モノづくりとIoT

Mercato libero

IoTによって「モノづくり」の変革が期待されている。モノづくりの変革が求められるようになった背景、IoTによって変わるものと変わらないものについて解説する。

 

■マス・カスタマイゼーションを実現するために求められるIoT

「IoTは工場のロボット化に過ぎない」「ハードウェアに強い日本にチャンスがある」日本の製造業から聞こえる声は楽観的過ぎる。ロボットやセンサーを使って工場で起こる事象を定量的に計測し「カイゼン」を行うのはIoTにおける一つの側面であるが、それだけではIoTの本質を見誤ってしまう。

IoTが求められる背景は、従来行われてきた大量生産とは一線を画す。近年はニーズが多様化してきており、製品のライフサイクルが極めて短くなっている。低コストの大量生産プロセスと柔軟なパーソナライゼーションを組み合わせた変種変量生産ライン、つまり「マス・カスタマイゼーション」が求められるようになってきたのが背景にある。

経済のグローバル化により、一国の事象が即座に他国へ影響する。需要が激しく上下するため、ニーズの予測が困難になっている。消費者が持つニーズの変化に素早く対応するために、最適なタイミングで最適な生産を行わなければ、無駄が増えてしまう。IoT時代では消費者の需要予測から製品を届ける全てのプロセスが最適化される必要があるのだ。

IoT時代が近づくにつれ、サプライチェーンの定義がどんどん広がっている。これまでは消費者が店舗に来店して、注文した段階で工場へ生産の合図が届いていた。IoTを使うと注文が予測された段階でサプライチェーンが動き出す。例えば、カプセル型のコーヒーメーカーの例では、コーヒーメーカーに設置したセンサーによって消費者宅にあるカプセル数を割り出し、在庫が切れる前に注文処理を行い、自動で補充するシナリオが可能だ。

このように、IoTの特徴はサプライチェーンの全工程が情報技術によって “つながり” を持つ点にある。顧客情報管理(CRM)、ERPによる注文処理、生産現場、販売・保守、リサイクルといった全ての情報が一つのデータベースに蓄積され、分析される。さらに、ビッグデータ分析によって次に何が起こるのかを予測するので、無駄を省き、機会を逃さない。

無数のセンサーとビッグデータ分析によって多くの工程が自動化されるため、労働力の減少に対する対応策にもなる。先進国では特に、労働人口が減少し、熟練工も不足していく。能力の高い作業員ではなく、データ分析に優れたソフトウェア開発者がIoTシステムを動かしていくのだ。

IoTは既に国際競争の様相を呈している。米国の「インダストリアル・インターネット」と呼ばれる取り組みでは、GEなどが中心となって、機器制御の効率化や保守の高度化を目指している。異なる企業間の接続を可能にし、全体最適を図るプラットフォームの開発が進む。また、ドイツの「インダスリー4.0」では、需要予測を高度化し、稼働率に余裕のある工場へ作業を割り振り、全体として無駄のない生産活動を行う。製造プロセス自体を新興国へ展開するビジョンもあるという。いずれの場合も、工場をまたがったデータの蓄積と分析・予測がシステムの肝となるのだ。

IoTの基本的な流れ

IoTの基本的な流れ

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