プライベートクラウド導入を成功に導く3つのカギ(1/3)

図1

業務系システムを支えるITインフラとしてクラウドはふさわしいのか?

採用企業が増えているプライベートクラウドについて経験豊かなITインフラコンサルタントが3回に分けて解説します。

~ITインフラの潮流~

インターネットが世界的に広まった2000年代。ITシステムは急速なオープン化の波を迎えます。企業内にある様々な業務アプリケーションごとにITインフラが構築され、サイロ型の基盤が多数作られました。

2000年代半ば、サーバー仮想化の技術が成熟し、ITインフラを統合する取組みが増えました。さらに企業内や特定の利用部門(アプリ担当)に対して、仮想化統合された共通ITインフラを「サービスのように見せる」というサービス化の動きがはじまります。これが2000年代末に広まった「プライベートクラウド」の興隆です。

「サービスのように見せる」という流れは、サービス事業者においても進みます。近年「IaaS(Infrastructure as a Service)」という言葉でおなじみのように、ITリソース(CPU、メモリ、ストレージ、仮想マシンなど)をインターネットを通じて提供する、さまざまなパブリッククラウドが展開されています。

2000年代のITインフラの潮流
図2

~クラウド利用の実態~

クラウド時代へ進んできていますが、さまざまなIT専門調査会社を通じて実際の利用実態をみるとパブリッククラウドの本格利用には至っていないようです。

IaaSの本格的な普及が進んでいない要因は、様々あると考えられますが、情報システム部門のITインフラの作り方に一つの大きな要因があると考えられるのではないでしょうか?

従来のサイロ型のITインフラでは、可用性やデータ保護方式、セキュリティ等への対処に多大な労力をかけて、システム個別に設計・構築・テストし、運用をしてきました。こうした状況に対してIaaSを利用することで、情報システム部門はITインフラの面倒を一切見る必要がなくなる・・・ IaaSにはそんな期待があったと思います。

しかしながら、その期待にIaaS単体で応えることはできません。一般的なIaaSでは、サーバーやストレージ等のITリソースの提供はされますが、基幹業務系システムを例とするミッションクリティカルなシステムに求められるバックアップやセキュリティ対策などの多様な非機能要件や、OS・ミドルウェア監視や障害対応などの運用業務は提供されないため、引き続き情報システム部門にて設計・構築・運用が求められるためです。

その結果、IaaSを利用しても従来のITインフラの作り方と本質的には変化せず、都度設計・個別運用が必要とされることが、クラウド利用の阻害要因の1つになっていると考えています。

 

~プライベートクラウドの意義~

さて、IaaS単体では十分に情報システム部門の期待に応えられない理由を考察してきましたが、もう1つのクラウド形態である「プライベートクラウド」はどうでしょうか。

プライベートクラウドはブリッククラウドと異なり、「ITインフラ資産を自社で所有し、その設置場所が自社サーバールームになる」と解釈されがちです。

しかし本質的な違いは、「サービス提供仕様を自社で定義できるか?」にあるのではないでしょうか。

パブリッククラウドの場合、ITインフラはクラウドサービス事業者が規定したサービス仕様に基づいて提供されます。一方プライベートクラウドは、自社の特殊な事情を踏まえて自社仕様のサービスを定義することができるため、一般的なIaaSでは不足しがちな可用性のパターンやバックアップ、監視、セキュリティといった様々な要件についても標準仕様を設けることができます。

このような「プライベート・デザイン」でITインフラサービスを仕様化できるため、プライベートクラウドは、基幹業務系システムを例とするミッションクリティカルなITインフラ基盤の多様なニーズに応えられるクラウドになりえるのです。

プライベートクラウドとパブリッククラウドの違い
図1

 

~3つの“プライベート・デザイン”が成功のポイント~

筆者は、多くのプライベートクラウドのコンサルティング・構築・運用をご支援してきました。その経験から、様々なお客様・プロジェクトに共通する課題を見出し、そこからプライベートクラウドを成功に導くためのポイントを導き出しました。

プライベートクラウドのCritical Success Factors (CSF:成功に導くためののポイント)は、

① ITインフラアークテクチャの標準化

② ITインフラ運用の階層化

③ ITインフラのサービス化

の3つです。この3つのテーマに対し、いかに自社事情に沿ってプライベート・デザインができるかが重要な成功要因となります。

プライベートクラウドの3つのCSF(重要成功要因)
20150629_図版③

 

次回以降はプライベートクラウドのCSFに関して詳細に解説していきす。

プライベートクラウド導入を成功に導く3つのカギ(2/3)につづく)

著:金森 亮太
ITインフラコンサルタント。長年大規模システム構築案件における設計、提案、企画を経験。仮想化基盤、クラウドインフラを軸としたITのサービス企画を得意とする。

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