基幹系システムのクラウド移行~いざ検討開始すると直面する難題~

 基幹系システムのIaaS移行事例が増えてきた。しかし、検討開始後に様々な難題に直面し、IaaS移行を断念する企業も非常に多い。どのような難題を解かなければならないのだろうか。

▼ ハイライト
1. 広がる基幹系システムのIaaS移行
2. 安定性・堅牢性が求められる「守りのIT」にも活用されるクラウド環境
3. IaaS移行を断念する企業は非常に多い


1. 広がる基幹系システムのIaaS移行

 「基幹系システムこそ、一番運用が大変でお金もかかる」「クラウド利用含めてアウトソースすることができれば、非常に楽になる」企業のクラウド移行に対するニーズが高まっている。クラウドへのニーズに応えるため、ハードウェアベンダーは、クラウドサービスプロバイダー向けのプログラムを拡充し、ソフトウェアベンダーもクラウド前提のライセンスを提供するようになった。

 基幹系システムもクラウド採用が進んでいるのが近年の特徴だ。大手ERPベンダーなども全面的にクラウド化を推奨している影響も大きい。さらに、海外メジャーパブリッククラウドが日本でデータセンターを開設したため、これまで法令順守の観点からクラウド採用を控えていた企業にも門戸が開いた。AWSは2011年3月に東京、Microsoft Azureは2014年2月に埼玉・大阪、VMware vCloud Airは2014年11月に西日本、IBM SoftLayerは2014年12月に東京と開設が相次いだ。

 クラウドの利用が広がっているのは、既にクラウドを使ってみた企業がその価値を認識し、さらなるクラウド化を推進している面がある。IDC Japanの調査によると、クラウドを利用していない企業ではクラウドがIT戦略に影響を与えると回答したのが半数にも満たないのに対し、利用中の企業では約80%が影響があると答えている。クラウドの普及が進む状況は今後も予想されているのだ。

基幹系システムのクラウド移行

図 1. 「攻めのIT」と「守りのIT」の相違点

2. 安定性・堅牢性が求められる「守りのIT」にも活用されるクラウド環境

 クラウドがIT戦略に与える影響として「攻めのIT」と「守りのIT」の推進が提案されている。「攻めのIT」とはクラウドだからこそ実現できるビジネスへと進出し、事業拡大を進めることを意味する。例えば、ビッグデータによる嗜好抽出とリコメンド、デジタルマーケティングによる新規営業活動と言った機能はクラウドの柔軟性が求められる。また、サービスのグローバル展開やIoTによる新サービスの創出といった場面でも、クラウドの拡張性がモノを言う。

 「攻めのIT」は柔軟性やスピード性が求められるため、もともクラウド技術の進歩と共に発展してきた側面がある。システムに求められる負荷が予測不可能な様子は3rd Workloadと呼ばれ、マーケティング・営業・製品開発部門での管理が行われてきた。マーケット分析・解析、開発、シミュレーション、Webサービスなどが主な用途であり、近年、利用が増えているビッグデータ、モバイルアプリ、IoT、ソーシャルメディアの機能が求められる。

 一方で、「守りのIT」はクラウドによる品質改善、ならびに業務の効率化を指す。数か月かかっていたIT調達スピードが、数週どころか数日もかからずに実施できるようになる。また、コラボレーションシステム刷新によるワークスタイル改革も実現可能だ。ITインフラ運用からの解放や災害対策によって、コスト削減やIT人員の最適化も進む。

 「守りのIT」は安定性・堅牢性が重要なためオンプレミス環境での利用が一般的であったが、北米ではクラウド化の流れも見られる。予測可能な負荷は2nd Workloadと呼ばれ、情報システム部門が主導で管理してきた。人事・会計・受発注・生産・在庫・販売・顧客管理などが主な用途であり、基幹系システム・RDBMS・ERP・ファイルサーバーなどが含まれる。

 基幹系システムのクラウド移行は、この2nd Workloadへの対応を意味する。クラウドが安定性・堅牢性を求められる2nd Workloadへ挑戦する際には、どのような難題が上がってくるのだろうか。

表 1. クラウド移行で直面しがちな課題

基幹系システムのクラウド移行



3. IaaS移行を断念する企業は非常に多い

 基幹システムの特徴は、ミッションクリティカル性が求められる点にある。コア業務(基幹業務)を支えるため、24時間365日稼働を含め、高い非機能要件が求められる。だからこそ、クラウド化によってコストと運用負荷の軽減を図りたい企業が増えている。しかし、基幹システムをパブリッククラウド(IaaS)へ移行する際には、様々な課題が噴出し、移行を断念する企業も非常に多い。

 24時間365日を謳うIaaSでも、突然かつ一方的な停止調整が起こり得るため注意が必要だ。さらに、24時間365日稼働を保証する可用性設計にあたり、アプリケーションの設計変更が求められるケースさえある。クラウド・ネイティブの3rd Workloadの世界では、インフラが可用性を担保していないため、インフラで障害が発生した際に、フェイルオーバーの機能をアプリ側で実装していた。しかし、基幹システムではインフラが可用性を担保しているため、アプリケーション側で可用性を考慮する必要がなかった。そのため、2nd Workloadの世界で運用していたアプリケーションをそのままクラウドへ移行しても、可用性を担保する設計がそぐわない結果になるのだ。

 性能保証、及びコストの面でも直面する課題がある。パブリッククラウドが安価に提供できるのは、性能が高くない共有リソースを用いて、必要なときに必要な分だけ使用する従量課金を行っているからだ。しかし、高い性能が求められる場合、占有リソースを常時使用するため、かえってコストが上昇するリスクさえある。性能を保証するため、余裕をもって見積もりを行い、オーバーサイジングに陥る可能性もある。リソース保証ではオンプレミス環境の方が安くなってしまい、当初の期待にそぐわなかったという声も聞かれる。

 セキュリティやコンプライアンスでも問題が散見される。システム面でセキュリティに対応した機能があるのは当然だが、運用面でしっかりとしたオペレーションを行っているかどうかを不安に感じる企業もある。パブリッククラウドでは他社のサーバーで起こった問題が、自社のサーバーに影響しないか考える担当者もいるだろう。また、データセンターへの現地監査が求められる業界では、その対応を受け入れられるIaaSでなければ採用できない。これらの要望を実現し、ミッションクリティカルな要件を満たすクラウドが求められている。

最後に

 安定性・堅牢性が求められる「守りのIT」にもクラウドが用いられるようになってきた。性能保証やコスト最適化、セキュリティやコンプライアンスといった高い要件に応えられるIaaSが求められている。

 基幹系システムを IaaS へ移行する上でお悩みや課題を抱えられている場合は、お気軽にご相談下さい。

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