CTCとソリニアの協業が日本の新たなOpenStack市場を切り開く

CTCとソリニアの協業が日本の新たなOpenStack市場を切り開く

 2015年10月、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(略称:CTC)は、OpenStackビジネスのさらなる強化を目指して、グローバルで実績を持つITベンダーの米ソリニア社(Solinea,Inc.)との協業を発表しました。


 オープンソース(OSS)のクラウド基盤ソフトウェアであるOpenStackのエキスパートであるソリニア社と、国内市場でいち早く取り組みを行ってきたCTCの協業によって、日本のOpenStack市場、そしてオープンソースソフトウェアの活用はいっそう活気づくものと期待されています。

 今回は、ソリニア社CEOのフランチェスコ氏、CTC クラウドイノベーションセンターの小岩井 裕氏のお二人に、両社のこれまでの取り組み、日本市場に対する認識、そしてこれからのビジネスについて語っていただきました。

▼ ハイライト
1. ソリニア社はOpenStack、そしてオープンなインフラストラクチャのエキスパート
2. ソリニア社との協業によって新たなインテグレーションの領域を目指す
3. OpenStack活用を成功に導くカギは人材の育成、目的の明確化、そして顧客の理解
4. さまざまな事例の裏には数々の失敗があり、それを実際に経験していくことも大切なポイント
5. お客様のビジネス課題の解決を両社の強固なパートナーシップで支援




1. ソリニア社はOpenStack、そしてオープンなインフラストラクチャのエキスパート

フランチェスコ:ソリニアは、OpenStackを中心としたオープンインフラストラクチャのエキスパートが集まる会社であり、ソフトウェアディファインドなネットワーク(SDN)やストレージ、Dockerなどのコンテナ技術、さまざまなオープンソースソフトウェア(OSS)を組み合わせて企業が求めるクラウド基盤の設計、構築、運用をトータルに支援しています。サンフランシスコの本社に加えて東京とソウルに拠点があり、これまでにシステム構築を手がけたお客様はアジア、北米、欧州とグローバルに広がっています。


 私たちは他社に先駆けてクラウドアーキテクチャおよびインフラの設計と導入に取り組んできました。アジャイル開発、DevOpsを適用した運用の自動化、コンテナ技術やマイクロサービスを活かしたアプリケーションの統合やサービスの迅速なデリバリーの実現を強みとしています。また、これまでの経験と実績を基に開発した監視・管理ソフトウェア製品である「Solinea Goldstone」は、OpenStackベースのクラウド基盤の運用に革新をもたらすものとして皆様に評価いただいています。


 いわゆるソリューションの提供に留まらず、エキスパート集団ならではのコンサルティングや人材トレーニングを積極的にサービスとして提供していることも強みです。CTCと協業して半年ほどになりますが、CTCのエンジニアにもトレーニングを実施しています。


 CTCが持つ顧客プラットフォーム、すなわち日本の市場で築いてきた多種多様な業種・業界のお客様やパートナー企業との深い信頼関係、営業力、サポート力、そして技術力の高さは、とても素晴らしいものだと感じています。OpenStackという分野に限らず、より幅広いビジネスを展開できるシステムインテグレーターとして、CTCは私たちが日本市場へアプローチするときに最善のパートナーであると思ったのです。






2. ソリニア社との協業によって新たなインテグレーションの領域を目指す

小岩井:OpenStackの市場が立ち上がっていない2012年頃から技術開発を中心とした取り組みを始めていて、コミュニティの活性化や技術が成熟するタイミングに合わせてビジネス展開を進めていきたいと考えていました。2015年頃になると北米ではいろいろな事例が出始め、国内でもOSSを中心としたクラウド市場の成長が見込まれるようになる中で、インテグレーションサービスにもっと力を入れていく必要があると思いました。

 今までは、製品を調達して日本市場に提供するというビジネスモデルが主でしたが、これからは先端の技術そのものを導入、体得して、我々のノウハウとしてお客様にご提供するというインテグレーションに価値のあるビジネスモデルを作り上げていこうとしています。

 そこで、OpenStackの分野でインテグレーション協業できるパートナーはいないだろうかと探していたときにソリニア社と出会いました。OpenStackによるクラウド構築ではさまざまなOSSとの組み合わせが不可欠ですが、ソリニア社は特定のOpenStackディストリビュータに依存せず、まさにオープンな立ち位置であること、そしてOSSによるオープンなインフラストラクチャのエキスパート集団であることに非常に魅力を感じました。


 インテグレーターとして、OSSの領域に踏み込むのはハードルが高いとよく言われますが、ソリニア社との協業によってそのハードルを越え、OSSが牽引する新しい技術をお客様に提供して行く予定です。



CTCとソリニアの協業

写真左:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドイノベーションセンター 部長代行 小岩井 裕
写真右:Solinea(ソリニア)CEO, Francesco Paola(フランチェスコ)






3. OpenStack活用を成功に導くカギは人材の育成、目的の明確化、そして顧客の理解

フランチェスコ:率直なところ、日本市場は北米市場に比べて、2年~2年半ほど遅れているように感じます。新しいテクノロジーへの取り組みと理解、そこで生じるリスクの受け止め方、人材のスキルレベルのばらつきなどいろいろな要素がありますが、これは日本に限らずアジア圏全体にも当てはまることで、地域の文化的な背景も影響しているのでしょう。


 OpenStackは、ある特定の製品を指すものではなく、コンピュート、ストレージ、ネットワークなどさまざまな要素が集まったものです。それぞれについて正しい理解とスキルが求められますから、トレーニングによる人材のスキルレベルの向上はもちろん、OpenStackという大きな枠組みに含まれる多様なコンポーネントをもっと簡単に使えるように、ベンダーが積極的に取り組むことも必要です。市場(顧客)に対して、OpenStackを活用することの意義やメリットをきちんと訴求していくことも重要と言えます。


小岩井:
実際にビジネスをしていて感じるのは、やはり日本市場では技術的な面から物事を進めようとする傾向が強いということでしょうか。
OpenStackはいろいろな機能が実装されていて、それぞれがAPIを備えたモジュラー型の構成になっており、あれもこれも足していくというよりも「シンプルに考える」という方向性がベースにあります。ですから、本来はまず「何をしたいのか?」をはっきりさせて、必要な機能を選ぶことから始める事が重要ですが、日本のお客様はここがぼんやりしていることが多い印象があります。そのため、例えばVMwareのような製品と比べて、あれができる、これができない、OSSだからコストカットできるはず、みたいな話になり、結果として求めていた成果を十分に達成できないことがあったりするわけです。このあたりの話がかみ合わないと、適切な提案や導入は難しいでしょう。


 IoTやビッグデータ、モバイルなど、いわゆるデジタルビジネスの領域では、次々と新しいサービスをデリバリーする事、そして改善していくことが求められています。自社のビジネスに照らしたとき、どのようなインフラ、アーキテクチャが必要なのかを、当事者である企業はきちんと考える必要があります。そして、そこでOpenStackが最適だとなれば、設計や導入を進めていくことになります。


 OpenStackはとても価値のある技術ですから、我々としてもきちんとご提供していきたいと思っています。様々な先端技術に対する見聞を広め、中身を理解し、インテグレーションしてお客様にご提供することの大切さを、改めて感じます。






4. さまざまな事例の裏には数々の失敗があり、それを実際に経験していくことも大切なポイント

小岩井:OpenStackによるクラウド基盤の事例はいろいろと出てきていますが、実際にサービスインに到達するまでにはさまざまな過程があるわけです。事前のアセスメントがあり、途中ではたくさんの失敗があって、それらを乗り越えながら適切な構築が行われているということです。これはインテグレーターだけでなく、システムを運用するお客様にも一緒に経験してもらうことが重要で、OpenStackひいてはOSSを使う際には取り組み方や方法論(スキル)が変わり、人やプロセス(カルチャー)にも変化が求められる部分があることをわかってほしいと思っています。


 こうした経験をエンジニアとしてどれだけ多く積んでいるかはとても大きなことで、ソリニアはまさにその経験が非常に豊富なパートナーです。常に先を行き、新たな技術や市場への取り組みを続ける中で培われてきた彼らのスキルを日本のお客様にご提供できるのは、とても大きな強みであり、メリットであると思います。両社の協業によって生み出される優れたソリューションを、すでにご提供できる状態であることをもっとアピールして、次の時代に向けたお客様の新しいクラウド基盤を作っていきたいと考えています。






5. お客様のビジネス課題の解決を両社の強固なパートナーシップで支援

フランチェスコ:日本市場では、DevOpsやコンテナ技術の浸透には少し時間がかかると思いますが、これから必要とされるものであることは間違いありません。私たちが持つ知識や経験をトレーニングや教育サービスとしてご提供して、新しい技術への理解を深めていただき、もっと使いこなしてもらえるようにしていきたいと思っています。
OpenStackを活用することで、ビジネスのスピード向上や効率化、コスト削減などお客様が抱えるビジネス課題を解決することができます。さまざまな利点や魅力がありますし、とても簡単だということを、日本のお客様にもっと伝えていきたいと考えてます。


小岩井:
「お客様のビジネスに直結するサービスを支える基盤を作る事で、IT部門の価値をもっと高めて行きましょう」というメッセージを訴えていきたいと思っています。今はまだ、クラウド基盤の構築や利用ではOpenStackでもAmazon Web Service(AWS)でもどれでもいいというケースは多いですが、北米ではAWSからOpenStackへ移行した事例や、ハイブリッドで利用する事例が増え始めており、日本でも同じような流れは生まれてくるでしょう。


 自社のビジネスに直結するサービスを自分たちで設計し、インテグレーションして、運用しながら改善を進め、よりよいサービスをデリバリーできる環境を整えていくことは不可欠になってきています。そこでは、アプリケーションやサービスを作る人と、インフラを作る人が協力して取り組むことも必要です。


 そうした取り組みを進めるお客様に、ソリニアとCTCは強固なパートナーシップを活かして貢献していきます。
 ぜひ、ご期待ください。



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