基幹システムのクラウド移行を決断した事例4選
~ 構築1週間 工数3割減 生産性2倍 を実現した事例 ~

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基幹系システムのIaaS化において柔軟性や継続性といったメリットは理解しやすいが、実際に導入決定するにあたっては不安を抱く担当者もいるかもしれない。

基幹系システムのIaaS化に踏み切った企業は何を決め手として意思決定したのだろうか。4社の事例からIaaS化の決断ポイントと効果を読み解く。

基幹系システム向けIaaS化の決め手

基幹系システムをIaaSへ移行するのは大きな戦略的意思決定になる。これまでオンプレミス環境に合わせて検討してきたIT戦略、運用業務、開発プロセスなど、企業のあらゆる場面に変革が求められる。それでもIaaS化の先行企業はクラウド化にメリットを見出し、決断を行ってきた。この意思決定は、単なるコスト削減といった短期的なメリットだけではなく、海外展開や事業継続計画といった長期的な経営戦略からの視点からなされているケースが多い。コスト面を見る場合でも、単年ではなく、5年以上の長期的な運用コストを様々な視点で検証し、コストメリットがあると判断された場合にIaaS化への一歩を踏み出している。本記事では基幹系システムをIaaS化する戦略的意思決定を行った4社の事例を紹介する。

 1週間で新規インフラ構築

コンビニエンスストア・チェーンを展開するA社の強みは海外店舗のネットワークだ。アジアを中心に積極展開した結果、2014年期末には海外店舗数が1万店舗以上に到達し、これは国内店舗数も約1万店舗を超えていた。店舗の新規開店には迅速なインフラ構築が欠かせない。受発注、在庫管理のバックヤード管理が全てシステム化されているからだ。そこでA社は仮想サーバ、仮想ストレージ、ネットワークを組み合わせたIaaS型サービスを採用した。担当者は後に、高度な信頼性と柔軟な運用性がIaaS採用の決め手になったと語っている。実際、フィリピンの既存店舗での切り替えは一日で完了、新規店舗の出店に際してのインフラ準備は1週間でできるようになった。ビジネスの拡大・海外展開にIaaSが大きく貢献した例と言えるだろう。

運用工数の3割削減を目指す

電子・電気機器の製造・販売を行うB社はSAPによる基幹系システムの運用をオンプレミス環境で行っていた。オンプレミス環境であるため、サーバーの保守期限切れや各種バージョンアップにより、サーバーの再構築やプラットフォームのテストを強いられ、システム部門の運用負担が課題となっていた。そこで「標準化と効率化」を推進する手段として採用されたのが基幹系システムのクラウド化だ。国内のクラウド事業者を採用し、システム構築・運用保守を完全にアウトソースした。ハードウェアに起因するトラブルの影響もなく、コストの平準化に寄与する成果を上げている。SAPシステムの本稼働後は運用工数の3割削減を見込み、7年でクラウド化の初期投資が回収できる計算となっている。サーバー更新や運用工数などを長期的な視点でとらえ、IaaSへと戦略的に移行した英断が光る。

事業継続計画の実装

理化学分析機器や検査消耗品の総合商社として日本全国に事業を展開するC社は事業継続に課題を抱えていた。2011年の震災では通信が停止し、営業所が計画停電に合うなど、大きな影響を受けたからだ。建物への物理的なダメージや長期的な停電などが今後訪れるリスクを考慮すると、IaaSの採用が最も効果的、かつ現実的な解であると判断された。データベースを中心にプライベートクラウドを利用し、同時にアプリケーションサーバーはクラウド環境で運用するハイブリッド型を用いて高いコストパフォーマンスを追求している。都市型のデータセンターであるため、緊急時には徒歩で到達できるという要件さえも満たしており、高いレベルでの事業継続計画が実装できたと言えるだろう。

開発生産性が2倍にアップ

住宅・建設業を展開するD社は“フルクラウド化”に踏み切った。会計・人事、工事予算・発注、社外向け、コールセンターなど、あらゆる情報基盤をIaaS上で運用している。住宅・賃貸住宅・リフォームなど事業の多角化を進める中で、運用負荷を軽減し、既存事業の強化や新規事業の素早い立ち上げを実現するのが狙いだった。実際、新規事業のスモールスタートやIT予算の最適化はすぐにメリットとして認識された。さらに、これまで運用を担当していた人員を新規開発案件に回せるようになったため、年間での開発案件が400本弱から800本超にまで増加したという。基幹系システムのIaaS化が“攻め”の経営を可能にするのだ。

最後に

基幹系システムのIaaS化を行った事例を見ると、ビジネスの視点とITの視点という複眼的な検討によって意思決定がなされたことが分かる。戦略・業務プロセス・組織・人材・基盤といった企業の各レベルでのメリットを検討した上で、IaaSへの移行を決定するのがベストプラクティスと言えるだろう。

編集:ビジネスon IT

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