災害からシステムを守れ|災害対策に有効なクラウド活用

災害からシステムを守れ|災害対策に有効なクラウド活用

 災害対策は企業の利益につながりにくいIT投資だ。

 現時点は必須でなくても、いずれ高機能な災害対策が求められる。

 そこで、広域災害を想定したBCP対策を検討されている方に向け、システムの災害対策のベストプラクティスについて解説する。




▼ 目次
BCPの策定及び、見直しのポイント
スモールスタートで始める災害対策
クラウドを利用したデータの保護






1. BCPの策定及び、見直しのポイント

 自然災害の脅威が避けられない日本では、地震の被害が報じられる度に、BCP(Business Continuity Plan : 事業継続計画)の策定・見直しが取り沙汰されてきた。

 自然災害はもちろん、電力・通信インフラの停止、火災、疫病、風評被害、テロ、サイバーテロとった脅威があり、いずれのリスクに対してもBCPの策定が必要とされている。


 しかし、日本情報システム・ユーザー協会の調査では、BCP策定済みの企業は半数にも満たないという。

 また、同調査ではBCP策定及び見直しのポイントとして、下記が挙げられている。

  • 外部データセンターの活用やクラウドコンピューティングへの転換
  • ネットワークの多様化
  • バックアップセンターの準備
  • 自家発電設備の設営・増設
  • データセンターの場所の見直し



 BCPの策定や、それに伴うデータセンターの活用が進まない理由は、コストに見合った価値の認識が難しい点にある。通常のクラウド環境の構築に加え、災害復旧の要件を加えると、初期導入や運用コストが増加したように見えてしまうためだ。

 そもそもBCPの知見が無ければ、要件定義も困難に思えるだろう。


 企業の利益に直結するアプリケーションや生産性を高めるグループウェアなどは投資対効果が分かりやすいのに対し、BCPのように利益に関わらない案件は投資対効果が分かりにくいため、システム投資の中でも優先度が下がりがちだ。

 利益を生まない案件の中でも、利用頻度がそれなりに高いセキュリティやデータのバックアップには予算を割いても、利用頻度が極めて低い災害対策まで予算や時間を費やすのが難しいという意見もあるだろう。


 自社に固有の価値を生まず、利用頻度が低いBCPこそ、他社へのリスク移転によって、コストの最適化が図れることを忘れてはならない。

 多くの人が生命保険を利用しているように、発生確率の低い事象においては、自分で必要になるコストを事前に用意しておくよりも、わずかな保険料を払って他者へ有事のコスト負担を任せた方が経済的に合理性がある。

 BCPにおいても同様で、自社の環境で発生確率の低い災害へ備えるよりも、クラウド環境へ災害対策を任せる方が理に適っているのだ。






2. スモールスタートで始める災害対策

 災害対策と一口に言っても実装方法は多種多様だ。

 また、災害対策は全てを一度に行う必要はなく、小さく始めて徐々に完成度を高めていくと良い。

  • データ保護
    • 災害によるデータ消失を防ぐため、メインサイトと遠隔地サイトを同期させて、データを保管する
  • システム復旧
    • 災害発生時にサーバーを立ち上げて業務を継続可能にする
  • システム切替
    • アクティブ・スタンバイ方式を採用し、災害発生時に遠隔サイトへ切り替えて、すぐにシステムを復旧する
  • システム継続
    • 地理的に離れた2か所のデータセンターでシステムを並行稼働させる
    • 災害時に一つのサイトが停止したとしても、片系稼働に変更し業務を継続する




図 1. 災害対策の実装手段





3. クラウドを利用したデータの保護

 クラウドを利用したデータの保護を行う場合、大きく3つの方式がある。

  • ハードウェア追加方式
    • メインサイトにバックアップ・アプライアンスを導入し、クラウド環境へのデータ転送を担当する
  • ソフトウェア追加方式
    • メインサイトへ同期処理を行うエージェント機能を実装し、必要に応じてデータを転送する
    • バックアップ対象の適応範囲が広いというメリットがある
  • ストレージ機能活用方式
    • メインサイトにあるストレージにデータ保護の機能を持たせ、クラウドへの同期を実装
    • ストレージが持つ機能を活用するため、ハードウェア・ソフトウェアの追加導入が不要になる

 

 いずれの方式もメリット・デメリットがあるので、単純な費用比較に陥ることなく、データ転送方式の違いにも注目しつつ検討を進めるとよいだろう。



図 2. クラウドを利用したデータの保護



 メインサイトから遠隔サイトへデータを同期させる場合、メインサイトあるいは遠隔サイトへバックアップ・アプライアンスやバックアップソフトを導入し、バックアップ機能によってデータの同期を行うケースが多い。

 一例として基幹系システムで利用されていることが多い SAP ERP のデータベース「SAP HANA」のバックアップを実現する「Commvault」の概要解説記事が参考になるため、以下にご紹介する。



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さいごに

 投資対効果が見えにくいからといって災害対策を後回しにすれば、非常時に痛い目を見る。

 クラウドを活用すれば簡単・安全・安価でデータ保護が始められる。小さく始めて、徐々にレベルアップする方式が望ましい。

 参考までに、基幹系システムに求められるDR(ディザスタリカバリ:災害時復旧)やバックアップ要件に対応できるクラウドの解説資料をご紹介する。基幹系システム用途のDR・バックアップ機能があらかじめ組み込まれたサービスとは、どのようなサービスなのか、クラウドを検討する際のご参考としていただきたい。



DR、Backup



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