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ハイパーコンバージドを使ったストレージ容量の節約術
多くのインフラ管理者は、ストレージの容量不足に関する悩みを抱えています。
- 使わないデータは圧縮したい。
- 同じデータは重複排除したい。
このような悩みに有効な解決手段として注目されているのがハイパーコンバージドインフラです。ハイパーコンバージドインフラ(HCI)とは、オンプレミス型プライベートクラウドの新しい形態。外部ストレージを使わず、SDS(Software Defined Storage)技術を用いて、仮想インフラを構成するサーバの内臓ディスクを1つの大きな論理ボリュームとして利用します。
数多のハイパーコンバージド製品の中で、とりわけ国内で急速に注目されている製品が HPE SimpliVity です。HPE SimpliVity は専用のアクセラレータカードを利用して、データの重複排除・圧縮ができます。また、重複排除・圧縮はハードウェアで処理が行われるため、CPUに負荷がかかりません。業務時間を気にすることなくリアルタイムで重複排除・圧縮を実施できます。また平均60~70%程度のストレージ容量を削減できるため、ストレージ容量不足の悩みが大幅に軽減されます。
本記事では、HPE SimpliVityの重複排除・圧縮機能を利用すると、ストレージの容量不足に関する悩みをどのように解決できるのか、伊藤忠テクノソリューションズ 加藤 士郎氏が解説します。
▼ 重複排除・圧縮の動作デモ
シナリオ A. 700MBの動画(非圧縮)データの重複排除・圧縮
シナリオ B. 1GB のダミーデータを使用した重複排除・圧縮
シナリオ C. 実業務で利用した600MB のデータを使用した重複排除・圧縮
1. ストレージの容量不足に悩んでいませんか?
ユーザー① 「共有サーバの容量が足りない!」
インフラ管理者 「不要なデータを削除してください」
ユーザー② 「メールボックスの容量が足りない!」
インフラ管理者 「古いメールは削除してください」
仮想化基盤を運用しているインフラ管理者は、ユーザから「社内の共有ファイルサーバやメールボックスの容量が足りない」といった不満を受けることが多いのではないでしょうか。
全てのユーザの要望に対応して、ストレージをいくら増設しても切りがありません。管理者としては、使用頻度の低いデータを圧縮するなどの整理整頓、メーリングリストに届く添付メールを削除等をユーザーに求めたくなるのは自明です。
2. ストレージ容量不足に対応するには?
HPE SimpliVity は重複排除と圧縮機能により、ストレージ容量を容易に削減できます。専用のアクセラレータによるインライン処理(入力したデータの順序や種類が整理されていなくても実行される処理のこと)により、CPU に負荷を与えることなく業務時間にリアルタイムで重複排除・圧縮を自動で行えます。もちろん、ユーザー側での圧縮や重複排除の操作は一切不要です。
重複排除・圧縮の概要を簡単に解説します。図 1 を参照ください。

図1. HPE SimpliVity重複排除・圧縮の流れ(概念図)
重複排除・圧縮動作の流れは、A・B・C・Dの4つのデータを書き込む場合、A・Bが既にあれば、アクセラレータが瞬時に判断しA・Bを重複判定。A・Bを排除し、C・Dのみ圧縮をかけてストレージに書き込みます。HPE SimpliVityの重複排除・圧縮の特徴は、この一連の動作過程を自動で行う点にあります。
3. 重複排除・圧縮機能の動作デモ
HPE SimpliVity の重複排除・圧縮機能が、はたしてどれくらいの圧縮効果があるのか、3つのシナリオの経過と結果を見ながら、HPE SimpliVityの動きを見ていきましょう。
・シナリオ A. 700MBの動画(非圧縮)データの重複排除・圧縮
・シナリオ B. 1GB のダミーデータの重複排除・圧縮
・シナリオ C. 実業務で利用した600MB のデータの重複排除・圧縮
動画1. 重複排除・圧縮機能の確認
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
シナリオ A. 700MBの動画(非圧縮)データの重複排除・圧縮
A-1. 確認内容と期待する結果
HPE SimpliVity のデータストアに下記の仮想マシンを用意。
- 仮想マシン A : Windows 10
- 仮想マシン B : Windows Server 2012
まず、OS だけインストールした仮想マシンAとBを用意し、重複排除・圧縮がどれだけ効いているか確認します。次に、仮想マシン A から 「700MB の動画ファイル (非圧縮)」を仮想マシンBにコピー。同じく重複排除・圧縮機能の動作を確認します。
A-2. 確認結果
図.2 はデータをコピーする前のHPE SimpliVity のデータストアの使用状況です。論理的には、Windows Server 2012とWindows10の2台の仮想マシンで33GB使っています。しかしながら、重複排除と圧縮機能が作用した結果、実際に使っているデータストアの容量は10.2GB、OS2台分の重複排除率は2.2:1、圧縮率は1.5:1になりました。
図 2. 仮想マシン B にデータをコピーする前のストレージ使用状況
(図をクリックすると、シナリオ A の「コピー前」からデモ動画を視聴できます)
次に、仮想マシン A に格納された700MBの動画データ(非圧縮)を仮想マシン B の共有フォルダにコピーします。結果、重複排除と圧縮機能が作用して、400MBで書き込まれました。
図 3. 仮想マシン B にデータをコピーした後のストレージ使用状況
(図をクリックすると、シナリオ A の「コピー後」からデモ動画を視聴できます)
※上記数値はあくまでもデモ結果であり、使用環境によって重複排除・圧縮率が異なる場合があります。
シナリオ B. 1GB のダミーデータを重複排除・圧縮
B-1. 確認内容と期待する結果
シナリオ A で使用した仮想マシン A に格納された「フリーソフトで作成した1GB のファイル」を仮想マシンBにコピー。重複排除・圧縮機能の動作を確認します。
B-2. 確認結果
コピーを実施する前の HPE SimpliVity のデータストアの物理容量は10.6GBなので、単純計算すると検証後は非圧縮で11.6GBになりますが、結果は10.7GB。1GBのデータは、100MBで書き込まれました。予想以上の重複排除・圧縮効果に驚きましたが、この結果の理由は、テスト用のダミーデータを使って確認したため、データ値が同一パターンであると認識されてしまい、想定以上の結果になってしまったのではないかと考えられます。
図 4. 仮想マシン B にデータをコピーした後のストレージ使用状況
(図をクリックすると、シナリオ B からデモ動画を視聴できます)
シナリオ C. 実業務で利用した600MB のデータを使用した重複排除・圧縮
実環境での効果を確認する目的で、弊社が実業務で使用しているデータを用い、重複排除・圧縮の効果を確認します。このデータの中には、711個のフォルダ、 ExcelやPowerPointで作成した2,900個のファイルが詰まっています。
C-1. 確認内容と期待する結果
仮想マシン A から「合計 600MB のファイル群」を仮想マシンBにコピー。重複排除・圧縮機能の動作を確認します。
C-2. 確認結果
結果、600MBのデータが400MBで書き込まれました。
図 5. 仮想マシン B にデータをコピーした後のストレージ使用状況
(図をクリックすると、シナリオ C からデモ動画を視聴できます)
※上記数値はあくまでもデモ結果であり、使用環境によって重複排除・圧縮率が異なる場合があります。
最後に
HPE SimpliVityの専用のアクセラレータカードを利用したデータの重複排除・圧縮についての処理の流れや圧縮の効果について、ご理解いただけたでしょうか?
次世代の仮想化基盤としてハイパーコンバージドシステムは急速な勢いで導入が進んでいます。2015年度の時点で約800億円だったハイパーコンバージドの世界市場は 2020年度には約4500億円に拡大すると予想されています。日本市場においても同様に40億円から300億円へと大きな成長が予想されています。
本記事で取り上げた課題の他、仮想化基盤の運用課題は沢山あります。仮想化基盤について課題を抱えられている方、HPE SimpliVity の詳しい説明を希望される方はお気軽に弊社へご相談ください。他社製品も含めた上で、フラットな視点で最適な製品の選定にご協力致します。
HPE SimpliVity の特徴については下記をご覧ください。
著者プロフィール

- 加藤士郎
- 伊藤忠テクノソリュージョンズ株式会社在職中 | 1. 現在の担当業務 : HCI 全般(HPE、Cisco、Dell EMC、NetApp、Lenovo) | 2. これまでの担当業務 : ITインフラ全般(サーバ、ネットワーク、仮想化)| 3. 趣味 : 孤独のグルメの巡り、料理 | 4. 好物 : 肉、お酒、ガンダム