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IaaSベンダーの特徴と選定ポイント|提案依頼前に知っておけばと後悔する前に
インターネットが普及し、クラウドが社会に定着した現代において、基幹系・業務系システムのあり方は多様化しつつあります。
経営視点によるIT基盤システムへの要求にはコストを削減やROIがつきまとい、情報システム部門が小規模である企業においては、IaaSの選択が頭を過ります。
クラウドファーストでIT基盤を検討する際、情報収集から経営層への具申が必要であり、これらを進めるにあたってはIaaSベンダー(提供事業者、SIer)に検討支援を依頼する企業が増えています。
では、何を基準にIaaSベンダーやサービスにあたりをつければ良いのでしょうか?
そこで、IaaSを検討する際に知っておきたいIaaSベンダーの特徴と、自社に適したIaaSを選ぶポイントについて解説します。
▼ 目次
・IaaSベンダーの特徴を比較
・自社に適したIaaSを選ぶポイントとは
・困ったときの、クラウド(IaaS)選定チェックシート
1. クラウドベンダーの特徴を比較
クラウドベンダーは下記の4つに分類できます。
これらのクラウドベンダーの特徴を、下記の切り口で解説します。
- 通信回線品質
- ベンダーロックイン
- 対応柔軟性
- コストメリット
1-1. クラウド専業
クラウド専業ベンダーの特徴は下記の通りです。
- 通信回線品質「◯」
- クラウドサービスとして大容量回線を引いていることが多い
- サービスメニューや契約次第だが、高速回線を利用できる可能性が高い
- ベンダーロックイン「△」
- 原則として自サービスでの対応となるため、ベンダーロックイン状態と変わらない
- 対応柔軟性「△」
- プライベートクラウドには対応できない
- 自サービス提供外の領域には対応しないケースが多く、1社だけに任せることができない
- コストメリット「◯」
- 用意されているサービスメニューとユーザー側の要件が合致していればコストメリットが出やすい
1-2. メーカー系
メーカー系ベンダーの特徴は下記の通りです。
- 通信回線品質「△」
- ネットワーク関連が比較的手薄なケースが多い
- ベンダーロックイン「△」
- 自社製品で統一されているため、ベンダーロックインは発生する
- ただし、そのため障害時の復旧対応が迅速であることが多い
- 対応柔軟性「〇」
- プライベートクラウドの構築も可能。システム全体のマイグレーションに強みを持つことが多い
- ただし、自社製品以外の製品ノウハウが比較的手薄になりがち
- コストメリット「◯」
- ボリュームディスカウントやOS・ソフトウェアバンドル等によるコストメリットが出る場合がある
1-3. 通信キャリア系
通信キャリア系ベンダーの特徴は下記の通りです。
- 通信回線品質「〇」
- データセンターやホスティング等の運用経験が豊富
- 専用線などの要件がある 場合は安価に利用が可能
- ベンダーロックイン「〇」
- 通信回線以外のプロダクトは外部調達となるため、ベンダーフリーといえる
- 対応柔軟性「△」
- サービス提供外の領域には対応しないケースが多い
- アプリケーションを考慮したIT基盤構成の策定や移行支援といっ たことに対応できないことが多い
- コストメリット「△」
- 通信回線費を値下げることで回線利用料のコストメリットは出しやすいが、それ以外は外部調達となるため、トータルでのコストメリットは出しにくい
1-4. 独立系
独立系ベンダーの特徴は下記の通りです。
- 通信回線品質「△」
- 通信回線は個別調達が必要
- ベンダーロックイン「〇」
- 特定の製品への偏りがない
- 対応柔軟性「〇」
- オンプレミスなど、クラウド適応外の領域にも対応可能であり、システム全体を総合的に支援
- 多様な製品を活用し、ハイブリット環境を提供することも可能
- コストメリット「△」
- 他のクラウドベンダー系の持つ専業領域にはコストメリットで劣る
上記より、IaaSベンダーの特徴を比較表をまとめると次の通りになります。
表 1. クラウドベンダーの比較表

2. 自社に適したIaaSを選ぶポイントとは
各ベンダーが提供するIaaSの中から、目的に合致するIaaSの検討候補を絞り込む際は、下記のポイントに着目してください。
2-1. 本質的な品質を見極められる透明性
基幹系・業務系システムに適したIaaSを選定する際、多くの企業はSLAを気にします。SLAとは「Service Level Agreement」の略で、ベンダーと利用者の間で結ばれるサービス品質保証を指します。たとえば、SLAに99.99%と書かれていれば、月間の使用可能時間99.99%が保証されます。
ただし、SLAの数字だけに縛られると、後々に後悔する可能性があるため注意が必要です。
何故なら、SLA の数字が意味する内容は、クラウド事業者によって異なるためです。
たとえば、大手パブリッククラウド事業者の場合、SLAの99.99%という数字は、複数のリージョンにまたがって構築された複数の仮想マシンのうち、少なくとも1つの仮想マシンへの「接続可能な時間」を意味している場合があります。つまり、自社の仮想サーバに障害が発生してシステムが利用できなくなっても、データセンターそのものが問題なく稼働し、接続可能な状態にあるのであれば、それはSLAの対象にはならならないケースがあるためです。
したがってSLAだけでなく、機器構成や運用ポリシー、データセンター内のセキュリティや運用体制の確認や監査に対応できる事業者を選定し、本質的な品質を見極めることが重要です。
この点の知見の詳細は、以下より獲得する事ができます。
2-2. DR
IaaSベンダーのサポート体制面は言うまでもなく、DRに対応していることが重要です。
DRとはディザスタリカバリ(Disaster Recovery)の略であり、地震や津波などの大規模災害や、テロ、不正侵入などによりシステムが壊滅的な状況になった際に、被害を最小限にして復旧・修復する災害予防策を指します。
2-3. セキュリティ、安全対策基準、ITマネジメントの認証
セキュリティの認証制度やガイドラインに準拠しているか、データセンターの物理セキュリティについても選定のポイントになります。
セキュリティの認証制度については、以下に参考となる情報がまとめてありますので、ご参考ください。
また、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の開発、製造に使用されるコンピュータ化システムにおいては、CSV(コンピュータ化システム適正管理ガイドライン:「医薬品・医薬部外品製造販売業者建設会社様、エンジニアリング会社様などにおけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン」)の遵守が必要になりました。
CSVについての解説については、以下をご欄ください。
2-4. コストパフォーマンス
IaaSの料金体系はベンダーごとに異なり、ポイントは従量課金の単位です。
コストは中長期的な視点で見ると大きな差となるため、これまでのシステムの稼働データに応じて無駄が生じにくいベンダーを選定する必要があります。
さらにはリソースのカスタマイズを含め、総合的に自由度が高いIaaSを選定した方が、ユーザーの要望に応えやすくなります。
尚、従量課金についての解説は、下記よりご確認いただけます。
2-5. かゆいところに手が届く総合的な技術力、サポート力
調達する範囲がIaaSだけとは限りません。
仮想マシンのセキュリティ、SASEなどのネットワークなど、IT基盤を取り囲むシステム要素は様々です。
したがって、下記を満たすベンダーを選択しておくと、何かあったときに困ることはありません。
- オンプレミスとクラウドの両方を熟知していること
- 選定から導入そして運用までを一気通貫でサポートできること
- マルチベンダーからマルチクラウドまでの様々な選択肢を提案できること
上記に挙げたポイントの他に、最適なIT基盤を選定する考え方が掲載されている記事については、以下よりご欄いただけます。
3. 困ったときの、クラウド(IaaS)選定チェックシート
はじめてIaaSを検討する方にとっては、アマゾン ウェブ サービス(AWS)をはじめとする様々なIaaSの中から、具体的にどのような品質評価項目を基に、システムが要求する品質に応えられるクラウドを選定すべきなのか、なかなか分からないことも多いのが現実だ。
そこで伊藤忠テクノソリューションズは、10年以上にわたって培った自営クラウドの運用ノウハウやクラウド移行ノウハウ、お客様からご要望・ご質問いただくポイントを基に客観的な視点から「クラウド(IaaS)選定チェックリスト」を作成しました。
チェックリストは100を超えるチェック項目からなり、機能面の項目にとどまらず、コスト、セキュリティや地理的条件、提供事業者のサポート体制や運用、契約、見過ごされがちな計画停止やメンテナンス作業の実施要項の確認、内部不正対策の確認項目も含まれています。チェックリストは下記からダウンロードできるので、基幹系・業務系システムが求める品質を提供できるクラウド基盤の選定にお役立てください。
最後に
IT基盤の新規構築や更改を検討する際に、IaaSベンダーは企業・組織の情報システム部門のパートナーとして活動を行うことになります。
確かなベンダーの選択は、ビジネスの成功に大きく起因すると言って間違いありません。