海外のクラウド市場動向と新型IaaSの台頭

海外のクラウド市場動向と新型IaaSの台頭

 クラウドサービスの世界市場の大半はAmazon Web Serviceなどの大手IaaSベンダーやSalesforce.comなどに代表されるSaaSベンダー、またはGoogleやAppleなどに代表される消費者向けのサービスに占められます。世界人口の半数以上がこれらのクラウドサービスを気づかずに利用しているといわれているのです。

▼ ハイライト
1. アジア太平洋地域(APAC)におけるパブリッククラウドの採用動向
2. Enterprise Class Cloud
3. 企業がアプリケーションをクラウド基盤に移行する理由

1. アジア太平洋地域(APAC)におけるパブリッククラウドの採用動向

 地理的に広大で多様性に富んだ地域ではあるものの、2012年以降、APACのCIOにとってもパブリッククラウドの採用は第一の選択肢として位置付けられているようです。

 ニュージーランド政府はAPACの中でもいち早く「クラウドファースト」ポリシーを採用しました。後を追うかのごとくシンガポール政府も同じ道を歩き始めました。オーストラリアのクラウドマーケットでは、民間企業のパブリッククラウド採用が顕著で、2013年以降のパブリッククラウド採用率は今や米国の企業採用率を凌ぐ勢いです。

 日本ではパブリッククラウドは消費者向けサービスやゲーム、デジタル広告の分野では受け入れられており、米国を除けば世界最大規模のデータセンターも複数存在します。しかしながら大企業となると、セキュリティや制御面での不安から、海外での動向と比較するとクラウドの採用に関してはやや後ろ向きとみられがちです。一方で、プライベートクラウドを採用する企業は少しずつ増えてきているようです。興味深いのは、クラウドの採用に後ろ向きである国内の大企業も、海外拠点では比較的積極的にパブリッククラウドを採用しているという点です。

2. Enterprise Class Cloud

 Enterprise Class Cloudというあらたなタイプのパブリッククラウドが台頭しています。Enterprise Class Cloudは、オンプレミスが当たり前とする大企業や政府系のミッションクリティカルなアプリケーションの基盤に対してクラウドならではのメリットを享受することを命題としています。最初の兆しは2011年。大規模なSAP ECCアプリケーションがマルチテナント型クラウドへ移行されたニュースは世の中を驚かせました。以降ゆっくりしたペースではありますが、Enterprise Class Cloudの市場は拡大していきます。2013年以降となるとこのペースが前年比二桁の割合で急速に早まります。

3. 企業がアプリケーションをクラウド基盤に移行する理由

 企業がアプリケーションをクラウド基盤に移行する理由はさまざま挙げられますが、それらは「コスト」と「アジリティ(敏捷性)」という二つの言葉に集約することができます。

  • コスト
    • パブリッククラウドへ移行することにより、オンプレミス基盤上で稼働させるよりも30%から60%のコスト削減が実現できます。正しいIaaSベンダーを選ぶことにより、セキュリティやパフォーマンスを犠牲にすることなくこれを実現することが可能になります。
  • アジリティ
    • システムリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)の拡張に数週間から数カ月かかっていたものが数時間に短縮可能となります。また、数日を要するバッチ処理は数分で完了することが可能になります。

 北米や西欧ではクラウド基盤への信頼は高まり、新たなアプリケーションの基盤に対してはアメリカ合衆国連邦政府や英国政府など国家レベルの組織でさえも「クラウドファースト」ポリシーが浸透しており、多くの大企業ではミッションクリティカルなアプリケーションでさえも100%パブリッククラウドといった IT 戦略に移行しています。

最後に

 このような状況はEnterprise Class Cloudを提供するベンダーが国内には極めて少ないことにあると考えます。パフォーマンスや可用性、そしてなによりもセキュリティに対してオンプレミスと同等の(時にはオンプレミス以上の)品質が提供され、加えて低コスト。海外での Enterprise Class Cloudの潮流が日本にも及ぶことになれば、国内のIT市場は大きな変革期を迎えるのではないでしょうか?



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著者プロフィール

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ジュリアン H. ロイド
Virtustream Inc. ヴァイスプレジデント アジアパシフィック・ジャパン

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