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SAP HANAのバックアップとリカバリ方法|「かゆいところに手が届く」Commvaultとは
かねてより企業システムに欠かせない「バックアップ」だが、「SAP HANA」をはじめとした新しいテクノロジーにおいては従来のバックアップ方式では対応できない状況が発生している。
そこでCommvault Systems Japan株式会社 セールスエンジニアリング Principal Systems Engineer、渡邉 健一氏が「Commvault(コムボルト)によるHANAのバックアップ/リカバリ、クラウドへのDRおよび移行手法」と題して登壇したセッションをレポートする。
制作協力:ヴイエムウェア株式会社
▼ 目次
1. バックアップやリストア/リカバリに悩む企業
2. CommvaultによるSAP HANAのバックアップ
3. SAP HANAのバックアップ+リストア/リカバリをCommvaultで行う強み
4. ロールベースセキュリティを実現するCommvaultの優れた管理性
1. バックアップやリストア/リカバリに悩む企業
セッション冒頭で渡邉氏は、同社によく寄せられるバックアップやリストア/リカバリに関する悩みを紹介した。
1-1. バックアップに関する悩み
・システムの規模が大きくなりバックアップがなかなか終わらない
・システム更新後に従来のバックアップ方式が使えなくなった
・正しくバックアップできているかわからずリストアが不安
1-2. リストア/リカバリに関する悩み
・導入時の試験のみでリストアをしたことがない
・リストアはしたことはあってもリカバリは経験がない
・システム統合後にリストア/リカバリの工数が増えた
2. CommvaultによるSAP HANAのバックアップ
現状、SAP HANA のバックアップ方法は、大きく3つに分けられる。
- ファイル単位のバックアップでHANA 側で指定した出力先に格納する。この場合追加のコンポーネント等は不要だ。
- CREATE SNAPSHOTコマンドによるストレージスナップショットであり、静止点の作成後、HANAの外部のコピー機能と連携する。
- SAPが提供するBackint APIと連携するかたちで3rd Party のバックアップ製品にデータを転送する。このバックアップ製品にはSAPの認定プログラムが必要になる。
このうちCommvaultが対応するのは2つ目のCREATE SNAPSHOTと3つ目のBackintのバックアップ方式である。
では実際にCommvaultがSAP HANAのバックアップ、リストア/リカバリをどのように行うのか。
まず操作はCommvaultのCommCell ConsoleからでもSAP HANA Studioからでもいずれも行うことが可能だ。
「DB運用者はSAP HANA Studioから操作する場合が多く、CommCell ConsoleはSAP HANA以外の環境も含めてバックアップを行えるためバックアップ運用者が操作するケースが多い」と渡邉氏はコメントした。

図 1. SAP HANAのバックアップ、リストア/リカバリ操作イメージ
CommvaultはSAPの認定を受けているためシングルノードでもマルチノードでも対応可能だ。

図 2. シングルノード構成

図 3. マルチノード構成
(マルチノードの場合、全てのノードに SAP HANA iDataAgent が必要)
CommvaultによるSAP HANAバックアップ時のデータの流れとしては
- CommvaultのエージェントをSAP HANAのすべてのホストに導入
- Commvaultの管理サーバーからジョブの開始通知が送られる
- SAP HANAのDBやログファイルデータを出力してネットワーク経由でバックアップサーバーに転送して、そこからディスクやテープ、クラウドストレージなどのライブラリに直接書き込む。

図 4. CommvaultによるSAP HANAバックアップ時のデータの流れ
尚、Commvaultでできる SAP HANA のバックアップは下記の通りだ。
- データ/ログのバックアップ
- SAP HANA iDataAgent を使用
- Backint は フルバックアップ、増分バックアップ、差分バックアップ
- インターフェースは Commvault / HANA Studio / hdbsql を利用可能
- ストレージ スナップショットはフル バックアップのみ
- インターフェースは Commvault のみ
- データ/ログ以外のバックアップ
- File System iDataAgent を使用
- 構成ファイル
- OS (システム バックアップ)
3. SAP HANAのバックアップ+リストア/リカバリをCommvaultで行う強み
では、SAP HANAのバックアップ、リストア/リカバリを行う上でCommvaultにはどのような優れた点があるのだろうか。
まずバックアップについて最初に挙げられるのがDR(ディザスタリカバリ)/リカバリを意識したバックアップの最適化が行える点である。
Commvaultはデータ保護分野におけるユニークで幅広いカバレッジが大きな特徴であり、SAP HANA意外にもオープンソース系を含めてあらゆるDBに対応している。また、プラットフォームについても物理サーバーから各種仮想マシン、さらにクラウド連携にまで対応している。
また、IntelliSnapの機能を使えば、ストレージのスナップショットの作成からバックアップサーバーへのマウントの連携バックアップも行うことが可能で、様々なベンダーのストレージに対応している。

図 5. IntelliSnapを使用したスナップショット連携バックアップ
さらにCommvaultの重複排除テクノロジーを用いることでバックアップデータ量を大幅に削減することができる。また削減できるのはディスク容量だけではなく、ネットワーク負荷を抑えたバックアップによるネットワークボトルネックの解消もしくは、余裕あるバックアップサーバーのリソースを活用することによるバックアップ時の業務サーバーへの負荷の低減も実現する。

図 6. Commvaultの重複排除テクノロジー|削減できるのはディスク容量だけではない
続いてリストア/リカバリに関してのCommvaultの強みの1つとなるのが、IntelliSnapを使用したスナップショット連携である。Commvaultはストレージのスナップショットからバックアップをとる時に、VMやDBなど元のアプリケーションを意識したバックアップを行う。そのため元に戻す際にもアプリケーションの場所だけ用意してあればいいためデータの場所を意識しないリストアが行える。また、元の場所だけでなく、異なる場所にもリストア可能だ。
重複排除機能を活用したバックアップデータの複製機能も備えており、例えばオンプレミスの物理サーバーとクラウドのDRサイトを用意した場合に、オンプレミスのストレージには重複排除されたブロックのみを格納し、クラウドストレージに対しては重複排除されたデータを複製するといったことも可能となっている。
「最近DRのコストをかけたくないという声も増えており、そうしたニーズに応える機能とも言える」

図 7. Commvaultの重複排除テクノロジー|バックアップデータの複製(DASH Copy)
他にも、ストレージの機能を利用したバックアップデータの複製や、クラウドインスタンスへの変換リストアなどもCommvaultの大きな強みとなっている。クラウド上での活用に関しては、CommvaultはAmazon EC2やAzureインスタンスをエージェントレスでバックアップ可能であり、また仮想マシン(インスタンス)単位もしくはファイル単位でのリストアが可能となっているのである。

図 8. ストレージの機能を利用したバックアップ データの複製|Replica Library / Replica Cloud Library

図 9. クラウド インスタンスへの変換リストア

図 10. クラウド上での活用|Amazon EC2やAzureインスタンス用のVirtual Server Agent
4. ロールベースセキュリティを実現するCommvaultの優れた管理性
最後に渡邉氏は、管理性に関してのCommvaultの強みに言及した。
Commvaultの特徴の1つとしてマルチテナント機能がある。通常バックアップシステムをマルチテナントで運用する場合、他の利用者のデータを参照不可にすることが重要となる。そのためクラウド環境において各社別にシステムを構築し、管理者(サービス事業者)のみがリストアする運用では、管理者へのリストア依頼による待ち時間の発生や、ユーザーごとの環境の準備による管理の煩雑さ、コストの増大といった課題が生じてしまう。

図 11. 各社別にシステムを構築し、管理者(サービス事業者)のみがリストアする運用における課題

図 12. Commvaultでできるマルチテナント
これに対してCommvaultであれば、ユーザー/ユーザーグループごとに実行可能な機能を指定することができ、ユーザーごとに実行可能な操作を制限させることも可能となっている。例えば、特定のユーザー/ユーザーグループに対して、サーバーXに対してはバックアップとリストアを実行可能で、サーバーYに対してはリストアのみ可能といった権限設定も行える。
「このようなロールベースセキュリティの実装によって、ユーザーやユーザーグループごとに決めの細かいコントロールを実現しているのがCommvaultの大きな強みとなっている」と渡邉氏は強調した。

図 13. Commvaultのマルチテナント実現方法|ロールベースセキュリティの活用
Commvaultの管理コンソールの表示内容も、システム管理者やテナント(部門)管理者、一般ユーザーなどのロールごとの権限に応じて柔軟に変化するようになっている。
「ここまで細かくユーザーの権限ごとに表示が変わるバックアップ製品は他に類を見ないと自負している。実際に、サービスプロバイダーやIT子会社にバックアップを委託しているケースなどでもよく使われる機能だ」(渡邉氏)

図 14. Commvaultの管理コンソールでの表示の違い|各ユーザーの権限に応じた表示が可能
まとめ
一連の解説を終えた渡邉氏は、最後にSAP HANAのバックアップにCommvaultを使うメリットを改めて振り返り、SAP HANA の標準機能では実現できないCommvaultならではの機能を以下のようにまとめた。
- 重複排除によるバックアップデータ容量の削減
- バックアップデータの暗号化
- テープやクラウドなど外部ストレージへのデータ保管
- バックアップデータの階層管理
- 遠隔地DRサイトへのバックアップデータの複製
- バックアップイメージを使用した複製データベースの作成
- SAP HANA Studioとの統合
- 他アプリケーション製品のバックアップも含めた統合管理
「Commvaultという製品名自体初めて耳にする方もいたかと思うが、この製品を使っていただくことで、いままで不可能だったところや、かゆいところに手が届くのだというイメージを持っていただければ幸いだ」と渡邉氏は訴えてセッションを終了した。
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