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HPE SimpliVityのローカル、クラスタ間バックアップ
国内での導入実績が急速に増えているハイパーコンバージドインフラ(HCI)は、オンプレミス型プライベートクラウドの新しい形態。
外部ストレージを使わずに SDS(Software Defined Storage)技術を用いて、仮想インフラを構成するサーバの内臓ディスクを1つの大きな論理ボリュームとして利用します。
多くのハイパーコンバージド製品の中で、とりわけ国内で急速に注目されている製品が HPE SimpliVity です。HPE SimpliVityがシェアを伸ばしている理由のひとつが、充実したバックアップ方式です。バックアップ方式はシステム構成要件に応じて下記から柔軟に選択できます。さらに、最短10分間隔でバックアップを実行でき、ファイル単位でリストアできます。
- ローカルバックアップ
- クラスタ間バックアップ (拠点内)
- クラスタ間バックアップ (拠点間 DR)
本記事では、HPE SimpliVityのバックアップとリストアの基本動作について、伊藤忠テクノソリューションズの加藤士郎氏が詳しく解説します。加えて、「仮想デスクトップクライアントがウイルス感染」した際のシナリオを用意し、バックアップデータを用いてウィルスに感染した仮想デスクトップクライアントを感染前の状態に戻す過程を、デモ動画を交えて解説致します。
▼ バックアップとリストアの動作デモ
・シナリオ A. バックアップ
・シナリオ B. ファイルのリストア
・シナリオ C. フルクローン生成時の OS 重複排除効果
・シナリオ D. ウィルスに感染した仮想マシンのリカバリ
1. バックアップについて悩んでいませんか?
ユーザー① 「サーバー環境を1日前の環境に戻してほしい!」
インフラ管理者 「1週間前の環境にしか戻せません」
ユーザー② 「ファイルをリストアしてほしい!」
インフラ管理者 「ファイル単位ではできません。フォルダごとのリストアになります」
インフラ管理者はユーザー層に迷惑がかからない時間帯にバックアップを実施したいと考えています。しかしながら、手間やコストを考えるとなかなか思い通りにはいきません。従来までは、ユーザーから「間違えてファイルを消してしまったので、昨日の状態に戻してください」と言われても、管理者は仮想マシンやフォルダ単位でしか対応できませんでした。あるいは、バックアップデータが増えて「日曜の夜間にバックアップが終わらなかったので、月曜の昼休みにサーバーを止めます」ということになれば、ユーザーからは「それは困る」とクレームを言われてしまいます。さらには、経営者から「BCP対策はどうなっている?」と突っ込まれることも少なくありません。
2. バックアップ運用の課題に対応するには?
HPE SimpliVityはソフトウェアを購入することなく、本格的なバックアップ機能を実装することが可能です。同製品は、下記のバックアップをサポートしており、用途・環境に応じて使い分けできます。
- ローカルバックアップ
- クラスタ間バックアップ(拠点内)
- クラスタ間バックアップ(拠点間 DR)

図 1. HPE SimpliVityの機能別バックアップイメージ
- ローカルバックアップ
- メタデータ(付帯情報)しか取らないので、いくら取っても容量が増えません。
- クラスタ間バックアップ(拠点内)
- 筐体を跨いだバックアップにより、サーバーの障害が発生した際にデータの損失を防げます。
- クラスタ間バックアップ(拠点間 DR)
- 広域災害時などに対する業務継続、遠隔へのデータ保管などに活用することができます。

図 2. HPE SimpliVityにおける3つのバックアップ機能
では、バックアップとファイルのリストアについて、2つのシナリオをもとにHPE SimpliVityの動きを見ていきましょう。
3. バックアップとリストア機能の動作確認
・シナリオ A. バックアップ
・シナリオ B. ファイルのリストア
動画 1. HPE SimpliVity のバックアップとリストア
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
シナリオ A. バックアップ
1-1. 確認内容と期待する結果
下記の仮想マシンを用意。
- 仮想マシン : Windows Server 2002
仮想マシン (Windows Server 2012) のバックアップ手順と動作を確認します。
1-2. 確認結果
バックアップスケジュールのオプションには、手動と日時指定による自動実行のいずれかを選べます。ここでは下記の手順によりローカルバックアップとリモートバックアップを手動で試します。
- アクションメニュー(SimpliVity Action)からバックアップメニュー(Buckup Virtual Machine)を選択
- バックアップ名称を入力
- バックアップ対象を選択
図 3. HPE SimpliVityのバックアップ操作画面
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
バックアップ作業は上記の手順を踏むだけで終了です。
ローカルバックアップを実行した結果、HPE SimpliVityのI/Oに負荷をかけず、素早くバックアップ処理が完了しました。
次に、2 回に渡りリモートバックアップを確認します。リモートバックアップではバックアップ元とバックアップ先の差分バックアップデータのみがリモートクラスタへ転送されます。
このため、1 回目にバックアップを実行した結果、HPE SimpliVity の I/Oにほんの僅かな負荷が発生しましたが、すぐにバックアップ処理が終わりました。続けて、2 回目のリモートバックアップを実行すると、1 回目の直後に実施したため、リモートクラスタへ送る差分バックアップデータがなく、すぐにリモートバックアップ処理が終了しました。
シナリオ B. ファイルのリストア
HPE SimpliVityのリストア機能には、ファイル単位でリストアできる特徴があります。
B-1. 確認内容と期待する結果
仮想マシンを 2 台用意し、一方の仮想マシンに対して、もう一方の仮想マシンのデータをリストアします。リストア手順と動作を確認します。
B-2. 確認結果
リストア手順としては、まずHPE SimpliVityの管理ツールから仮想マシンが持っているVMDKを確認します。これが見えるのはWindowsだけで、リストアしたいファイル、フォルダにチェックを入れます。次に、「どの仮想マシンに戻しますか?」を聞かれるので、プライマリクラスタを選択すればリストア手順は完了です。
図 4. HPE SimpliVityのリストア操作画面
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
4. 仮想デスクトップ(VDI)運用におけるシナリオ
ユーザー① 「アプリをインストールしたい! 」
インフラ管理者 「リンククローン環境では、個別アプリは認めません」
ユーザー① 「ランサムウェアに感染した。すぐに感染前(昨日)の環境に戻してほしい!」
インフラ管理者 「戻せるのは1週間前の環境です。業務に影響が出るので、リストア作業は夜間にしかできません」
大規模なVDIにおいてはストレージの容量を節約する目的でリンククローン方式の採用を検討する傾向にあります、しかし、リンククローン方式ではユーザーによるアプリのインストールが認められない場合があります。このためインフラ管理者は、アプリを必要とするユーザー層からの要望を配慮し、フルクローン方式を採用するケースが増えています。
しかし、フルクローン方式のユーザーにアプリのダウンロード、インストールを許可すると、ユーザーのVDI環境にウイルスが感染してしまうリスクが付き纏い、管理者を悩ませます。

図 5. リンクローンとフルクローンのイメージ
HPE SimpliVityでは10分間隔でのバックアップ取得が可能であるため、特定ユーザーのデスクトップ環境にウィルスが感染したとしても、容易に感染直前の状態へ復旧できます。さらに、HPE SimpliVityは重複排除・圧縮の効果が高いためフルクローン方式でもストレージ容量を気にする必要はありません。また、HPE SimpliVityに標準で搭載されているバックアップ機能を使えば、仮想マシンごとのバックアップを簡単にスケジューリングできます。ポリシーとルールを設定しておけば自動でバックアップを行うので、スケジュールに悩む必要がありません。
では、フルクローン想定時のOS重複排除効果とウイルス感染時のVDI環境のリカバリについて、シナリオの経過と結果を見ながら、HPE SimpliVity の動きを見ていきましょう。
5. フルクローンを生成した際のOS重複排除効果とVDI環境のリカバリ動作
・シナリオ C. フルクローン生成時の OS 重複排除効果
・シナリオ D. VDI 環境のリカバリ
動画 2. 仮想デスクトップ(VDI)運用
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
シナリオ C. フルクローン生成時の OS 重複排除効果
1-1. 確認内容と期待する結果
仮想マシン (Windows10) をマスターとして、クローンを10台分作成。ストレージ容量を確認し、重複排除・圧縮機能の効果を確認します。
図 6. クローンを10台分作成する前のストレージ使用状況
(図をクリックすると「クローンを作成する前」からデモ動画を視聴できます)
1-2. 確認結果
クローンの作成後にストレージ容量を確認すると、最初に消費していた11.1GBのままでした。マスターデータがあるので、メタデータのみ複製している状態です。
図7. クローンを10台分作成した後のストレージ使用状況
(図をクリックすると「クローンを作成する後」からデモ動画を視聴できます)
※上記数値はあくまでもデモ結果であり、使用環境によって重複排除・圧縮率が異なる場合があります。
シナリオ D. ウィルスに感染した仮想マシンのリカバリ
2-1. 確認内容と期待する結果
仮想マシンのバックアップデーターを用い、ウイルスに感染した仮想マシンを感染前の状態にリストアします。バックアップを取り直して仮想マシンの電源を入れ直した後、ウイルス感染前の状態に戻るか確認します。
2-2. 確認結果
バックアップを取り直した後、仮想マシンの電源を入れ直すと、仮想マシンがウィルスに感染する前の状態になったことが確認できました。
図8. 感染前の状態にリストアされた状態の管理画面
(図をクリックするとデモ動画を視聴できます)
最後に
本記事ではHPE SimpliVityのバックアップ・リストア機能について解説しました。HPE SimpliVity はバックアップ方式が充実しており、操作が簡単。さらに、業務時間中であっても負荷を殆ど発生させずに実施できる点が魅力と言えます。
2015年度の時点で約800億円だったハイパーコンバージドの世界市場は 2020年度には約4500億円に拡大すると予想されています。日本市場においても同様に40億円から300億円へと大きな成長が予想されています。
本記事で取り上げた課題の他、仮想化基盤の運用課題は沢山あります。仮想化基盤について課題を抱えられている方、HPE SimpliVity の詳しい説明を希望される方はお気軽に弊社へご相談ください。他社製品も含めた上で、フラットな視点で最適な製品の選定にご協力致します。
HPE SimpliVity の特徴については下記をご覧ください。
著者プロフィール

- 加藤士郎
- 伊藤忠テクノソリュージョンズ株式会社在職中 | 1. 現在の担当業務 : HCI 全般(HPE、Cisco、Dell EMC、NetApp、Lenovo) | 2. これまでの担当業務 : ITインフラ全般(サーバ、ネットワーク、仮想化)| 3. 趣味 : 孤独のグルメの巡り、料理 | 4. 好物 : 肉、お酒、ガンダム