ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリット

ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリット

 次世代の仮想インフラとしてSDS(Software Defined Storage)技術を活用したハイパーコンバージド製品が市場の注目を集め、導入が急速に進んでいる。なぜ今、多くの企業がハイパーコンバージド製品を必要としているのか。そこにはどのようなメリット・デメリットがあり、選定時にはいかなるポイントをチェックすべきなのか――。プライベートクラウド分野でも豊富な構築実績を有するCTCのエキスパートエンジニアが、マルチベンダーならではの視点からハイパーコンバージドの最新動向と導入メリットを解説した。


▼ ハイライト

・国内で急速な勢いで拡大しているハイパーコンバージド市場
・従来型の仮想インフラとハイパーコンバージドの違いと適材適所の使い方
・ハイパーコンバージドがもたらす3つのメリット「スケールアウト」「シンプル構成」「簡易運用」

 

1. 物理サーバの削減だけが仮想化のゴールではない!~既に1/3のユーザーがハイパーコンバージド製品を採用~

 昨今、多くの企業から注目されているハイパーコンバージドだが、実際その市場規模は急速な勢いで拡大している。2015年度の時点で約800億円だったハイパーコンバージドの世界市場は、2020年度には約4500億円に拡大する見込みだ。日本市場も同様に40億円から300億円へと、こちらも大きな成長が予想されている。

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(略称:CTC)ITインフラビジネス推進第2部コンバージドインフラビジネス推進課のエキスパートエンジニアである水上貴博氏は、「最初はVDI(仮想デスクトップ)の運用を支える基盤として2014年頃から使われ始めたハイパーコンバージドですが、現在では弊社が手がけるプライベートクラウドの3件のうち1件はハイパーコンバージドで既に導入されています。時代は大きな変化の過程にあり、ハイパーコンバージドはまさに今が“旬”です」とビジネスの概況を示した。

ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリット

『ハイパーコンバージドはまさに今が“旬”です』と語る水上氏

 では、なぜ多くの企業がハイパーコンバージドを求めるようになったのか。ハイパーバイザーを用いた仮想化技術の普及が始まったのは2000年代半ばのことだが、その後の約10年にわたって仮想インフラの基本的なアーキテクチャは変わっていない。たしかに物理サーバ台数を削減してハードウェア投資を抑制するといった効果をもたらしてきたが、それは決して仮想化のゴールを意味するわけではない。

 既存の仮想インフラに対して、「性能遅延が起こった際にどの箇所がボトルネックとなっているのかわからない」「外部ストレージの操作や設定が難しい」「サーバ技術者でも簡単に運用できるようにしたい」といった運用管理に関する課題が顕在化している。その一方では、「必要にあわせて徐々にリソースを拡張したい」「システムを簡単に拡張し、業務を止めたくない」といった柔軟な拡張性を求めるユーザーの要望が急速に広がっている。

 「多くのお客様が、オンプレミス環境でもクラウド環境のように容易な運用管理や柔軟な拡張を行っていきたいと考え始めたのです。ビジネスの変化により迅速で柔軟に対応できるITインフラが必須となりつつある証拠です」(水上氏)

 

2. ハイパーコンバージド“適材適所”の使い方

 従来型の仮想インフラはCPUやメモリなどのリソースに関しては抽象化を実現したものの、各VM(仮想マシン)に対してデータストアを提供する外部ストレージについては依然として物理環境で運用せざるを得ず、柔軟な拡張や変更を行うことができなかった。この課題を解決したのがハイパーコンバージドというわけだ。

 ハイパーコンバージドは外部ストレージを使用しない。仮想インフラを構成する各サーバの内蔵ディスクをSDS(Software Defined Storage)の技術で束ね、1つの大きな論理ボリューム(共有ストレージ)として利用するのである。

 となれば、「今後の仮想インフラはすべてハイパーコンバージドでいいのでは?」と考えるかもしれない。だが、これは少々勇み足のようだ。水上氏は「あくまでも“適材適所”で外部ストレージとハイパーコンバージドを使い分けていくことになります」と示唆する。従来のアーキテクチャと比べて大きく2つの違いについて気を付けなければならない。まずはディスクのIOPS(Input / Output Per Second)性能を決定づけるアーキテクチャだ。

 従来型の仮想インフラにおける外部ストレージは、1つの筐体に数十から数百基といった非常に多くのHDDを集約することで、平均的に高いIOPSを提供してきた。しかし、ハイパーコンバージドの環境では各サーバに搭載可能なHDDの本数には物理的な制約があり、すなわちそれがIOPSの上限値となる。そこでハイパーコンバージドでは、ある手法を用いてこの問題を解決している。それは、1本でも高速なIOPS性能を発揮するSSD(Solid State Drive)だ。これまでは高速なIOPS性能を発揮するSSDと大容量を確保できるSATAタイプのHDDを階層化構造で利用するハイブリッド構成が一般的だったが、SSDの低価格化とともに、近年ではハイパーコンバージドの環境をすべてSSD(オールフラッシュ)で構成するケースも増えている。

ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリット

図 1. サーバ内臓Diskを活用するSDS技術
(「CTC次世代IT基盤サミット2017」での水上氏プレゼン資料より抜粋)
プレゼン資料は本記事の最後からダウンロードいただけます

 もう1つのポイントがディスクの可用性だ。従来型の外部ストレージはいわゆるハードウェアRAIDの仕組みによってデータを保護している。これに対してハイパーコンバージドでは、複数のノードに対して同じデータを複製して分散させることでデータを冗長化し、保護しているのである。その為、ストレージの実効容量は物理容量に対して33.3%~50%程度になる。

 これらのポイントを考慮し、CTCとしては具体的にどのようなハイパーコンバージドと外部ストレージの使い分けを推奨しているのだろうか。

 「アプリケーションサーバやWebサーバなどの用途であればハイブリッド型のハイパーコンバージドで十分ですが、定常的に高速なIOPSが要求されるデータベースサーバではオールフラッシュ型のハイパーコンバージドが前提となります。さらにデータの読み書きが多く、大容量と高速性を両立させなければならないデータウェアハウスや大規模なプライベートクラウドを構築するためには、オールフラッシュ構成の外部ストレージが必要です」(水上氏)

3. SDSがもたらす3つの特長とは

 水上氏によるとハイパーコンバージドのメリットは、大きく「スケールアウト」「シンプル構成」「簡易運用」という3つの特長からもたらされる。

 まずスケールアウトだが、ハイパーコンバージドは一般的にサーバ2~3台の最小構成からスタートし、需要の伸びにあわせて随時サーバを増設しながら拡張を図っていくことができる。導入時から将来の需要をある程度予測した上で容量や性能を確保し、拡張時には筐体そのもののスケールアップで対応しなければならなかった外部ストレージと比べ、ライフサイクル全体を通した投資の最適化を図ることができる。

ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリット

図2. ハイパーコンバージドの特長の1つ「スケールアウト」

(「CTC次世代IT基盤サミット2017」での水上氏プレゼン資料より抜粋)
プレゼン資料は本記事の最後からダウンロードいただけます

 「ハイパーコンバージドがVDIから利用が始まったのも、スケールアウトの特長がマッチしていたからにほかなりません。仮想デスクトップのユーザー増加に対して、サーバを増設するだけで簡単に対応できます」(水上氏)

 次のシンプル構成だが、ハイパーコンバージドは複雑な構造をもった外部ストレージを仮想インフラから完全に排除し、サーバ筐体と2台の10Gbpsスイッチのみで構成することが可能だ。「シンプルであることは、データセンター設置スペースを削減する以外にも故障個所の極小化とボトルネックの局所化を実現することも意味します」(水上氏)

 そして3つ目の簡易運用こそ、ハイパーコンバージドが提供する最大のメリットとなるものだ。たとえばブレードサーバ構成でよく発生するサーバ増設時に各サーバのソフトウェアのアップグレードを行う際にも、システムを停止する必要はない。

 「ハイパーコンバージドに付属している専用の管理ツールから操作し、オンライン状態のままで特定のサーバをクラスタから切り離すことができます。そしてアップグレードを済ませた後、また元のクラスタに戻せばよいのです。この作業を各サーバに順に繰り返すローリングアップデートを行うことで、ハイパーコンバージド全体のメンテナンスを、業務に影響を及ぼすことなく完了することができます」(水上氏)

 さらに、外部ストレージのEOSLに起因するデータ移行も不要となる。ハイパーコンバージド環境では、EOSLノードを除外し新しいノードを追加する。ノード増減のタイミングでデータのリバランスが行われる為、適時にデータ移行がシームレスに行わるのである。

 

『なるほど! ハイパーコンバージド』資料のダウンロード

 ハイパーコンバージドの最新動向と導入メリットについてまとめた資料については、以下よりダウンロードできます。

 

ハイパーコンバージド仕様一覧

図 3. なるほど!ハイパーコンバージド資料

資料ダウンロード

 

最後に

 多くの魅力を備えたハイパーコンバージドのソリューションとして、CTCではDellEMC、シスコ、HPE、Nutanix、レノボ、NetAppの6社から提供されている8製品を取り扱っている。

 CTC は拡張性やハイパーバイザー対応などの『基本要件』、各製品の技術的な特徴である『製品特性』。この2つの軸で、さまざまな企業にとって最適なハイパーコンバージドの選択肢を提供していく考えだ。

 ハイパーコンバージド製品の検討や導入に関するご相談や詳細説明をご希望する方は、以下よりお気軽にご相談ください。

 

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 ハイパーコンバージドの製品選定方法と製品毎の特徴についての解説は、下記の記事へ。

ハイパーコンバージド

 

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