「OpenStackで実現するこれからのビジネスインフラ」セミナー参加レポート

 2016年11月18日、東京・丸の内で開催されたOpenStackセミナーに参加してきました。参加者数限定で開催された本セミナーの様子をご報告します。

# セミナー開催テーマ

 本セミナーは「OpenStackで実現するこれからのビジネスインフラ」をメインテーマとして、4つのセッションで構成されるものでした。

  1. OpenStackの最新動向と活用の傾向 〜バルセロナサミットと国内の案件状況からみる社内基盤の方向性~
  2. これからのデータ管理
  3. OpenStackべからず集
  4. 企業のDevOps戦略

1. OpenStackの最新動向と活用の傾向

 登壇者はCTCの中島氏。OpenStackに関する書籍の執筆も手がけている、OpenStackの第一人者です。本セッションでは、10月末にスペイン・バルセロナで開催されたOpenStack Summit Barcelonaの様子が紹介されました。OpenStackに関心を寄せる読者の方々の中には、今回のバルセロナでどんな発表がなされるか、気にされていた方も多いのではないでしょうか。

 バルセロナで打ち出されたキャッチフレーズは「The World Runs on OpenStack」でした。世界中でOpenStackが使われ、多くのサービスがOpenStack上で稼働している。つまり、「世界はOpenStack上で動いているのだ!」というOpenStackコミュニティの実績と自信を表した、力強い言葉だと感じました。

 中島氏からの報告で最も印象深かったことは、「今回のバルセロナサミットでは、これまでに開催されてきたOpenStackサミットとは異なり、新しいプロダクトが追加されて派手に盛り上がるような印象ではなかった」ということでした。OpenStack Summitでは、毎回恒例であるがごとく「新機能紹介」がなされ、プロダクトがどんどんと増えていく傾向がありました。
(このあたりのOpenStackの進化の歴史は前述記事をご覧ください。

 現在、OpenStackの世界潮流は、「アーリーアダプターへの導入は一巡し、レイトマジョリティへの導入フェーズに入っている」という状況です。これまで最新技術を取り入れることに消極的な層にも、OpenStackは広く知られるようになり、「導入する技術要素の候補の一つ」として当然のように見られる立場になってきたのです。多くのオープンソース・プロダクトは、登場したばかりのときには「実績がないから」という理由で敬遠されることもありますが、OpenStackは「枯れてきた」、つまり、「十分な実績がある状況になってきた」、そういう認識が強くなってきたというわけです。

 そして、バルセロナサミットでは、世界での導入事例として「金融」「メディア」「通信」「保険」「研究」の5分野、6事例が紹介されました。これだけ多くの業種で採用されるIT基盤となっていることで、まさに「The World Runs on OpenStack ― 世界はOpenStack上で動いている」ということをおわかりいただけるかと思います。

 各事例の詳細な内容は割愛しますが、ポイントとなるのは以下の2つです。

  • 単なる基盤構築から、自動化やCI・CDへと注力ポイントが移行している
  • Ansible(*1)等を使った「自動化」は「導入して当然」のレベルになっている

 OpenStackを導入することが、仮想化基盤をはじめとしたIT基盤を構成するだけにとどまらず、開発者やサーバー管理者たちの働き方にも変革をもたらすパワフルなツールである、という認識が深まっている証拠と言えるでしょう。

*1: 最近注目を集めている構成管理ツール。同様のツールにChefやPuppetがある

2. これからのデータ管理

 OpenStack上にDBaaS(DataBase as a Service)環境を実装する「Trove」について、解説がなされました。登壇者は、CTC広野氏。DBエンジニアとしてキャリアを深め、現職にあってOpenStackの普及に努めています。セッション冒頭、広野氏から参加者に問いかけがありました。

「MySQLやPostgresSQL等のオープンソースデータベースを使っている方はいますか?」

 会場の2/3以上の参加者が挙手していました。多くの企業担当者がオープンソースデータベースエンジンをホストしている現状が一目瞭然です。さて、今回挙手した参加者が強く頷いていたのは、広野氏がセッションのまとめとして発言したこの一言です。

「Troveは異なるデータベースエンジンの操作・管理を標準化できる」

 様々な事情により、プロジェクトやサービスごとに複数のバージョン・データベースエンジンが混在してしまうことはよくあります。今回のセミナーの出席者の多くも、組織内で同様の事情を抱えているのでしょう。だからこそ、今回、広野氏が紹介していた「Trove」では、コマンドを実行することで、操作対象がどんなデータベースエンジンであっても、例えばデータベースの作成のような管理作業を実行することができる、という内容へ強い関心を寄せているようでした。

3. OpenStackべからず集

 登壇者は、CTC社後藤氏です。豊富なOpenStackの構築経験を持つ後藤氏が、これまでの経験を元に導き出した、5つの「べからず」が紹介されました。

3-1. OpenStackは仮想化インフラの代わりになるんだよね。

  • なりません。
  • IaaSの代わりになりますが、単なる仮想化基盤の代わりではない、という認識を持ちましょう。

3-2.古いバージョンなら大丈夫だよね。

  • 古いからといって、バグを出し切っているわけではありません。きちんとテストをしましょう。

3-3.「なんでも動く」OpenStackを作ってほしいんだけど。

  • 「要件が決められないから」「とりあえず」という状態で導入するのは絶対にダメです。
  • 多くのプロダクトを持ち、様々な実装が可能なOpenStackですから、きちんとPoCを実施しましょう。

3-4. コスト削減のためにOpenStackを使いたいんだけど。

  • いまのOpenStackが目指すところはビジネスを加速させるための「攻めのIT基盤」になっています。
  • コスト削減を目的とした「消極的な投資」ではなく、ビジネスを加速するための「積極的な投資」と捉えてください。

3-5. (小さい環境なら) 手作業で構築できるでしょ。

  • どんなにスモールスタートしても、結局は構成変更やドキュメント修正等が入ります。だから、自動化をとにかく進めましょう。(結果として、運用効率が改善し、コスト削減にもつながります)

 後藤氏がセッションで語った内容、そして上記に挙げた5つのべからず集は、どれも後藤氏がこれまでに構築案件で経験したことや失敗したことを元にした、とても生々しい内容でした。数多くの構築案件を担当した方ならではのここでしか聞けない貴重なお話であったと思います。

4. 企業のDevOps戦略

 続いての登壇者は、CTC古川氏です。セッション冒頭で、古川氏から「DevOpsという言葉が少々バズワード化している」ということで、古川氏なりの「DevOpsという言葉の解釈」が紹介されていました。とてもわかりやすい解釈でしたので、ここでご紹介します。

■ 古川流、DevOpsとは?

  • DevOpsとは、Development(開発)とOperations(運用)
  • ビジネスにフォーカスして、ITシステムを効率的に提供するための活動

 デモとして、Docker上で環境差異を廃したウェブアプリケーション開発の様子が紹介されました。開発側と運用側が旧来型の働き方をしている場合に、どうしても起きてしまう環境差異を防ぐため、Dockerを使いインフラもコード化することで、「そもそも問題が発生しないようにしてしまう」という解決策を、実際に動く環境を見せながら解説されました。
 さらに事例紹介として、米国Solinea社とのパートナーシップに基いて提供しているサービスを活用した、国内での事例として「メディア」「クレジットカード会社」の2つの事例を挙げていました。
 ※Solinea社との連携事例については、これまでにビジネス on ITのOpenStackの記事でも度々取り上げてきましたので、ご存知の方も多くいらっしゃるかと思います。

まとめ

 2回に渡ってセミナー参加レポートをしてきましたが、いかがでしたでしょうか。今回登壇した4名は、OpenStackに注力しているCTC社クラウドイノベーションセンター所属の、経験豊富なエンジニアばかりです。OpenStackについてもっと知りたい、専門家に相談してみたい、という方は下記へお問い合わせください。

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