自社に適したパブリッククラウド基盤とパートナーの選定ポイント
CTC 次世代IT基盤サミット 2017 レポート

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AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureなどのグローバルブランドのパブリッククラウドのほか、国内ベンダーも相次いでIaaSやPaaSのサービスを提供しており、企業にとって選択肢は大きく増えている。そうした中で、自社にとって適したパブリッククラウドの見極めが困難になっている。ユーザー企業の情報システム責任者の視点に立ち、パブリッククラウドとパートナーの選定ポイントを考察する。

ハイライト
● 業務システムの要件整理の起点は『誰に、何を提供すべきか』
● パブリッククラウドを検討する際のポイント
● おさえておきたいパブリッククラウド基盤のパートナー選定項目

まずは業務要件に応じたシステム要件の整理から

ここ数年、デジタルテクノロジーを巧みに利用した破壊的イノベーションが世界的に巻き起こっている。アマゾン、アップル、YouTube、Airbnb、Uber、スペースX、テスラモーターズに代表される、いわゆる「ディスラプター」と呼ばれる新興企業の台頭によるもので、出版、音楽、映像、宿泊、タクシー、ロケット、自動車など、伝統的な業界の勢力図を大きく塗り替えられようとしている。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(略称:CTC) でクラウドサービスの企画開発と運営を担う森正史氏は、「あらゆるビジネスにITが組み込まれた今、もはやデジタル革命の流れを止めることはできません。どんな企業にも不測の事態はいつ起こっても不思議ではなく、社員も働き方を見直す時期にきています」と、現在の企業が置かれている状況を示唆した。そして「自社がディスラプトされないように、10年後を見据えたシステムを今から用意しなければなりません」と説いた。

クラウドサービス企画開発部 部長 森正史氏

そこで検討するのは、「誰に、何を提供すべきか」である。たとえば財務や物流、生産部門のユーザーは、システムに対して安定した継続稼働を最優先の条件とし、厳重なセキュリティによるデータ保護を要求する。一方、営業やマーケティング部門のユーザーは、自分たちが目指すビジネスをすぐに実行できるスピードとスケールを望む。

この課題に対して「まず業務システムが求める要件を大まかに分類する必要があります」と語る森氏が挙げたのが、「モード1」(オールドワークロード)と「モード2」(ニューワークロード)の2つのシステムだ。

図1:オールドワークロードとニューワークロードの比較

モード1に該当するのは、従来からのミッションクリティカルな業務システムのほか、定常的なコミュニケーションを担うメールやWebアプリケーションなどのシステムだ。一方のモード2は、IoT、機械学習/AI、Webスケール、マイクロサービスなど、これからのビジネス革新の源泉となるボラティリティ(変動性)をもったシステムである。

この2つのワークロードの特性をしっかり理解した上で、業務の要件に応じて提供方法を変えていく必要がある。そうした中であらゆる企業の有力な選択肢となっているのがパブリッククラウドなのだ。

モード1のシステムについては、ファイブナイン(99.999%)以上のサービスレベルを保証する堅牢なインフラを構築することが最優先の要件となるため、実装先がオンプレミスであれパブリッククラウドであれ、考え方に大きな変化はない。これに対してモード2のシステムでは、堅牢性もさることながらより俊敏なインフラの立ち上げや拡縮が求められることになる。あるビジネスに失敗したなら迷うことなく撤収し、すぐさま別のビジネスで打って出るといった、柔軟かつ臨機応変の戦略を支える必要があるからだ。

こうした観点から森氏は、「特にモード2のシステムの実装先は、パブリッククラウドを選んだほうが圧倒的に得策です」と強調した。

 パブリッククラウドを検討する際のポイント

パブリッククラウドを検討する際のポイントは「コスト」「セキュリティ」「柔軟性」を考える。

① コスト

オンプレミスのシステムは自社で資産を保有するため必ず減価償却費が発生する。だが、実際にはこのコストの割合は全体からみればわずか20%程度にすぎない。保守費に25%、コールセンター費用や監査費用、技術育成費用を含めた運用費に25%、さらにデータセンター関連に30%のコストを費やしている。ようするにシステムを運用・維持するためのコストが全体の80%を占めることになる。

そこでパブリッククラウドのメリットが注目されるわけだ。基本的にインフラの保守はプロバイダー側で行われるため、ユーザー企業はハードウェアの老朽化対策など一切考えなくて済み、固定資産税を払う必要もない。「どうしても外部に出せないシステム以外は、パブリッククラウドのほうがお得になります」と森氏は語った。

② セキュリティ

ほとんどのパブリッククラウドはインフラ(データセンターのファシリティ)の第三者認証を取得しており、一般的なアプリケーションに関してはセキュアな運用が可能だ。しかし、「モード2のクラウドネイティブアプリケーションのセキュリティ対策については、プロバイダーから提供されるホワイトパーパーに従って自ら実装・運用しなければなりません」と森氏は強調した。

③ 柔軟性

「日本のプロバイダーであれば企業ごとの個別要件にもある程度配慮した対応を行ってくれるかもしれませんが、AWS(Amazon Web Service)やAzureなどグローバルブランドのパブリッククラウドには明確なサービス規定があり、それを超える対応は行ってもらえません」と語った。

先述のとおり、モード2のクラウドネイティブアプリケーションを展開する上ではパブリッククラウドがベストな選択となるが、その利用に関しては「すべてが自己責任となる」ことを、しっかり認識しておく必要がある。

パートナーを見極める選定基準とは

では、パブリッククラウドを使いこなすスキルやノウハウが社内にない場合にどうするのかというと、必然的にパートナーに支援を依頼することになる。

そこで森氏がパートナーの選定基準として挙げたのが、【図2】に示す項目である。

 

図2:パートナー選定基準

① 技術力 (コスト低減力)

技術力は、コスト低減の推進力となる。「コストを下げるためには絶え間ない基盤のリニューアルを行っていく必要があり、そのベースとなるのが技術力です。これを見極めるためにも、最初から3~5年といった長期契約は避けるべき。1年もしくはそれ以下の短期間で契約を結び、パブリッククラウド側のサービス価格の改定が行われたタイミングで更新することをおすすめします」と森氏は語った。

② 実績

実績面では、やはり多くの事例を有するパートナーが安心できる。

③ 体力 (継続性)

体力(継続性)の観点からは、そのパートナーの財務状況や経営方針をしっかり確認しておくべきだ。時流に乗って自らパブリッククラウドの提供に乗り出したパートナーが、今後のビジネス環境の変化によってはサービスから撤退してしまう可能性がある。

④ 運用体制 (柔軟性)

運用体制(柔軟性)については、自社独自の運用要件に応えられるサポート体制が用意されているかどうかを確かめる。

⑤ サービスカタログ (選択)

サービスカタログについても、将来のロードマップを含めてできるだけ幅広い選択肢が得られることが重要だ。

⑥ グローバル体制

グローバル体制で見落としがちなのが足回りの回線である。特にアジアや中南米などの新興国の回線事情は日本ほど良好ではないだけに、そのパートナーがどんなキャリアと提携し、どれくらいの通信品質を保証しているのかを確認しておくことが必須だ。

いずれにしてもパートナーの候補を絞り込んだなら、必ずPoC(概念実証)を実施して性能をベンチマークするほか、デリバリー速度(納期)や契約内容(保証)についても、事前調査を通じて見極めておくことが重要だ。その意味では、気心の知れた既存パートナーの存在は心強い。「よほど選択基準内容が相対的に低下しない限りは、既存パートナーに任せたほうが楽です」と森氏は語った。

こうしてモード2のシステムを展開するパブリッククラウドの準備が整ったなら、あとは今後のグルーバル市場で自社の競争力を高め、独自の付加価値を打ち出していくためのビジネスアイデアの策定に専念し、人材や予算を集中的に投入することが可能となる。

もちろんCTCとしても、この取り組みを積極的に後押ししていく考えだ。「私たちはオンプレミスからパブリッククラウドまで真に一体となった運用を実現し、日本企業のデジタルトランスフォーメーションを支援していきます」と森氏は訴求した。

 

本講演資料は以下よりダウンロードできます。

編集:ビジネスonIT

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