
・クラウドネイティブ基盤の導入方法
1. クラウドネイティブとは(用語解説など)
まずは大前提として「クラウドネイティブ」の言葉の意味と定義から確認しましょう。
クラウドネイティブとは「クラウドやオンプレの利点を最大限に活用」しつつ、最適なシステムの構築を目指すことを指します。
クラウドネイティブを推進する団体「CNCF(Cloud Native Computing Foundation)」は、クラウドネイティブを以下の通りに定義しています。
“クラウドネイティブ技術は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの近代的でダイナミックな環境において、スケーラブルなアプリケーションを構築および実行するための能力を組織にもたらします。 このアプローチの代表例に、コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス、イミュータブルインフラストラクチャ、および宣言型APIがあります。
これらの手法により、回復性、管理力、および可観測性のある疎結合システムが実現します。これらを堅牢な自動化と組み合わせることで、エンジニアはインパクトのある変更を最小限の労力で頻繁かつ予測どおりに行うことができます。
Cloud Native Computing Foundationは、オープンソースでベンダー中立プロジェクトのエコシステムを育成・維持して、このパラダイムの採用を促進したいと考えています。 私たちは最先端のパターンを民主化し、これらのイノベーションを誰もが利用できるようにします”引用:CNCF Cloud Native Definition v1.0(https://github.com/cncf/toc/blob/main/DEFINITION.md#日本語版)
クラウドネイティブの技術要素には、下記のような代表例が挙げられています。
- コンテナ
- コンテナとは、管理効率やコスト削減だけでなく、ビジネスの俊敏性を高めることを目的とした仮想化技術で、1つのOS上に複数の仮想環境を構築できる
- 最小限のリソースで稼働できOSへの依存度の低いため、移行のハードルも低く、1つのOS上にアプリケーションを含めた複数のコンテナを実装できる
- 従来の仮想化技術よりも軽量で稼働でき起動時間も短いため、ビジネスの変化に応じた拡張も容易であり、システム障害にも迅速に復旧できる
- Kubernetes(クーバネティス、K8s)
-
コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ(配置)やスケーリング(拡大・縮小)などの運用・管理を自動化できる
- オープンソースのツールでありコンテナオーケストレーションツールにおいてはデファクトスタンダードとなってる
- マイクロサービス
- マイクロサービスとは、拡張性の向上やリソースの最適化、負荷分散、可用性を目的とした技術で、アプリケーションを機能(サービス)単位に分け、それぞれを連携させてシステムを機能させることができる
- 障害の影響も最小限に抑えられる
- サービスメッシュ
- サービスメッシュとは、マイクロサービス間の複雑な通信を解消することを目的とした技術で、コンテナ間の通信トラフィックの最適化、アプリケーションの識別、認証や暗号化といった機能を提供する
- イミュータブル・インフラストラクチャ
- イミュータブル(不変)・インフラストラクチャとは、構築したOS、ミドルウェア、アプリケーションを含めたサーバーのバージョンアップやパッチ適用をせず、インフラを「不変」にするアーキテクチャ
- 具体的には、本番環境でバージョンアップやパッチ適用をするのではなく、変更が適用済みの新環境を新たに構築し、新環境を本番環境に切り替える運用を指す
- 本番環境での変更によるセキュリティリスクや動作不具合によるビジネスへの影響を回避できる
- 宣言型API
- 宣言型API(Application Programming Interface)とは、 APIの定義を宣言してAPIを生成する仕組み
- 宣言型APIの「宣言」とはサービスへの指示方法を指し、その対比となる方法として命令がある
- 宣言型の指示方法
- サービスに対して「あるべき結果の状態」を指示する
- システムがあるべき結果をえるべく自律的に動作するため、運用の常時監視などを軽減できる
- 命令型の指示方法
- サービスに対して「実行させたいコマンド」を指示する
- サービスがコマンドを正確に受け付ければ動作するが、失敗した場合は期待する結果が得られない
2. 今のうちにおさえておきたいクラウドネイティブとクラウドファーストの違い
「クラウドネイティブ」の概念が登場する以前から「クラウドファースト」が存在していました。
これらの用語は比較されがちであるため、考え方の違いを確認しておきましょう。
- クラウドネイティブ
- クラウドやオンプレの長所・利点を徹底的に活用して、システム構築を検討する
- クラウドファースト
- クラウドの利用を優先して、システム構築を検討する
- 要件に応じて、クラウドで対応できない部分はオンプレミスを検討する
クラウドネイティブは、クラウドファーストを進化させた位置づけにある概念と言えます。
3. クラウドネイティブが注目されている理由とは、メリットとは
そもそも何故、クラウドネイティブが注目されているのでしょうか。これまでの経緯を簡単に整理して紐解いてみましょう。
クラウドファーストの潮流を皮切りに、企業のデジタル化が加速したことにより、ビジネスを支えるアプリケーションにも変革が求められるようになりました。
加えて、安全に、快適に使っていただくアプリケーションを提供し続けるためには、インフラに俊敏性、柔軟性、可用性がより強く求められるようになりました。
クラウドファーストの時代では「クラウドにするか、オンプレミスにするか、どのように移行するか」といった考えが主でしたが、俊敏性と信頼性が求められる昨今のアプリケーションの提供シーンにおいては「クラウドやオンプレの利点をどう最大限に活用するか」といった一歩踏み込んだ考え方へと進化した結果が、クラウドネイティブが注目を集めている理由となっていると考えられます。
では、クラウドネイティブの利点としては、何が期待できるのでしょうか?
3-1. 俊敏性、柔軟性、回復性
CNCF のクラウドネイティブの定義には「インパクトのある変更を最小限の労力で頻繁かつ予測どおりに行う」という点が言及されています。
クラウドネイティブ技術では、システムやアプリケーションの環境をスピーディに構築できるだけでなく、構成変更に柔軟に対応できます。
また、宣言型APIによって、命令の実行や障害に対する復旧も自動化され、回復性が高まります。
3-2. コスト削減
コンテナ技術ではコンテナイメージを利用します。従来のように、VMインスタンスの作成、OS、ミドルウェアのインストールなどの作業コストが削減できます。
拡張性に富んだ概念であるため、スモールスタートで開始したシステムのリソースを、システム稼働後に必要な分だけオンデマンドで拡張でき、コストを最適化できます。
4. コンテナプラットフォーム市場を牽引するベンダーによる徹底討論
コンテナプラットフォームを提供する主要ベンダー(F5ネットワークスジャパン合同会社、ヴイエムウェア株式会社、シスコシステムズ合同会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社、レッドハット株式会社)の有識者が集結し、昨今のコンテナの市場の状況やコンテナを利用するメリットや課題から、各社の戦略やソリューションのアドバンテージおよび独自性、コンテナを導入するうえでの課題と解決策など、コンテナの本質や可能性などについて意見を交わしました。
コンテナベンダーによる討論の模様を3回に分けてお伝えします。
第1夜 ― 4割の企業がコンテナを導入
アプリケーションやサービスのスピーディな提供や改善によるビジネスの競争力強化や差別化への意識が高まる中、モダナイゼーションやDXの推進手段としてコンテナ技術に期待が高まっています。このコンテナ技術やオーケストレーションツールのK8s(Kubernetes)は、すでに国内企業の4割近くが導入していると言われています。
コンテナを利用するメリットはどこにあり、クラウドやオンプレでコンテナ技術を利用する際、どのような課題があるのでしょうか。
コンテナの市場の動向をはじめ、利用メリットや課題について、その本質や可能性を交えながら、コンテナプラットフォームを提供する主要ベンダーとCTCが意見を交わしました。
※協力:F5ネットワークスジャパン合同会社、ヴイエムウェア株式会社、シスコシステムズ合同会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社、レッドハット株式会社<五十音順>
第2夜 ― コンテナプラットフォームベンダー主要5社の戦略と特徴
コンテナプラットフォームは、自動管理やGUIなどユーザーの負担を最小化するためにベンダーごとにユニークな特徴と機能を有しています。
コンテナプラットフォームを提供するベンダー各社はどのような独自性や優位性があるのでしょうか?また、コンテナを導入するに当たっての重要課題として、「問題・障害発生時の対策」や「セキュリティ」が挙げられますが、各社は具体的にどういった対策を講じているのでしょう?
そこで、コンテナプラットフォームを提供する主要ベンダーにCTCも加わり、各社の戦略やソリューションのアドバンテージおよび独自性や、障害発生時の対応やセキュリティなど、コンテナを導入するにあたっての課題と解決策について語っていただきました。
※協力:F5ネットワークスジャパン合同会社、ヴイエムウェア株式会社、シスコシステムズ合同会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社、レッドハット株式会社<五十音順>
最終夜. コンテナ技術があらゆるアプリケーションの標準になる
クラウドネイティブへの注目が高まるにつれ、コンテナを利用した開発シーンが増えていくでしょう。当然のことながらコンテナ化は目的ではなく課題解決のための手段に過ぎません。
そこで、コンテナプラットフォームを提供する主要ベンダーにCTCも加わり、コンテナの今後の展開とクラウドネイティブへの期待、そこでSIerが果たすべき役割について明らかにします。
※協力:F5ネットワークスジャパン合同会社、ヴイエムウェア株式会社、シスコシステムズ合同会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社、レッドハット株式会社<五十音順>
5. お役立ち情報
クラウドネイティブに関する記事をご紹介します。
- 基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れ|高まる検証環境の重要性
- クラウドネイティブ時代のエンタープライズシステムの創り方
- クラウドネイティブ時代のITインフラ管理の新常識
- オブザーバビリティが実現するクラウドネイティブ環境の3ステップ|可視化、洞察、アクション
5-1. 基幹システムにもクラウドネイティブ化の流れに|高まる検証環境の重要性
DXの実現に向けた顧客志向のサービス設計や競争力向上など、クラウドの活用はSoE(System of Engagement)の観点で進んできました。
ところが、最近急速に増えているのが基幹システムを中心としたSoR(System of Records)領域のマイクロサービス化です。
基幹システムにおいて、コンテナを活用したクラウドネイティブアーキテクチャへの移行が進む中、マルチベンダー、ハイブリッドクラウド環境におけるPOCや検証の重要性が増しています。
そこで、新たな時代に求められるシステム検証のあり方について解説します。
5-2. クラウドネイティブ時代のエンタープライズシステムの創り方
7割近くの国内企業がクラウドネイティブ基盤を検討している一方で、この新技術への導入に不安や課題を抱えている企業も少なくありません。
そこで、クラウドネイティブ技術の採用に不安や課題を抱えらえている方に向け、クラウドネイティブ技術の導入課題を整理し、解決手法について紹介します。
5-3. クラウドネイティブ時代のITインフラ管理の新常識
アプリケーションのコンテナ化が進み、オンプレミス、クラウドを問わずあらゆるインフラ環境でシステムが稼働するようになりました。コンテナによって可搬性が高まる一方、複数に分散したシステムの一元的な管理が難しいという課題も生まれています。
そこで、複雑化したハイブリッド・マルチクラウド環境の運用負荷軽減につながるクラウドネイティブ時代の管理手法についての解説をお届けします。
5-4. オブザーバビリティが実現するクラウドネイティブ環境の3ステップ|可視化、洞察、アクション
急速に進んでいるクラウドネイティブ化はプログラムやデータの分散配置により複雑さが増し、障害時の問題究明やコスト最適化などがより困難となっています。
新しい管理アプローチとして注目されるオブザーバビリティ(可観測性)の解説をお届けします。
6. クラウドネイティブ基盤の導入方法
ハイブリッドクラウドやマルチクラウドで、ビジネス環境の変化に即応できるクラウドネイティブ基盤を導入する際は、CTCのプロフェッショナルサービス「C-Native(シーネイティブ)」をご検討ください。
C-Nativeは、企業のDXを実現する上で必要となるクラウドネイティブ技術にフォーカスしたソリューション・サービスの提供を行い、Kubernetesを中心としたクラウドネイティブ製品技術を活用し、総合的に企業のDX推進をサポートします。
C-Nativeの主な強みは、下記になります。
- 効率化にもとづいたサービス提供
- 自動化・自律化など、回復力の高い技術・方法論の活用を通じて競争力を高めることで、提供するサービスの効率化、品質向上を目指す
- ベストプラクティスの提供
- CTC TSCなどでの検証・導入実績に基づいたベストプラクティス、マテリアルなどを駆使して、迅速なサービスの提供を目指す
- クラウドネイティブ技術・製品にフォーカス
- DXサービス創出を促進するために重要なクラウドネイティブ技術にフォーカスしたソリューション・サービスを通じて価値提供を行う
C-Nativeのサービスラインナップは以下のようなイメージとなります。
C-Native の詳細やお客様事例については、以下よりご覧いただけます。