セキュリティと利便性を考慮した Google Workspace の導入ポイントと、導入後の価値の最大化

セキュリティと利便性を考慮した Google Workspace の導入ポイントと、導入後の価値の最大化

 コロナ禍でテレワークが進んだ現在、社内コミュニケーションを円滑にするコラボレーションツールに注目が集まっています。

 中でも、独自ドメインの Gmail、チャット、カレンダー、大容量ストレージ、ビデオ会議、文書作成、表計算など、Google のツールを1つのパッケージにした Google Workspace は、企業のDX推進と業務変革を支える強力なソリューションです。

 しかし、Google Workspace は、セキュリティと利便性の2つを考慮して正しく導入しなければ、生産性の向上につながりません。

 そこで、本記事では、Google Workspace の導入時と、展開時に考慮すべきポイントを紹介します。


▼ 目次
Google Workspace 導入時の設計ポイント
Google Workspace 展開時のポイント
CTCオリジナル支援サービス




1. Google Workspace 導入時の設計ポイント

 Google Workspace は、かつて Google Apps、G Suite の名称で提供されていたクラウドサービスで、2020年10月にリブランディングされました。Gmail、Google カレンダー、Google Meet、Google ドライブなどさまざまなサービスが利用でき、事業規模に合わせて複数のエディションから選ぶことができます。

 企業で Google Workspace を導入する際、考慮するべき点は、セキュリティと利便性のバランスです。

 セキュリティを重視した設計は、セキュリティリスクを最小限に抑えることができる反面、ユーザーに対して機能を制限することが多くなるため自由度が下がり、日頃からプライベートで Google サービスを利用しているユーザーからは不満が出ることも考えられます。

 利便性を重視した設計は、コラボレーション機能を最大限に活用することで、業務の効率化が期待できます。ただし制御する機能は最小限となるため、Google ドライブを社外と共有したり、外部とのチャットで利用したりしている場合、データが社外に漏洩するリスクは高くなります。


Google Workspace

図 1. Google Workspace 導入時の課題




 では、どういった場合にセキュリティを重視した設計とするべきか、どういった場合に利便性を重視した設計にするべきかを考えてみます。

 セキュリティを重視する設計は、社員数が多い、組織の統制が十分に取れない、ITリテラシーが低いといったケースが当てはまります。利便性を重視する設計はその反対で、社員数が少ない、組織の統制が取りやすい、ITリテラシーが高いといったケースが当てはまります。

 前者は性悪説、後者は性善説と考えることもできますが、いずれにせよ企業の文化や風土などに合わせて設計をすることが重要です。


Google Workspace

図 2. セキュリティ重視・利便性重視の適合ポイント




1-1. セキュリティと利便性を考慮した設計方法の例

 セキュリティと利便性のバランスを考慮した設計方法は、以下の3つのようになります。

  • 検証を実施したうえで設計内容を決定する
    • 機能検証をセキュリティの観点で実施し、そのうえで設計内容を検討します。新しい機能が出た場合、先行ユーザーを対象に検証を実施します。そこから企業のセキュリティポリシーや文化に合わせて、必要な機能を有効にするべきかを検討し、全ユーザーに展開します。ただし、Google Workspaceにはドメイン全体でしか設定できない機能があるため、可能であれば、本番環境とは別の検証用のドメインを用意することを推奨します。
  • セキュリティを制限しない場合は運用ルールを定める
    • 運用ルールはあくまでもユーザーへのお願い事項となるため、機能として制限することはできません。そこで統制が取れる範囲で運用ルールを決めて展開していくことを推奨します。
  • 利便性を重視する場合は、ログ保管を徹底する
    • ユーザーに対してセキュリティを意識させるためのアナウンスを実施し、管理側ではログの長期保管を検討することを推奨します。



 セキュリティ設定の具体例として、無償 Google アカウントの制御について説明します。ログインの制御にサードパーティのシングルサインオン製品や、Google Workspace のコンテキストアウェアアクセスを使ったIP制限や端末制限を導入している企業があると思います。その場合、例えば企業のIPアドレスからのみ Google サービスでログインさせるといったことを、Google Workspace 上で設定します。

 ただしネットワークで制限したとしても、Google サービスのURLやサービスは同じものを利用するため、個人の Gmail アカウントや、別のドメインで契約しているサービスについては、ログインの制御ができません。これらを制御する場合、プロキシサーバーでSSLインターセプト機能を利用して、企業ドメインの Google アカウントかどうかを確認して制御をする必要が出てきます。

 これをオンプレミスのプロキシサーバーで設定しようとすると、負荷が上がって落ちてしまうこともあります。そこで、最近ではクラウドプロキシサービスや次世代ファイアウォール製品などで対応するケースも増えています。各種ベンダーからソリューションが発表されていますが、マルチベンダーパートナーシップを結んでいるCTCでは要件に合わせて各種ベンダーとの組み合わせることが可能です。

 無償 Google アカウントの制御は、セキュリティ設定に関するひとつの例ですが、どのケースにおいても問題か起きてから対処するか、問題が起こる前に対処するかがポイントになります。


Google Workspace

図 3. セキュリティ設計の具体例




2. Google Workspace 展開時のポイント

 新しいシステムを導入する際に、チェンジマネジメントの展開手法を実施するかによって、その後のユーザーの意識レベルや生産性に大きな差が生まれます。チェンジマネジメントは変革を効率良く成功に導くためのマネジメント手法のことで、心理的な要素に重きをおいています。

 新しいシステムを導入する際、変わることに対してネガティブなイメージを持つユーザーもいます。既存の業務に影響することを恐れる、新しいシステムについて新たに覚えなければならないという労力を嫌う、今できていることができなくなるのではないかという疑念を持つといったことが考えられます。

 ネガティブなイメージを持つと、ユーザーの意識レベル・生産性を時間軸で表したチェンジカーブは、マイナス(下降)のカーブを描きます。ただし、徐々に慣れていったり、新しいシステムが受け入れられたりしていくことで、チェンジカーブは上昇していきます。

 Google Workspace は、企業のDX推進における強力なツールである一方で、ユーザーに対してきちんと説明をしなければ、宝の持ち腐れになるばかりでなく、生産性が低下してしまう可能性もあるため、チェンジマネジメントの手法を採り入れることをおすすめします。 

Google Workspace

図 4. チェンジマネジメントの必要性について

 



 チェンジマネジメントのポイントと具体例について深堀してみましょう。



2-1. チェンジマネジメントのポイント

 チェンジマネジメントに関しては、以下のようなポイントがあります。

  • 組織分析と合意形成
    • 企業の組織体が変化の受け入れに対して、どのような文化があるかを理解する必要性があります。組織の統廃合が多く、システムの変更頻度が多い場合などは、ユーザーはシステム変更に慣れていることが考えられます。一方、同じシステムを何十年も利用している場合は、新しい変化を好まないことも考えられます。
  • 変化による影響分析と準備
    • Google Workspace を導入することで何が変わるか、変わることでのメリットは何かをユーザーに正しく伝えていくことが重要です。
  • 教育
    • 誰がどの部門に対して、どのような形でトレーニングを行っていくかが重要です。個々に学ぶならeラーニング、対面のトレーニング、必要に応じて集合研修などを採用します。
  • 定着・維持・改善
    • 導入・展開後にユーザーに定着しているかを確認し、具体的な活用方法を共有していくことで、利活用を活性化できます。




2-2. チェンジマネジメントの具体例

 チェンジマネジメントの具体的な例を以下に示します。

  • 部署ごとに Google ガイドを決める
    • Google ガイドは新入社員や若手社員を推奨します。彼らの多くはこれまで Google をプライベートでも使ってきており、展開に対しても柔軟に対応していく素養があると考えられるためです。
  • Google ガイドに対して集中トレーニングを実施する
    • Google ガイドに対して、Google Workspace のメリットや、効果的な使い方などをトレーニングすることで、Google Workspace のファンになっていただきます。
  • FAQサイトや掲示板を用意しておく
    • 困った時のよりどころとなるFAQサイトや掲示板を、Google サイトや Google グループで作ることで、ユーザーの疑問を解消します。
  • 活用事例の公開や表彰イベントを実施する
    • Google Workspace の利活用の方法や具体的な事例などを公開します。効果的な業務事例に関しては表彰を実施することで、ユーザーのモチベーションを高めることができます。






3. CTCオリジナル支援サービス

 最後に、CTCの Google Workspace オリジナル支援サービスを紹介します。CTCでは、Google Workspace の導入前コンサルティングからシステム設計、構築・テスト、運用支援にいたるまでワンストップの支援サービスを展開しています。

 導入前コンサルティングでは、利用機能の棚卸を実施して、セキュリティ設定をどのように実施すべきかを確認。さらに、Google Workspace の機能をワークショップ形式で議論しながら、お客様の文化に合わせたシステムを設計します。

 システム設計では、お客様のポリシーに合わせてパラメータシートを作成し、構築においてはそのシートをもとに設定作業を進めます。場合によってはサードパーティ製品を組み合わせて設計をしていくこともあります。

 運用支援では、導入後のアップデート対応、サードパーティも含めたリッチサポート、パラメータシートのアップデートなどのサービスを用意しています。



Google Workspace

図5. Google Workspace オリジナル支援サービス




 CTCは2009年より Google Apps の取り扱いから Google ビジネスをスタートし、長らく国内のお客様へ Google Workspace の導入を進めてまいりました。Google ご検討にあたっては Google Workspace、Google Cloud のプレミアムパートナーであり、マルチベンダーパートナーシップであるCTCにぜひご相談ください。

 講演の動画は、以下よりご覧いただけます。



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※Google Workspace、Gmail、Google Chat、Google カレンダー、Google Apps、G Suite、Google Meet、Google ドライブ、Google サイトおよび Google グループは Google LLC の商標です。





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