IaaS海外動向|エンタープライズ向けクラウドで高い評価を受けるVirtustream社
~ニッチ市場で世界的に高い評価を得ているのIaaSベンダー”Virtustream社”にクローズアップ~

図1

エンタープライズ向けクラウドは高い可用性や安定したパフォーマンスが要求されるため、対応が可能なクラウド事業者は一部に限られる。このニッチ市場で世界的に高い評価を得ているのがVirtustream社だ。

 

ガートナーにも注目されるエンタープライズ向けクラウド事業者

クラウド事業者は無数に存在しているが「エンタープライズ向けクラウド」が提供できるのは、どれ程あるのだろうか?高い可用性、処理速度など、多くの要件を満たすためには、高度な技術力が求められる。AWSやGoogleといった世界的な大手企業と伍して、このエンタープライズ向けクラウドを提供しているのがVirtustream社だ。

Virtustreamは2008年に創業された新興クラウド事業者である。2010年頃に4000万ドル、2011年に1500万ドルを資金調達し、各メディアから注目されるようになった。2015年には大手ハードウェア企業EMCに買収されている。さらに、EMCがデルに買収されたのに伴い、現在、Virtustreamはデル・テクノロジーズの一部となった。

Virtustreamは既に世界展開を果たしている。米国アトランタ、ニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンDC、アイルランド(ダブリン)、イギリス(ロンドン)にオフィスを構え、また、米国・イギリスにデータセンターを設置した。

Virtustreamの技術力の高さは、米国調査会社ガートナーに認められ、2012年より、IaaS部門のマジック・クアドラント・レポートに名を連ねるようになった。同レポートはビジョンと実行力の2軸から事業者を分類する。世界的に見てレベルの高い企業のみが掲載されるため、同分野でVirtustreamのような新興クラウド事業者がニッチ企業としてガートナーに認められるのは驚くべきことだ。

Virtustreamは、ビジョンの観点ではVMWareや富士通と同レベルの評価を獲得した。さらに、実行力の観点では、これらを上回り、Rackspace等に近いレベルにある。ニッチ企業の中でも極めて上位の実力を持っていると見てよいだろう。

ガートナーは、Virtustreamの強みとしてエンタープライズ向けクラウドのソリューションを挙げている。ERPなどの複雑なミッション・クリティカル系のシステムに最適であり、ユーザーはシステムの柔軟性を獲得し、リスクの軽減が図れるようになる。EMCに買収されて以降、その販売網の力を借りて、SAP導入などの実績を伸ばしている。

ガートナーによるVirtustreamの分析(抜粋)

ガートナーによるVirtustreamの分析(抜粋)

30%の性能改善と、3割から5割のコスト削減を実現する独自技術

Virtustreamはエンタープライズ向けクラウドの包括的なサービスを提供している。パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラウドのうち、いずれも対応が可能だ。セキュリティや法令順守の機能も高く、機密情報を格納するERPシステムや、規制業界向けのアプリケーションでも利用できる。

高いサービスレベルを実現するために自社開発した基盤ソフトウェア「xStream」は、他のクラウド事業者にも提供されている。システムの稼働状態やリソースの利用状況を監視する環境分析ツール「Advisor」と合わせて、基幹系システムのクラウド利用に対応できる。

Virtustreamのクラウド基盤ソフトウェアを支えているのが、特許を含んだ自社開発技術の「μVM(マイクロVM)」だ。基幹系システムのように入出力が頻繁に行われるアプリケーションでも安定してパフォーマンスを発揮できる。利用する計算機資源の利用率を極限まで高め、無駄にリソースを使用せず、コスト削減を図れるのがメリットだ。結果として、レガシーシステムと比べ、30%の性能改善と、30%~50%のコスト削減が実現される。

Virtustreamはオンプレミス環境からクラウド環境へ移行するためのサービスも提供している。現在のミッション・クリティカル・システムを分析した後、Virtustreamの最新技術を活用した「あるべき姿」を設計し、移行作業を支援する。特に、SAPに関しては既に200社以上の実績があり、大規模なERPシステムを移行する際のパートナーとしてVirtustreamが選ばれている。

VirtustreamのアーキテクチャVirtustreamのアーキテクチャ

大幅なコスト削減に成功した導入事例

Virtustreamはエンタープライズ向けクラウドの導入事例を公開している。米国の菓子メーカーDomino Sugarは、その一つだ。同社は消費者向け製品、工業製品、フードサービスからなる3つの事業領域で、国際的に事業を展開している。国際展開の間、新たなシステムが繰り返し追加されてきたため、システム環境は極めて複雑になっていた。そして、オンプレミス環境に構築してきたSAPの製品管理システムは改修の必要があった。

Domino SugarはIT関連予算を売り上げの1%以下に抑える方針があったため、複雑さを増し続けるシステム環境を単純化しつつ、コスト削減を実現する方法が求められた。そこで、Domino SugarはVirtustream社のクラウド環境へ移行する決断を行ったのだ。

90日間の移行作業の後、Virtustreamはコスト・性能の両面で大きな効果を見せ始めた。まず、xStream による安定したパフォーマンスと頑健性により、SAPシステムは最大で2倍の速さで稼働している。また、3年間のTCO(総所有コスト)は40%の削減が見込まれている。ハードウェアを購入する必要がなく、必要に応じて必要な分だけ使用する従量課金制の導入により、コスト最適化が実現されたのだ。

Virtustream社がデータセンターを保有する米国・イギリスはもちろん、代理店を通してアジアや中東でも利用が広がっている。日本では伊藤忠テクノソリューションズと業務提携し、サービス展開が始まった。μVMを始めとする高い技術が日本国内のデータセンターで利用できるようになり、エンタープライズ向けクラウドとしての活用が期待される。

最後に

Virtustreamはエンタープライズ向けクラウドに特化し、独自技術によって世界的に高い評価を受ける企業だ。導入事例から分かる通り、大幅なコスト削減と性能向上が見込めるため、日本での展開にも期待が寄せられる。

編集:ビジネスon IT

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