誕生から6年を迎えるOpenStack、その歴史と展望

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7月19日はOpenStackがプロジェクトとし発足した日、誕生日です。その約3か月後となる10月21日に初版「Austin」をリリースします。
史実における10月21日は、道を拓くできごとや私たちの生活が画期的に便利になる製品が生まれた日でした。

1520年10月21日、ポルトガルの探検家フェルディナンド・マゼランが、南米大陸南端とフェゴ島の間に海峡を発見しました。後にこの海峡は発見者の名前を冠して「マゼラン海峡」と命名され、ヨーロッパから東洋諸国への西廻り航路の確立に大きな貢献をすることとなりました。

1879年10月21日、トーマス・エジソンが開発した白熱電球が40時間に渡って点灯し続けました。このことから白熱電球が実用的なものに至ったとされました。後にこの偉業を称えて10月21日を「あかりの日」とされました。IT業界における「10月21日」も、道を拓き、私たちの生活がさらに良くなっていく一助となりうる製品が誕生した日として歴史に刻まれました。

2010年10月21日、OpenStackの初版「Austin」がリリースされたのです。

<Open Stack誕生の背景>

2010年のIT業界は、2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界的な不況のまっただ中でした。そんな中、google社のスマートフォン向けOSであるAndroidのシェアが急伸し、それに呼応するようにクラウドアプリケーションの利用が一気に進んでいきました。「クラウド」という言葉がコンシューマ・エンタープライズの枠を超えて溢れだし、IT業界に限らず企業がクラウドというものに対して興味関心を持たずにはいられない状況となっていきました。

企業ユースでは、パブリッククラウドのセキュリティ性に疑問の声があがり、多くの企業ではプライベートクラウドの環境を構築することが当初求められていました。そんな中、オープンソースプロダクトとして登場した仮想化基盤ソフトウェアがこのOpenStackだったのです。

<Open Stackの軌跡>

OpenStackは2010年の登場以降、オープンソースコミュニティで多数のエンジニアの力を、さらにAT&T・ubuntu・HP・IBM・Red Hat・Cisco・Dell・Intel等、200社を超える世界中の企業メンバーの参加を経て、着実にバージョンアップを重ねています。オープンソースコミュニティの強みを活かし、全世界の優秀なエンジニアが日々製品に改良を加えています。

2010年10月21日の初版「Austin」では、クラウド基盤コントローラ「Nova」と無限拡張可能なブロブストレージ「Swift」のコアモジュール2種類のみのリリースでした。しかし登場からたった4ヶ月後である2011年2月の初のバージョンアップ版「Bexar」では、仮想ディスクの保存と読み出しをサポートするイメージサービス「Glance」が追加されました。

さらに、登場から1年半が経過した2012年4月のリリース「Essex」でGUI(webフロントエンド)の「Horizon」・管理対象コンポーネントの認証を扱う「Keystone」が、同年9月のリリース「Folsom」では、仮想ネットワーク管理機能「Quantum」と永続的ストレージサービス「Cinder」が、それぞれ追加されました。

2013年10月のリリース「Havana」では、クラウドシステムの運用管理を担うオーケストレーション機能「Heat」・ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)を提供する「Neutron」・リソース状況の記録を行う「Ceilometer」が追加されました。これでコアモジュール6種類「Nova」「Neutron」「Swift」「Cinder」「Keystone」「Glance」が揃いました。

2014年以降、データベースサービス「Trove」・分散データ処理サービス「Sahara」・ベアメタルサーバ管理機能「Ironic」・メッセージサービス「Zaqar」・共有ファイルシステム「Manilza」・DNS管理「Designate」・キー管理「Barbican」・アプリケーションカタログ「Murano」・コンテナサービス「Magnum」・ポリシーベースの検査ツール「Congress」が続々と追加されていき、現行最新バージョンである「Mitaka = 三鷹」ではコアモジュール6種類とオプショナルモジュール13種類がラインナップされる状況となりました。

<Open Stackの現在と、今後の展望>

ここまで、OpenStackの歩みを見てきました。
では、改善・開発の進歩が目覚ましいOpenStack。その現況と展望はどうなっているのでしょうか。

実は昨年、OpenStack開発コミュニティに長らく参加し続けてきたNebula社が廃業に追い込まれてしまいました。当時の経営陣が「OpenStack市場が十分に成熟していない」ことに対する失望感を表明したことに現れているように、OpenStackの市場はまだまだ成長段階といえます。Nebula社は時代に対して先を行き過ぎてしまったのかもしれません。

しかしITインフラの整備の現場では、仮想化・クラウドの概念を採用した設計・構築をすることはもはや当然のこととなっています。さらにコンシューマ領域においてはシェアリングエコノミーが形成され、カーシェア・民泊など様々なリソースの共有化が急速に進んでいます。コンピュータリソースをシェアするためのテクノロジーである仮想化・クラウド基盤とその代表的プロダクトであるOpenStackは、今後市場の拡大とともに普及が進んでいくことでしょう。
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著者プロフィール
氏名:新村 繁行
株式会社カグラ 代表取締役
2003年よりインフラSE・PMOスタッフとして数多くの大規模基幹システムのインフラ設計・構築・運用プロジェクトに従事。
2014年より現職、フロントエンドエンジニアチームのマネジメントと、海外シェアハウスでITx英語xビジネスを教える人材育成プロジェクト「アクトハウス」を企画・運営する傍ら、テック系ライターとして活動中。
世界各国から楽曲をリリースする音楽プロデューサー/DJとしての顔も持つ。
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