2020年デジタルビジネスへの旅(第1回)

2020年デジタルビジネスへの旅(第1回)

【2020年デジタルビジネスへの旅】

2008年7月11日、iPhoneが日本に初上陸しました。それから7年が経過した今、通勤電車では新聞や雑誌を広げる姿は殆ど見かけることは無くなり、スマホやタブレットでデジタル情報に接触し、アプリを使って世界中の人々とデジタル情報を交換する世界が日常となっています。スマホやタブレットは自動車や住宅とも繋がり、私たちのライフスタイルを大きく変え始めています。さらに、ドローンやロボット、3Dプリンターなどの機器とネットを介して繋がることで、今までにない世界が生まれつつあります。これらデジタル機器の活用範囲と活用の早さは、加速度的に高まっています。これからの世界では、デジタルの力を取込んだビジネスの優劣が、企業の競争優位性を決定つけていきます。デジタルの力を取込んだビジネスの模索、“デジタルビジネスへの旅”はすでに始まっています。

2020年、私たちはどのような世界に住んでいるのでしょうか?

日本で東京オリンピック&パラリンピックが開催されるこの年、世界に目を向けると、ドバイでは史上初の中東開催となる万国博覧会が、欧州では、欧州サッカー最強国を決める大会が、史上初めて欧州13カ国に分散して開催されます(FEFA EURO 2020)。
世界中の人々が様々な移動手段を使って現地を訪ねて、あるいは様々なメディアを介してコンテンツに触れて、その興奮と感動を共有し平和を歓喜する年になります。

この年には、携帯電話やスマホ・タブレットから利用するモバイル接続回線の数は、世界人口の9割に達し90億回線まで拡大すると予測されています。90億という途方もない人数が、インターネットを介してデジタル情報と、さらにはデジタル機器とアプリを使って人と人が、または、人とモノが繋がる時代がやってきます。このうち、60億回線はスマートフォンからの利用になると予測されており、特殊な知識や機器操作の修得をすることなく、誰もが容易にデジタルで繋がる世界が地球規模で出現します。

私たちは、メディアが作った一方的に配信されるコンテンツを楽しむことに代わって、インターネットを経由して、新しいスタイルで今までと異なるコンテンツを楽しむことになると思います。そこでは、自分が見たいタイミングに、自分が使いたいデジタル機器(スマートフォンやタブレット・スマートTVや、メガネや腕時計型のウェアラブル機器や生活空間に共存するロボット)を使って、自分が見たい角度からの映像や未来を予測した映像に触れたり、会場の雰囲気を共有し体感出来るような情報に触れることが出来るようになっていると思います。例えば、槍投げ競技の槍の穂先に小型カメラを取り付けて槍の視点から見る映像や、ある時点のサッカー選手のパスから10秒後のプレイを予測計算した未来のゴール映像を現実と重ねあわせて見たり、会場に無数に設置した温感センサーからの温度情報を人々の熱気の変化として映像化して見たりすることも出来るようになると思います。デジタルが、私たちの生活に大きく踏み込んでくる世界になっていきます。

2020年、私たちのビジネスはどうなっていくのでしょうか?

このような世界規模のイベントでは、これらを支える社会・産業にも非常に大きな変化が生まれます。デジタルが私たちの生活に踏み込んでくる世界に向けて、様々な産業でデジタルの力を取込んだビジネスが立ち上がってきます。

“コミュニケーション” “移動” “サービス”

世界中から人々が集まる東京・ドバイでは、空港・駅やホテル・レストランなど多くの人が行き交う場所で、スマートフォンやウェアラブル機器を通して、文化や言語の壁を越えてスムーズなコミュニケーションを可能にするビジネスが活発になると思います。音声によるリアルタイム自動翻訳や音声応答だけでなく、テキストやグラフィック情報を組合わせて感情表現を加えたり、ロボットが介在するコミュニケーション支援ビジネスも出てくると思われます。欧州13ヵ国に分散して開催するEURO2020では、サッカー選手を含む多くの関係者がスケジュール通りの移動を実現するために、バス・車から電車や飛行機までの多岐にわたる移動体がデジタル機器を介してインターネットで繋がり、個人に・チームにリアルタイムで最適な移動を支援するサービスが増えてくると思います。

“物流” “輸送” “保険”

人の移動だけではなく、会場資材や、競技や展示に必要な機材やモノも大量に移動します。これらのモノの移動にも正確性が求められます。正確な移動が出来ない場合、それは遅延による時間的損失だけでなく、遅延に備えて予め必要以上の物量を複数ルートに分散して配送している過剰なコストや、そのための燃料費用や保管場所・人の作業などの目に見えないコストが積み重なっています。これらは経済的にも環境の観点からも極力減らしていく事が求められます。こういった機材・モノには、極小化・微小化が進むデジタル機器が取り付けられて、それぞれインターネットに接続されるようになります。これにより、リアルタイムで配送状況が確認でき、過剰な予備配送や燃料・保管場所を不要にするとともに、突発的に発生するトラブルにも迅速に対応できる新しい物流サービスが生まれてくることと思います。さらに、一部のモノについては、実物を移動させることなく、移動先に設置されているインターネットに接続された3Dプリンターでモノを制作するような、今ある物流サービスを不要にする新しいビジネスも出てくることと思います。このように、人・モノの移動に対するリスクへの捉え方に変化が生じることから、リスクに対する備え、つまり保険にも新しいモデルが生まれてくると思います。

“製造” “流通・小売” “修理・保守”

デジタル機器の活用が高度化することで、モノづくりの世界も大きく変わっていきます。

さらに、モノづくりの世界が変わることで、販売・サポートの世界も大きく変化します。

従来のモノづくりの事業モデルは、その時点において完成品である「壊れない頑丈なモノ」や、「何でもできる高機能・多機能なモノ」を提供することの最大化・効率化を追求してきました。ところが、モノがインターネットに繋がることにより、製造業者自身がモノの所在や利用・稼働状況をリアルタイムで把握することが出来るようになるので、この事業モデルは全く変わっていきます。世界各地にあるモノの利用・稼働情報を蓄積することで、故障や障害の発生パターンも見出せるようになります。これによって、遠隔診断や予防保守によって、壊れる前にモノを交換することが出来るようになります。モノを提供するだけのモデルは、“利用継続性を担保する”ことを提供するモデルへと変わります。また、プログラムやソフトウェアを搭載するデジタル家電や車・住宅などでは、機能追加や機能強化も、インターネット経由でソフトウェアをダウンロード・インストールすることで実現できるようになります。こちらも、完成品を提供するモデルから、“利用者が望む時に、望む機能を強化・追加できる”ことを提供するモデルへと変わっていきます。このことは、製品を構成する部品の世界においても当てはまります。前者のモデルは道路・橋梁などの社会インフラや産業設備においてすでに現実のものとして拡がってきています。後者のモデルは、私たちの最も身近なところで見ることが出来ます。デジタル機器の代表格であるスマートフォンがこのモデルの代表と言えます。

2014年、地球上でネット接続できるモノの数は70億個程度まで増えたとの報告があります。これが、2020年には300億~500億個まで増加すると予測されています。製造業者と利用者がインターネットで繋がることは、その関係性をより直接的に、より密接にしていきます。今までの製造事業者は大量に同じものを作ってきました。これからは、地球規模で個人や企業毎の利用・稼働特性に合わせて、個別に適切なものを作って販売し、かつ、サポートすることが可能になります。これによって、購入者・利用者の情報を握っていることで製造事業者へある程度のパワーを発揮することが出来た販売事業者や、販売後の継続利用のためのサポートを担ってきた修理・保守事業者も、その存在価値を新たに作り上げることが必要になります。先ほどのスマートフォンにおいて、事業者間の関係性に大きな変革が起きていることからもご理解いただけると思います。

ここまでに取り上げた話は、こぐ一部の世界の話です。しかし、デジタル化が進むことは、事業の業態に依らずあらゆる業界に大きな影響を与えます。2020年に向けて、デジタルの力を取込んだビジネス:デジタルビジネスの競争はより激化していくことになります。

デジタルビジネス時代の企業IT

ビジネスの企画・実行する主体は、当然ながらビジネス部門にあります。これは、デジタルビジネスの時代に遷っても変わることはありません。デジタルビジネスの最小のビジネスインフラは、人を除けば、デジタル機器とインターネットから構成されています。この最小のビジネスインフラ上で展開するビジネス、すなわちデジタルビジネスの実装・実行に必要となる技術がIT:インフォメーションテクノロジーです。とは言え、今までも私たちはITの力をビジネスに活用してきました。デジタルビジネス以前の企業ITと、デジタルビジネスの時代の企業ITは何が、どのように違うのでしょうか?

次回は、”クラウドコンピューティング”の出現によって大きく変化することになる、企業ITを題材にして、デジタルビジネスへの旅を進めてまいりたいと思います。

2015年7月15日

ビジネスonIT 編集部
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